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9/61

Bパート

 翌日、私は学校が終わったあと音速でシャノワの学校へ急いだ。

 一緒に帰るために迎えに行くのだ。

 シャノワは晴子姉さんが働いている学校に通っているが、姉さんの仕事が終わるまで待つと日が暮れてしまう(本来身内は通わせられないが、私の莫大な財産と影響力に不可能はない)。

 私が到着したときには、シャノワはすでに校門でじっと待っていた。


「ど、どうだった? 初日は」


「うーん、別に」


「いじめられなかった?」


「うん。あとなんか、貰った」


 シャノワはランドセルを開け、何十通もの手紙を取り出した。

 ま、ままま、まさかこれは、Love Letter?(発音重要)

 シャノワは贔屓目抜きで可愛い顔してるし、モテるだろうなとは予想していたけど、まさかまさか。

 いや〜、でもこのネット社会にLove Letterで告白するやついるのかな〜。


 とにかく、手にとって読んでみる。


1通目

【シャノワちゃんへ

 てめえ調子乗ってんじゃねえぞ。放課後体育館裏に来い!! ぶち殺す!!

                                   明美より】


 果たし状でした。


2通目

【シャノワちゃんへ

 かかってこい 明美】


3通目

【家燃やすぞ 明美】


4通目

【嘘。ホントは大好き。 明美】


5通目

【ちゅーしたい 明美】


6通目

【んなわけねえだろ、殺し合いすんぞ 明美】


7通目

【ていうのも嘘。私だけにえっちなダンス見せてほしい 明美】


8通目

【死ね! 明美】


 すみません。怖すぎておしっこ漏らしました。

 最近の小学生情緒不安定すぎない? 日本の義務教育大丈夫?

 その他の手紙も似たような内容で、送り主も一緒だった。


「いったいこの明美ちゃんになにしたのよシャノワ」


「下駄箱で乱闘した。シャノワ勝った。最後仲直りのハグした」


「来た見た勝ったみたいなこというじゃん。なんで乱闘になったのよ」


「……理由なんかない」


「理由もなく殴り合うのが当たり前の学校なんだ。道徳の授業やってないのかな」


 そんな無法地帯で晴子姉さんが働いていただなんて……。

 シャノワの説明が下手なだけだと信じたい。信じさせてくれ。


「それにしたってなんなのよこの明美って子は」


「明美ちゃんは……」


 とそのとき、私は背後から殺気を感じ、振り返った。

 電信柱に隠れてこちらを睨んでいる女子小学生がいたのだが、様子がおかしい。顔に生気がないのだ。


 もしやと思いメガネを悪霊可視化モードにしたところ、やはり悪霊に取り憑かれていた。


「あ、明美ちゃんだ」


「え!? あの子が!?」


 明美ちゃんはランドセルからハサミを取り出し、一歩一歩近づいてきた。


「シャノワちゃん、誰よその女……」


 ひえっ。怖くてぷるぷる震えちゃうよ〜。


「エラリー、着装よ!」


 私がロリティングスーツを来ている間に晴子姉さんがやってきた。


「あれは明美ちゃん!? まさか子供に取り憑いてるなんて……」


「晴子ねーさん、まずは優しく気絶させよう!!」


「うん! 教え子を傷つけるのは嫌だけど……ごめん!」


 小さな光弾を発射すると、明美ちゃんは気絶した。

 彼女の体から抜けた悪霊は、前回戦ったものと同じように大きい。


 すると、甲高い笑い声が聞こえてきた。さすがにもう声だけでわかる。アムーニアだ。


「くっくっく、今日であんたらはおしまいよ!」


「アムーニア! 晴子ねーさんはそっちのあくりょーをお願い」


 晴子姉さんが悪霊と戦いはじめ、私はアムーニアに殴りかかった。


「え! いきなり!?」


 アムーニアはあっけなく殴り飛ばされ、腰を抜かして軽く泣き出した。

 いつの世も先手必勝こと絶対の理なのだ。


「ふ、普通こういうのって今回のゲスト悪霊を倒してから私に攻撃するもんじゃないの!?」


「知らないわよそんなルール」


 一方、晴子姉さんは巨大な悪霊と戦闘を繰り広げている。

 悪霊は晴子姉さんよりも、たまたま近くにいた一般人を優先して無差別に襲いかかろうとしていた。


「シャノ、なんだかこの悪霊、普段と違うわ! 何かに未練があるように見えないし」


「たぶん、ただ生に執着心がある悪霊。そういう悪霊は、魂を食べて強くなることしか頭にない。悪霊は魂を食うとパワーが増して、いつまでも成仏せずに留まることができるから」


「くっ、人々を餌になんてさせないわ!」


 晴子姉さんはステッキの先端から巨大なハエ叩きを出現させ、悪霊をぶっ潰した。

 さらに追撃の特大ビームを食らわせると、悪霊は砂となって散っていく。


 あらためてアムーニアを見やると、悔しそうに肩を震わせて、


「覚えてなさい!」


 と言い残し、消えてしまった。

 ちっ、今日こそ引っ捕らえようと思ったのに。


 戦闘が終了すると、シャノワは気絶している明美ちゃんへ駆け寄った。

 シャノワが肩を揺らすと、明美ちゃんが目を覚ます。


「おはよ、明美ちゃん」


「シャノワちゃん……。私、どうしてここに」


「深いことは気にしない方が良い。怪我、ない?」


「え、心配してくれるの?」


「友達だから」


 明美ちゃんはみるみる顔を赤くして、シャノワに抱きついた。


「嬉しい。私も愛してるよ、シャノワちゃん」


 なんか、見たところシャノワに友達ができたらしい。

 らしい、なんて曖昧な表現をするのには理由がある。たぶん明美ちゃんはシャノワを『友達』としては見ていないからだ。


 登校初日なのにマジで何があったんだか。この様々な情報が光速で交差するネット社会、小学生同士の感情も光速で交差しているのだろう。


 ……シャノワが刺されないことを祈る。

実は晴子の名字は根手です。根手晴子です。

ねりと違います。


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