第4話 晴子姉さん、堕ちる Aパート
「ごめんね。今日帰るの遅くなるわ」
そう言い残して、晴子姉さんは出勤していった。
理由はもちろんわかっている。認めたくないが、デートである。
正確にはお見合い、というか婚活。
晴子姉さんも齢32歳。ちょっと前までは美味しいものを食べることが人生のすべてみたいな生き様してたのに、いまではもうすっかり結婚を意識してしまっている。
晴子姉さん単推しガチ恋ファンの私としてはそりゃあ嫌だが、でも私のわがままで晴子姉さんの人生を引っ掻き回したくないので、応援せざるを得ない。
「はぁ、憂鬱だあなあ〜」
「晴子、なにかするの?」
なんにも知らないガキンチョのシャノワが質問してきた。
「いいことシャノワ、結婚だけが幸せになる道じゃないのよ」
「けっこん?」
「好きな人と一緒に暮らすことよ」
「じゃあねりは晴子と結婚してるの?」
「……たまには良いこと言うじゃない。あとで好きなだけキャベツ太郎買ってあげる」
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そんなこんなで夜。悪霊が活発的になる時間帯。
私は塾帰りの子供を襲っている悪霊と対峙していた。
ちなみに今回の悪霊は、
『塾に通える金持ちの子供憎いよ〜』
などと、生前は悲しい生涯を送ってきたであろうやつである。
その数は3体(そんな悪霊が3体もいるのかよ)。決して楽に倒せはしないだろうが、私の発明品を信じて戦うしかない。
「よーし、やっちゃるか!」
両手にインパクトハンドガンを握り、悪霊退治を開始する。
さすがに1対3は骨が折れて、思うように仕留めきれない。
とそのとき、
「ねり!!」
デート中のはずの晴子姉さんが舞い降りた。
「え!? どうしてここに? デートは?」
「例のごとく抜け出しちゃった……」
「いや戻りなよ。私ならだいじょーぶだから」
「う、うぅ……」
晴子姉さんは迷いながらも結局戦いだし、2人で力を合わせて悪霊たちを全滅させた。
「晴子ねーさん、急いで戻って!」
「うん!」
飛び去っていった晴子姉さんと再び顔を合わせたのは、それから30分後、自宅の玄関でであった。
デートでの食事中、悪霊退治のために抜け出すときにトイレに行くと嘘をついてきたのだが、あまりに遅すぎて男が心配し、店員が安否確認しにいった結果トイレが嘘だとバレたのだとか。
そのせいで男は不機嫌になってしまい、デートは失敗に終わったらしい。
「はぁ……。やっちゃったわ」
「もう、こういうときくらい私に任せていいんだよ。晴子姉さんの代わりに戦うために私がいるんだから。人助けもいいけど、晴子姉さん自身の幸せも考えてよ」
「うん。わかってるんだけど、誰かが悪霊に襲われていると思ったらつい体が動いちゃって」
ソファでくつろいでいたシャノワが、テトテトと近づいてきた。
「心の疲労は魔力に悪影響を及ぼす。ストレスはためるな、晴子」
「シャノ……。うぅ、心配してくれてありがとう〜」
晴子姉さんはギュッとシャノワを抱きしめて頭をナデナデしはじめた。
あの、晴子姉さん、私もさっきから心配しているんですが、ナデナデは?
「とにかく晴子姉さん、堪える努力をしなくちゃ。まずは自分を第一にすること。ときには人に任せること」
「堪える努力……」
「晴子、いい方法、ある」
「なあに、シャノ?」
「シャノワ、魔法使いが悪堕ちしたとき用に、一時的に変身能力を奪える。サポート係だから」
なるほど。強制的に魔法少女活動を停止させるってわけね。
シャノワ的には私がいるからわざわざ晴子姉さんに戦わせる必要もないのか。
変身ができないだけだから、晴子姉さんの魔力は失われない。つまりロリティングスーツの動力である魔力は供給されるし、問題ないわけだ。
「晴子姉さん、どう?」
「うん、わかった! 私頑張るわ! ねりの努力を無駄にしないために、自分のためにも!」
というわけで、晴子姉さんが人助けをしないための修行がはじまったのだった。
虎ぐらいなら素手で倒せます。
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