Bパート
1年子、臼見瀬奈ちゃんはいじめられていた加藤ゆんさんと同じ中学校だったのだとか。
瀬奈ちゃんも元々いじめられっ子で、それをずっと助けてくれたのが、
「ゆん先輩なんです」
「へー。そんなことできる人には見えなかったけどね」
「本当は強い人なんです。少し、臆病なところがありますけど。今度は私が助けたいのに、なんでか拒絶されちゃってて」
「ふーん」
2人の関係、私と晴子姉さんに似ている。
私も小さい頃、周りと馴染めずに心を閉ざしていた時期があった。
私の才能を利用しようとする大人もたくさんいた。
人を信用しなくなった私を救ってくれたのが、晴子姉さんなのだ。
あの前向きで底なしに優しい彼女が、私に人の心を芽生えさせたのである。
そして私も、姉さんのためにロリティングスーツを開発した。
「どうすればいいですかね、ねりさん」
「うーん」
どうですかと聞かれましても。私は科学者であってメンタルカウンセラーではない。
yahoo!知恵袋扱いされても困るのだ。
「とりあえず、一度面と向かって語り合うしかないんじゃない?」
「やっぱり、そうですよね……。じゃあねりさん、放課後ゆん先輩と話して見るので見守っていてください!!」
「えぇ……」
正直かなり面倒くさい。どうせ私がいたってなんの力にもなれないのに。
でもこの子は私のファン。ファンが私を頼るなら断れない。
ファンじゃなきゃ助けないのかって? ……ノーコメントで。
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そんなこんなで放課後、私は瀬奈ちゃんと一緒に加藤ゆんに会いに行くことになってしまった。
下駄箱で待ち伏せしていたら案の定すぐ見つかり、瀬奈ちゃんが声をかけたのだが、
「ひぃ!」
などと怪物に遭遇したかのようなリアクションで逃げだしてしまったのである。
「ちょっと待って! せめて話だけでも!!」
「近寄らないで!」
全力疾走で逃げ出して間もなく、加藤ゆんはすっ転んでしまった。
膝を擦りむき、しばらくは立って歩くのも困難だろう。
「ゆん先輩!」
「こ、来ないで!」
駆け寄った瀬奈ちゃんだったが、精一杯の拒絶に顔を歪ませた。
「どうして……昔は仲良くしてくれたのに……」
「だって……」
気まずい空気が流れる。
わかっていたことだが、私にできることなどなにもない。これは2人の問題で、私が強引に解決させても、きっとすぐに亀裂が入るに違いないのだ。
とそのとき、
「きゃっ!」
突如ゆんと瀬奈ちゃんが吹っ飛んだ!
2人は気を失ってしまったが、見たところ大きな怪我はしていない。
「え!? なに!? ま、まさか」
眼鏡のフレームに触れ、レンズに魔力を流す。ロリティングスーツの技術を応用し、いかなるときでも悪霊を視認できるようにしたのだ。
そして案の定、悪霊が2体、2人を囲んでいた。
「ちぃ、どうしてこんなときに」
辺りには誰もいない。変身するには絶好のチャンスである。
「エラリー、着装よ!」
メガネに内蔵されたスピーカーから、エラリーが答えた。
「ロリティングスーツ、発射します!」
実は私の住んでいるマンションは私が建てたものである。なので私だけが知っている設備が数多くあり、そのなかの一つが、研究室からの物資の発射である。
研究室の天井に穴が空き、お手伝いアームロボットたちがそこから屋上まで飛び出し、高出力スラスターで望んだ物を届けてくれるのだ。
地元圏内であればその間わずか10秒。
「ロリティングスーツ、装着します!」
アームロボットたちが私を囲み、複数の紺色のパーツを胴や頭、両足両腕の指先にまで装着させていく。
1つ1つのパーツの間には隙間が空いているのだが、サイズをミスったわけではない。
「ロリ化、開始します!」
続いて身体強化効果が発動し、私の体が縮み始めた。
すると、先程まで隙間が空きまくっていたパーツたちが、私のサイズが小さくなったことで見事に連結し始めた。
やがてロリ化を終えると、ヘルメットからアイシールドが降り、ロリティングスーツ全体を謎る透明の線が青く発光した。
「ロリティングスーツ、装着完了しました!!」
「おっけー!」
ルミポニウム合金製の艷やかな質感!
スタイリッシュかつ力強さを感じさせるデザイン!
大天才パワーッ!!
これぞわたしの最高傑作、ロリティングスーツMk−1なのだあああッッ!!!!
「さいきょーじょしこーせーの力を見せてやる!! エラリー、インパクトハンドガンを使用するわよ!」
「わかりました、ロリ!」
「ねりよ!」
アームロボットから、工具のインパクトドライバーに似た銃を貰う。
晴子姉さんの魔力を銃弾にして発射する武器である。
私がインパクトハンドガンを構えた瞬間、
「遅れてゴメーン!!」
超高速で魔法少女状態の晴子姉さんがやってきた。
「え! 仕事終わったの?」
「まだ書類作成とかあるんだけど、悪霊の気配がして抜け出してきちゃった!!」
「じゃあ……」
「なる早で倒すわよ!!」
というわけで、描写するのも困難なほどめちゃくちゃ速く悪霊2体を成仏させましたとさ。
あの、戦闘シーンのなかでロリティングスーツをもっと自慢したかったんですけども。
約束破ってごめんなさい。肝心なところでババーンと説明できんかったけん。
悪霊が消え去り、ふと瀬奈ちゃんたちを見やると、タイミングよく2人は目を覚ました。
「いてて……なんだったんだろう。ゆん先輩、大丈夫?」
「う、うん。あ! 瀬奈ちゃん肘から血が出てる!」
「擦りむいただけですよ」
「でも!」
「……よかった。まだ、心配してくれるほど、私を嫌ってるわけじゃないんですね」
「それは……」
ゆんは何度か躊躇ったのち、本心を語った。
「だって私といたら、また瀬奈ちゃん、いじめられちゃうかもしれないから」
その一言を聞いた途端、瀬奈ちゃんは安堵の涙を流しながらゆんを抱きしめた。
「そんな気遣い、いらないですよ。先輩と仲良くできるなら、なにがあったってへっちゃらです!!」
ゆんも感激で瞳に涙を溜め、瀬奈ちゃんを両腕で包み込んだ。
これにて一件落着、なのかな?
微笑ましく見つめていた晴子姉さんは仕事に戻り、私も去ろうとしたとき、
「あれ? さっきまで豊田ねりさんがいたのに」
瀬奈ちゃんが私を捜し始めてしまった。
「ねえそこの変なかっこうした女の子」
「わ、わたしですか?」
「ここに豊田ねりさんいなかった? あの世界一有名な。……ていうかあなた、小学生? どうしてこんなところに……」
「わ、わたしちっちゃいからわかんなーい!!」
どうにか無知な子供のフリして、私は逃げ出した。
ロリ化解除は人目につかない場所でしよう。そう思い、グラウンドから屋上へジャンプしようとすると、
「ふーん。このチビとあの魔法少女が噂の邪魔者ね」
黒い仮面をつけた金髪の少女が、わたしの背後に現れた。
ロリ化したわたしと同じくらいの背丈をしている。本物の小学生なのだろうか。
「餌を撒いてみたらすぐに登場するとは、思わなかったわね」
「誰!?」
「ふっ、それにしても中々強いみたいね。今日のところはこれで見逃してあげるわ。覚えてなさい、私の名前はアムーニア。あんたたちをボコボコにする女よ。バイバイ、おチビちゃん」
アムーニアを名乗る少女は黒い煙を散布し、瞬く間にいなくなってしまった。
「なんなの、あいつ……」
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その後、ゆんと瀬奈ちゃんは毎日一緒に登下校するほど親密な関係になった。
私もこっそり様子を伺ったのだが、瀬奈ちゃんに影響を受けてか、ゆんもいじめっ子たちに強くぶつかっていけるようになりはじめている。
結局、アムーニアが何者なのかまだわからない。
シャノワに訪ねても、まったく見当がつかないようであった。
何者なんのだろう。あいつは私たちのことどれだけ知っている?
てかそもそも、晴子姉さんはいつまで魔法少女活動を続けなきゃならんのか。
あぁ、考えれば考えるほどため息がでる……。
良いテキーラ教えてください。
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