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第21話 ねりVS女性の敵 Aパート

 大金持ち様は電車を利用しないのか。

 答えはNOである。当たり前だが時と場所によってはタクシーより電車の方が早く到着する。

 私は名誉より効率を重んじる性格なので、しょっちゅう利用しているわけなのだ。


 そして今日も買い物をするために電車に乗り、ホームに降りたとき、事は起こった。


「僕じゃない! 僕はやってない!!」


 聞き覚えるのある気持ち悪い声が、耳に入ってきてしまった。


「いいからこっちに来なさい!」


「僕は触ってないんです!」


 大方予想はできたが、振り返って目視で状況を把握する。

 あの世紀の大変質者、全幼女の敵、最低最悪の魔王、ザ・キングオブクズ、サタンの申し子、エキスパート性犯罪者予備軍の鉄一郎先生が、駅員さんに連行されていた。


 あ〜、こりゃ痴漢したんだな。ついにやっちゃったんだな。


「あ! 豊田ねり!!」


 うげ、目が合っちった。

 知らんぷりしようかな。でもな〜、本当にやってなかったらかわいそうだしな〜。


「助けてくれ〜! ねり〜!」


 はぁ、まったくしょうがないな〜。


「いったいどうしたんですか」


 鉄一郎先生の周りには駅員さんと、被害者女性のOLさんがいた。

 駅員さんが怪訝な顔つきで私を見下ろす。


「お知り合いですか?」


「残念ですが教え子です」


 鉄一郎先生が私にすがりついてきた。


「助けておくれよ豊田ねり! 僕は痴漢なんかしてないんだ!!」


 それに反論するように、OLが先生を睨む。


「いい加減認めなさいよ! 私のお尻触ったくせに!」


「僕の好みの女性は君のようなタイプじゃない!」


「はあ? ちょ、駅員さん、警察はまだですか?」


 確かに、先生は吐き気がするほど生粋のロリコンなので、成人女性に手を出すとは思えない。が、男は性欲のケダモノ、魔が差す場合も有り得そうである。

 う〜む、やはり話を聞く限りでは判断できないな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 現代における痴漢容疑の無罪証明は、科学の進歩により幾分かマシになった。

 鮮明な監視カメラにDNA検査、衣服の繊維鑑定などなど、心強い証拠が集めやすくなったわけだ。

 とはいえ、証拠さえあれば丸っと解決するほど痴漢は単純な犯罪ではない。

 被害者および容疑者のケア、真犯人の究明など、問題が山積みなのである。


「ねり、僕はいったいこれからどうすればいい?」


 留置場の面会室にて、げっそりした鉄一郎先生が相談してきた。


「知り合いの世界的に有名なアメリカ人弁護士を呼んだので、とにかく無罪を主張してください」


「君のスーパー頭脳でどうにかならない?」


「そういうのは弁護士や検察の仕事ですから。てか先生、本当にやってないんですよね?」


「もちろん! 僕は確かにあのとき、彼女の後ろにいた。でも背を向けていたし、右手はスマホ、左手はつり革を掴んでいたから触れっこないよ!」


「周りに誰かいました?」


「うん。でもどんな人がいたかなんて、いちいち覚えてないよ。きっとその中に真犯人がいるんだ!」


「そうですよねえ、先生が捕まるなら痴漢じゃなくて児ポですもんねえ」


「そうそう、僕はちっちゃい子が好きだから……って冗談言ってる場合じゃないだろ! だいたい、仮に僕が成人女性に興奮したならば、痴漢じゃなくてナンパするよ。イケメンだから」


「その発言は敵を増やすだけですよ。とにかく、じっと堪えてください。一応、信じてあげますから」


「それをロリ状態の君から聞きたかったよ」


 翌々日、知り合いの弁護士から連絡が来た。

 電車内の監視カメラに、女性を触っている男性が映っていたのだ。


 よって先生に下された判決は無罪。

 こうして今日も平和な日々が守られたのである。


 ……ってちょっと待てい。

 肝心の真犯人逮捕はどうなかって?

 それがさんざん触りまくったあと、ふっと消えてしまったのだ。

 OLさんはいなくなった真犯人の代わりに、後ろにいた鉄一郎先生を疑ったわけである。


 警察は真犯人を捕まえるべく何日も車両で待ち伏せしたが、現れては消えてしまうので手を焼いているとのこと。


 もうお気づきだろう。

 こんな芸当ができるのは、悪霊しかいない!

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私は確証を得るため、事件が発生した車両に乗り込むことにした。


 カメラの映像をくまなくチェックしたので、見覚えるのある人物を発見次第すぐ警戒し、様子を伺うことができる。


 普段より露出の激しい服を着ているのは、万が一真犯人がいた場合にそいつを誘い出すため。

 メガネに魔力を流して悪霊可視化モードにしてあるので、準備は万端。


「ってなんで先生までついてきたんですか」


「教え子に何かあったら守るためだよ! 僕自身の復讐にもなるしね」


 本当はロリ化した私を見たいだけでしょうが。


 大きくため息をついた瞬間、私の太ももを何者かが触った。

 反射的にその手を掴むが、するりと抜けられてしまう。


「ちっ!」


 振り返れば、太った男性が背後に立っていた。

 スマホに夢中になっているようで、私など眼中にない様子。


「あなた、いま私のこと触りました?」


「……へ?」


 一瞬掴んだ手はもっと細かったので、この人ではない。

 しかも悪霊でもないし、ほぼ白だろう。

 ならば私を触った悪霊はどこへ? 辺りを見渡してみたが、見当たらない。

 まさか、前回学校で戦った悪霊みたいな、姿を隠せるタイプ?

 

 だったらこっちにも手がある。

 脳内でお手伝いアームロボを呼ぶと、脳波に反応してロボットたちが走行中の電車の周りに集まってくる。

 それぞれ浮遊しながら私のいる車両に取り付くと、車内に魔力を流し込んだ。


 数秒間、一定範囲内に魔力力場を形成する新兵器、『MPフィールド』の力である。

 これによって、


「うぐわっ!」


 悪霊が魔力によって苦しみだし、姿を現した。


「見つけたわ変態悪霊! さんざん女性を苦しめやがって、一方的に嬲られる怖さを教えてやろうか!!」

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