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Bパート

「シャノワ下がって!」


「ねり……」


「おつかいのことはあとで。とにかくいまは」


 紅蓮菜が生み出した悪霊を見やる。

 あの強面男になにかしたのは間違いない。光るものを抜き出したようだが……。


「エラリー、あの人を」


 お手伝いアームロボットに強面男を回収させた。

 脈はある。本当にただ気を失っているようだ。


 途端、腹部に抉られるような痛みが走り、私の体が宙に浮いた。


「くっ!」


 床に落下し強面悪霊を見やると、高速で距離を詰めてきて私を蹴り上げた。

 さっきの痛みもこいつが原因か。


「ちっ、エラリー、HMMミサーー」


 言い終わる直前で悪霊にまた急接近され、ラリアットを決められる。

 こいつ、早すぎる!

 パワーも普段の悪霊とは比べ物にならないほど強い。


「どうなってんのよ……」


 苦痛に悶える私を見て、紅蓮菜は高らかに笑い出した。


「ハハハハハ!! 計算通り! 生きている人間の魂を使っているんだ、力の源である生気を自ら生み出せるうえ、私の邪気を混ぜ込み、得られるパワーは通常の悪霊の2倍! いや3倍!!」


「魂を? じゃあこいつを倒したら……」


「消滅させれば死ぬな。その男は」


 人質に取りやがったのか。

 どうする。早すぎて太刀打ちできない。仮に対抗できても、消滅させられないんじゃこちらが不利!


 必死に思考を巡らせていると、シャノワが私の肩を叩いた。


「ちょ、下がってなさいって」


「とりあえず、ボコっていい」


「え? でも」


「生きている人間の魂、なら生命力が強い分、簡単には消滅しないはず。とにかくボコって弱らせてみたほうがいい」


「そうなの?」


 強面悪霊は余裕しゃくしゃくな様子で、タバコを一服しては悦に浸っている。

 願望がタバコが吸いたいってだけなのが幸いで、いまのところ害は私の体にしか被られていない。

 シャノワはボコれと言ったが、そう簡単にいけば苦労はしないのだが。


「やるしかないか」


 気合を入れ、インパクトハンドガンを握ると、


「ねり!」


 魔法少女姿の亜夢二亜がやってきた。


「近くで悪霊の気配がすると思ったら」


「ナイスタイミング! 亜夢二亜、こいつの足を止めて!」


「へ? あ、うん! 頑張る」


 亜夢二亜がビームを撃っても、大したダメージにはならなかった。

 悪霊は亜夢二亜に標的を変え、殴りかかる。


「ひぃ!」


 亜夢二亜がシールドを展開したものの、悪霊はまるでサンドバッグを相手にするかのように目にも留まらぬ猛攻を繰り広げる。

 防戦一方。いずれ亜夢二亜のシールドは破られてしまうかもしれない。

 だが、悪霊の足を止めることはできた!


「ナイス亜夢二亜!」


 隙をついて悪霊に飛び蹴りを食らわせると、悪霊はスーパーの壁を突き破り、外に出た。


「いっせー攻撃よ亜夢二亜!」


「わかった!」


 私はHMMミサイルを全弾発射し、亜夢二亜は強めのビームを連射する。

 これには堪えたようで、強面悪霊は片膝をついて完全に怯んだ。

 普通の悪霊ならとっくに消滅しているはずなのだが。


「亜夢二亜、接近戦でトドメをさすわよ!」


 今度はこちらが高速で接近し、全体重を乗せて再度飛び蹴りで吹っ飛ばす。

 続けて倒れた悪霊に亜夢二亜が近づくと、ステッキから剣状のビームを発生させ、腹部に突き刺した。


「ど、どう?」


 悪霊は断末魔を上げながらみるみる萎みだし、光る球体へと戻っていった。

 と同時に、シャノワが叫ぶ。


「だいぶ弱った! そいつを本体にぶつけてみて」


「本体? あのクソやろーか」


 球体を捕まえ、本体である男に投げつけると、球体は肉体の中へと取り込まれていく。

 魂が体に戻った、ということか?


 戦いを見守っていた紅蓮菜は鼻で笑い、


「まあいい。実験は成功したのだからな」


 瞬く間に空へと消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その後、シャノワは何だかんだおつかいを完了させた。

 しかし私が後をつけていたせいでだいぶ不機嫌になってしまい、結果的にこれがシャノワの成長に繋がったのかは、わからない。

 たしかにシャノワからしてみれば、せっかく1人でもお買い物ができるってところをアピールできる機会だったのに、実は最初から1人じゃなかったとわかれば、嫌な気持ちにもなる。

 ごめんよシャノワ。


 ところで、紅蓮菜が生み出したあの悪霊、そうとうに手強かった。

 おそらく、今後もああいったタイプの悪霊を作るに違いない。

 今回は運良く勝てだが、この幸運がずっと続くとは考えづらいし、いよいよ本格的に練りだしても良いころだろう。

 ロリティングスーツの強化案について。


「ねり」


 自宅の一室である私のプライベートラボに、シャノワがやってきた。


「なに? もしかして、まだ怒ってる?」


「怒ってる。せっかくカッコいいところ見せられると思ったのに」


「ごめんて」


 シャノワが真面目で愛らしいのは、とっくに伝わっているよ。

 すると、シャノワは普段どおりの無表情のまま、私の手を握ってきた。


「あれ、ほんと? シャノワが、可愛い妹だって」


 強面男がシャノワを突き飛ばしたとき、そんなこと言ったっけ。


「今更聞くんじゃないわよ。あんたは私の大切な妹よ、とっくにね」


 シャノワはほんの少しだけ頬をつり上げると、私に抱きついてきた。


「シャノワも、ねりが好き」


「…………」


 やっば、3秒ぐらい心臓止まってしまった。

 なによシャノワのやつ。私をトキメかせるんじゃないわよ。晴子姉さん一筋なのに。

 でもまあ、うん、嬉しい。恥ずかしいから言葉にはしないけど。


 シャノワがラボから出ていくと、部屋全体にエラリーの声が響いた。


「ねり、凛様だけでなく、シャノワ様にもモテモテですね」


「ん? あぁ、まーね。ふひひ」


「節操がないです」


「な!? 誰に向かって節操がないですって?」


 怖めの口調で告げたのだが、エラリーからの返事はなかった。

 いつ無視なんて覚えたんだかこいつは。

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