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34/61

Bパート

 悪霊が出現したのは商店街。

 お昼といえど、人気の多い場所である。

 その中心地にて、騒ぎが起きていた。

 そして本日の敵は、


「クイズ出したいよ〜」


 クイズ出したい悪霊である。

 たぶんクイズ出したすぎる未練を残したまま亡くなったのだろう。

 両手足、頭部が「?」型になっていて、通行人を見つけては、


「チンはチンでも食べられるチンは?」


「え? チンコ?」


「不正解! 間違えた者には罰ゲーム!!」


 クイズを間違えた人の生気を吸い取って気絶させていた。


「ま〜た変なあくりょー出てきたわね。亜夢二亜、行くわよ!」


「うん!」


 私はロリティングスーツを着装し、水色の魔法少女になった亜夢二亜と飛び出した。


「チンはチンでも食べられるチンは?」


「ゼラチンよアホたれ! インパクトハンドガン!」


 魔力の弾を発射したが、距離が甘く回避されてしまう。

 さらに、


「現れたな厄介な生き物!」


「ちっ、紅蓮菜!」


 紅蓮菜までもが姿を見せた。


「亜夢二亜、裏切り者はここで滅す」


「紅蓮菜……私はもう!」


 瞬間、亜夢二亜の言葉を遮るように、クイズ出したい悪霊が彼女に接近した。


「弥生時代、ネズミから米を守ることを目的とした倉庫の名前は?」


「へ……?」


「ちょ、亜夢二亜! それ教えたじゃない!」


「えっと、えっと〜。お、教えてよねり!」


「ダメよ! それじゃべんきょーの意味がないじゃない! 思い出しなさい!!」


「う〜」


 亜夢二亜のアホさ加減を目の当たりにした紅蓮菜が、悪霊に命令した。


「もう1問だしてやれ! 2問も間違えれば罰も2倍。いくら魔法少女とはいえ、一気に生気を吸い取れる!」


「まずい、亜夢二亜!」


 悪霊は頷くと、


「ヨウ素液を垂らすと紫色になる化合物は?」


「か、かごうぶつ!?」


「亜夢二亜!! それも教えたでしょ!!」


「う、うぅ〜」


 嘘でしょ。あんだけ散々手を尽くしたんだから答えなさいよね絶対に!

 

 そのとき、空から桃色の魔法少女、晴子姉さんが降りてきた。


「ごめん遅れたわ! まず3人で悪霊を倒しましょう!」


「ダメよ晴子ねーさん! まだ亜夢二亜が正解してない!」


「へ?」


「これは私と亜夢二亜の問題なの! 晴子ねーさんは紅蓮菜の相手でもしてて!」


「う、うん?」


 晴子姉さんは指示通り紅蓮菜と戦い始めた。

 そしてとうの亜夢二亜だが、


「えっと、えっと〜、う〜。ごめん、ねり……」


「じょーだんは背の小ささだけにしなさいよ」


「やっぱり私ダメダメなんだ。私は、なにもできない……」


 なにもってあんたね。

 あ〜こいつがこれまで友達がいなかった理由がよくわかる。

 自分に自信が無さすぎるのだ。すぐへこたれて、マイナスな発言ばかりする。


 でも、そんな程度のことで友達を辞めたりなどしない。

 この子の過去を知っているからこそ、応援し続けたい。

 ならばここは一つ、ガツンと叱咤してやるべきか。


「いい加減にしなさい!」


「っ!?」


「またすぐネガティブになって。あんた変わったんでしょ! 未来を信じるんでしょ!」


「ねり……」


「だいじょーぶ。よく落ち着いて、しっかり考えなさい。必ず答えを思い出すから」


 それに、私が教育したにも関わらず、あんな幼稚園児でも答えられるクイズが解けなかったなんて、シャレにならない(私なら胎児の頃でも答えられた)。

 答えろ、答えるんだ亜夢二亜!! あんたのためにも、私のプライドのためにも!!


「亜夢二亜!」


 亜夢二亜はグッと拳を握ると、決意を秘めた眼差しで私を見つめた。


「……わかった。私、諦めない! 答えてやるわよ! で、なんだっけ」


 クイズ悪霊が再度出題する。

 頼むぞ、亜夢二亜。


「ヨウ素液を垂らすと紫色に変色する化合物は?」


「………………」


 頼む頼む頼む頼む頼む頼む頼む!!


「……でん」


 でん?


 クイズ悪霊も、私も、亜夢二亜をじっと見つめて言葉の続きを待った。

 思わずごくりとつばを飲んでしまう。

 晴子姉さんや紅蓮菜も戦闘を中断して亜夢二亜に視線を送っていた。


 商店街は時が止まったかのような静寂に包まれた。

 そしてその静止した時間を、亜夢二亜が動かす。


「……でんぷん?」


 きたああああああああ!!!!


 悪霊が悔しそうに地団駄を踏む。


「く、せ、正解……」


「やった!!」


 亜夢二亜は天高く舞い、喜びのガッツポーズを決めた。


「まだ問題は残っている。弥生時代にネズミから米を守ることを目的とした倉庫の名前は?」


 悪霊が地上から亜夢二亜に接近しだす。

 亜夢二亜は自信満々の笑みを浮かべた。

 1回の勝利が人を変える。

 いま、自信がついた亜夢二亜なら、もう1つの問題だって楽勝である。


「高床式倉庫だああああい!!!!」


 魔法でシールドを展開させ、悪霊を弾き返した。

 まるで高床式のネズミ返しのように!!


「亜夢二亜! そのままトドメを刺しちゃいなさい!!」


「うん!」


 亜夢二亜は先端に星のついたステッキから、ビームを発射した。

 直撃した悪霊は、


「北緯41度46分25.51秒、東経140度43分34.74秒はどこおおおおお!!!!」


 奇妙な断末魔クイズを残し成仏した。

 ちなみにその座標には函館駅がある。函館出身なのかな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その後、私たちは無事テストを終えた。

 自己採点をしただけだが、亜夢二亜はどうにか、というか余裕で赤点を回避。追試も留年も免れた。

 が、肝心なのはこのあとである。覚えたことをすぐ忘れたのでは意味がない。

 まあ今後も、定期的にエラリーに家庭教師やらせるか。


「よかったじゃない、亜夢二亜。あんただってやればできるのよ」


 亜夢二亜は嬉しさを噛み締めたあと、純粋で愛らしく、笑った。


「うん! ありがとう、ねり!」

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