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Cパート

 隕石に気を取られて気づかなかったが、いつの間にか夜が明けていた。

 東から燦々と煌めく朝日が、未だ興奮冷めぬ私の瞳を眩ませる。


「上手くいったわね、ねり」


「ねーさん、ねーさん!!」


 改めて晴子姉さんに抱きついて、小汚いくらい鼻水と涙まみれの顔面を姉さんの胸に埋めた。

 もう会えないと思っていた。二度と一緒にご飯が食べれないと。

 大丈夫、夢じゃない。これは現実。晴子姉さんは復活したんだ!


「苦労をかけたわね、ねり。亜夢二亜ちゃんも」


「先生! 私まだまだ謝ることが!」


「それよりもまずは」


 顔を上げてあたりを見渡せば、まだ残っていた悪霊たちが私たちを囲んでいた。

 その中にはウーと紅蓮菜もいる。


 ウーは明らかに不機嫌そうな表情で、私たちを睨んでいる。


「どうやら助けられたみたいだが、恩返しなどしない! お前たちは終わりだ」


「けっ、しつこいってのよ。あくりょーなんだから朝は寝てなさい!」


「やれお前たち!」


 悪霊が一斉に飛びかかってくる。

 が、


「私の妹と教え子に手を出すんじゃありません!!」


 晴子姉さんはステッキから魔力で作られた巨大なハエ叩き(晴子スワッター)を出現させると、それを大きく横に薙ぎ、雑魚悪霊たちを全滅させた。

 う〜わ、色が桃色になってさらに強くなってるじゃん。


 これには亜夢二亜も苦笑している。

 亜夢二亜からしたらせっかく青色になって晴子姉さんと同格になれたのに、すぐ突き放されてしまったんだからショックであろう。

 かわいそうな亜夢二亜。


 ウーと紅蓮菜は舌打ちをするなり、消えていった。

 ホッと亜夢二亜が安堵する。


「終わったね」


「なに言ってんのよ。これから街の復興やら怪我人の治療やら、問題山積みなんだから」


 改めて街を見渡してみれば、電波塔も家々もビルも、たくさん崩れてしまっている。

 さすがにすべてを国に負担させるわけにもいくまい。

 私の巨額の富を役立てる時がきたようね。


 でもいまは、と晴子姉さんが微笑んだ。


「うん。家に帰ろう。シャノワが待ってる」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 晴子姉さんと亜夢二亜のパワーアップは一時的なものではないらしい。

 強制的に魔力量を増幅させた結果、体が馴染んだようである。

 これにて亜夢二亜は正式に魔法少女になったわけだが、サポート係については、


「シャノワが兼任する。サポート係は本来、母星である魔力星が地球に接近して魔法少女が生まれるときについでに降りるもの。でもいま、母星は遠くにある」


 つまり面倒くさいから押し付けられたわけだ。


「わかったか、二亜」


「は、はい! シャノワちゃん……さん?」


 亜夢二亜の本性であるコミュ障の陰キャが炸裂し、サポート係というより主従の関係になったみたいである。


 鉄一郎先生はといえば、数カ所の打撲と骨折が見つかり、現在自宅療養中である。

 あの戦いのことは全然覚えてないのだとか。なんともまあ困ったやつだ。


 戦いの被害は甚大だが、奇跡的にも死者はいなかった。

 これに関しては私の功績が大きく、建物の崩壊を瞬時に察知しエアクッションのようなもので人を守る高機能家電の数々が、人々を救ったようである。

 そんな家具と私になんの関係があるかって? ははは、語るまでもないでしょう。ちなみに小2のときに全国の家電メーカーに技術提供しました。


 悪霊に生気を吸われた人は気を失ったままだが、シャノワ曰く次第に意識を取り戻すとのこと。


 ニュースは今回の件を局地的なハリケーンだとか、謎の科学実験で誕生した怪獣の襲来だのと騒いでいる。

 市民の中にも悪霊を見た、飛来する星を見たと証言する者(霊感が強い)がいて、結局あの晩なにがあったのか、どれが正解なのかは私たちしかわかっていない。


 ところで、個人的な大事件が1つ。

 我が家の愛するペット、まぐろのぶつが大怪我をしていたのだ。

 いつのまに家から抜け出していたのか。やんちゃな子だとわかっていたけど、まったくもうである。


 そういえばまぐろのぶつを病院に連れて行くとき、付き添いで来ていた亜夢二亜が、


「あれこの犬……」


「どうしたの?」


「うーん。なんでもない。たぶん気のせい。暗くてはっきり覚えてないから」


「なんの話し?」


「恥ずかしいから言わない」


 的なことを口にしていた。

 なんだったんだろうか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 まだ語っていなかったことがある。

 戦いの被害の把握と復興の目処がある程度ついた日の夜のことだ。

 プライベートラボで居眠りしていた私に、晴子姉さんがそっとブランケットをかけてくれた。


「うぅ、ん?」


「あ、ごめん。起こしちゃった」


「平気……。ありがとう」


「……ねり」


 そっと優しく、晴子姉さんが抱きしめてくれた。

 あまりに突然のことで、思考が止まってしまう。


「へ?」


「ねりは本当に凄い子ね」


「ちょ、どうしたのいきなり!」


「ふふ、最近バタバタしてたから、言えなかったの」


 晴子姉さんは両手で私の頬に触れると、軽く唇を重ねてきた。


「大好きよ。私の自慢の妹」


「ひゃっ!」


 残念ながら、私の意識はここで失われてしまいました。

 喜び気絶ってやつです。


 不肖わたくし、豊田ねり。大好きな親戚の姉やちょっと可愛い宇宙人の妹、生意気な人工知能、金髪チビっ子ハーフの新しい仲間と共に、これからも悪霊退治を続けさせていただきます。


 まぐろのぶつも忘れてないよ。

一区切りついたので少し休みます。

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