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Bパート

 晴子姉さんが腰を抜かして驚いている。

 鉄一郎先生も膝から崩れ落ちて、


「バカな、僕の、僕のろり田ろりが……」


 と嘆き悲しんでいる(誰が僕のだ)。

 おばあちゃんになってしまった。とはいえ、体が思うように動かない以外にとくに変化はない。この聡明な頭脳さえ無事ならいくらでも戦いようはあるのだ。


「ねり、エラリーです! お手伝いロボットですが、人目を考慮してーーーーにーーーーーーさせました?」


「はい?」


「だから、ーーーーに!」


「ごめん、もっと大きな声で喋って」


 あたりを見渡してみれば、そこらじゅうヘドロに濡れた老人ばかりになっていた。

 なんでこんなにジジババたくさんいるんだっけ? ゲートボール大会でもするんだっけ?


「ねりがこうなった以上、私が頑張るしかないわ!」


 晴子姉さんが悪霊に取り憑かれた女性に眩いビームを発射した。しかし、


「可愛くなりたいよ〜」


 ぶちまけられたヘドロが、ビームの勢いを衰えさせ、女性に届く前に消滅してしまう。


「そんな!」


 さらにそこへ金髪の小さいやつ(名前忘れた)まで登場した。


「ククッ、無様なものね、晴子先生、豊田ねり!」


「あむ……なんだっけ?」


「亜夢二亜よ! 脳みそまでお年寄りになったみたいね大天才!!」


「脳みそ? お年寄り? 大天才? どういう意味?」


「え、さすがにモノ忘れすぎでしょ。こわっ、なんかごめん。たぶん老化じゃなくて病気だよそれ」


「で、あんた誰だっけ?」


「おい!!」


 まずいまずい。頭がうまく働かない。

 途端、さっきまで意気消沈していた鉄一郎先生が、日を浴びた朝顔のように活性化した。


「石田亜夢二亜!! なぜ君がここに? 入学したときからずっと君に目をつけていたよ? その小さく愛らしいボディーが僕を狂わせたからね!」


「うわ、鉄一郎先生? な、なんか学校とキャラが違うような?」


「よかった〜。僕的には右手にシャノワちゃん、左手にろり田ろりを侍らせる予定だったけど、亜夢二亜ちゃんがいるんだったらおばあさんになったろり田ろりの代わりにしよう」


「な、なに言ってるんですか?」


 事態が混乱を極めまくり、晴子姉さんはドッとため息をついた。


「こうなったら……」


 晴子姉さんはなにを思ったのか、私を抱きかかえモールの天井を突き破り、空へ昇った。


「エラリーちゃん、ここなら人はいないわ!」


「あ、はい! ロリティングスーツ、着装します!」


 お手伝いロボットたちが空へと集まり、ヨボヨボの私の体に、まるで「おばあちゃんお着替えしましょうね〜」みたいなソフトかつ時に強引なタッチでパーツを取り付けていく。


「ロリ化! 開始します!!」


 肌が潤いとハリを取り戻し、垂れた肉も引き締まる。

 聴力も回復して、全身から元気が漲っていく。

 まるで纏わりついた重荷を降ろしたかのように、夏休み初日の朝のように、めちゃくちゃ清々しくてエネルギッシュな気分になってきた。


「よっしゃあああ!! 元気100倍!!」


 脳みそもスッキリして、いまなら100億桁の計算も光の速さよりはやくできそうだ。

 もしかしてみなさん老人モードから大人モードになるんじゃないかって期待しました?

 残念ながらロリティングスーツは若返るんじゃなくて身体能力を凝縮するだけなのです。


「晴子ねーさん、さっさと終わらせよう!」


 モールに戻り、取り憑かれた女性と相対す。


「綺麗になりたいよ〜」


「だったら他人を変えるんじゃなくて自分を変えなさい!!」


 私の説教に亜夢二亜が反応した。


「世の中には変えたくても変えられない人もいるのよ!」


「だったら」


 私と晴子姉さんは素早く動き回って少女を翻弄し、挟み撃ちにする形で気絶させた。

 体から悪霊が抜け出てくる。


「違う努力をしまくりなさい! 人から好かれるってのはそういうもんよ!!」


 インパクトハンドガンと晴子姉さんのビームを同時に喰らい、悪霊は消滅した。


 亜夢二亜が舌打ちをする。


「くっ、強者の意見は思いやりに欠けるわ! 覚えてなさい!!」


 亜夢二亜が消えると、ウーは鉄一郎先生をじっと見つめ、


「ふふ、おもしろい」


 同様に姿を消した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやあ無事でなによりだよ豊田ねりくん」


 事態が収まっての帰り道。

 鉄一郎先生があははと爽やかに笑ってみせた。


「亜夢二亜の仲間になろうとしたくせに」


「違う違う。亜夢二亜ちゃんも僕のロリハーレムに加わってくれたら嬉しいなってワクワクしただけさ」


「まるで私とシャノワがすでにハーレムメンバーみたいな言い方しないでください」


 それにしても、亜夢二亜は自分に都合のいい世界を作るために悪霊を操っているが、あのウーの目的は何なのだろう。

 少し考え込んでいると、晴子姉さんが後ろから肩を叩いて、耳打ちしてきた。


「めちゃくちゃになったけど、気が紛れたわ。ありがとう、ねり」


「な、なんのこと?」


「ふふ。ねりは優しいのね」


 思いやりがバレてしまうのは気恥ずかしいものである。

 さて、これからどうやって亜夢二亜を見つけ出したものか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 亜夢二亜の部屋。

 クククと喉を鳴らすウーに、亜夢二亜は問いた。


「なに笑ってんのよ。負けたってのに」


「面白いやつをみつけた。ずっと練っていた作戦に利用できるかもしれない」


「はあ?」


「クク、次で魔法少女も終わりだ」

遊びは終わりです

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