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少女の変化とお婆さん

「はあ……」

『珍しいな、リリィがそんなため息をつくのは』

森の中、トラップを仕掛けながらため息をついているとあくびをしながら座る狼さんが珍しがる。

あの後、お母さんに散々怒られ部屋に閉じ込められ夕食も朝食を取れなかった。そのくせ、自分の結婚観をぐちぐちとしつこく言ってくるもんだからついナイフを投げてしまった。そしたら冷戦状態に突入してしまった。

『我には何故親が伴侶を決めるか理解できん。そんなの、自分で決めてしまえば良いではないか』

「まったくもって、その通りだよねー……」

狼さんも昨日と今日の私を説明したけど私と同じ意見を言う。

狼さんたちは基本的に群れと言うコミュニティの中で子を作り育てる。それでも最低限好き嫌いはある。それなのにこっちはそれすら決める事が出来ない。私たちは狼さん以下の存在なの?

「さて……そろそろ行こうかな」

『リリィの祖母……確か魔法使いだったな』

「そうだよー……とと」

『ぐえっ!?』

トラップを仕掛け終え狼さんと話ながら歩いていると膜を突き破るような感覚を襲われてよろけ、狼さんは弾かれてしまう。

一体何?何もないように見えるけど……。

『これは獣避けの結界だな』

「結界?」

『魔法の技術系統の一つで魔力の網や壁と言った表現が良いだろう。リリィが使っているのはどちらかと言えば自然干渉系統の魔法だな。火・水・風・土・光に干渉する』

「へぇ……そうなんだ。それじゃあ、そこで待っててね」

『うむ。では少し狩りにでも行こうか』

狼さんの魔法の説明をし終えると狼さんは森の方に戻っていき私はお婆さんの家に向かう。

お婆さんの家は石造りの家で、壁には蔦が生い茂り屋根も少しボロい。けれど庭は整備され多種多様な植物が色とりどりの花を咲かせている。

これもお婆さんが育てている薬草何だよね……凄いなぁ……。

「おや、珍しいねぇ『赤ずきん』」

「お婆さん!久しぶりー!」

庭の花を見ていたらちょうど魔法で水をやっていたお婆さんと会う。お婆さんは柔和な笑みを浮かべ、私も満面の笑顔を浮かべる。

ミラ・フレイレッド。私のお婆さんで魔法使い。何十年も前にここ移住し自由気ままな生活を送っている。

私の事を可愛がり私に赤いずきんを作り与えてくれた人。

「今年で十五だったか。早いねぇ……」

「えへへー。……お婆さん。魔力障害を治す薬ってある?」

「ふむ……ちょっと家に来なされ」

お婆さんに単刀直入に用件を言うと少し真剣な表情で家の中に案内される。

家の中には至るところに調合の道具が置かれ、棚には赤、青、緑等の様々な色の小瓶が置かれ天井からよく分からない動物の干物が吊るされている。ツンとした薬の臭いは狩りのために鋭敏になった嗅覚をキツく刺激してくる。

「少しとるよ」

お婆さんは私の髪の毛を引っこ抜きぶくぶくと沸騰している大鍋の中に複数の薬と共にいれる。

あの鍋……前に来たときも沸騰してたけど……まさか何時も沸騰してるのかな……。

「ふむ……リリィ、主は魔力障害じゃ」

「えっ……どんな障害なの?」

「体の成長が著しく低下している。それに、魔力の流れに詰まりが見える」

「……治せるの?」

「無論じゃ」

そう言うとお婆さんは更に複数の薬を鍋に入れ私の身長程ある木の棒回転させ始める。

あれ……お婆さんの体からうっすらと白いオーラが見える。あれって魔力なのかな……。

「出来た。ほれ、すぐに飲め」

「う、うん……熱っ!」

二時間後、煮だった鍋の液体を熱さを我慢しながら何とか飲む。

うう……不味い……。それに、凄く不味い。何だろう、そこら辺の雑草に血を混ぜて煮詰めたようなあ……じ……

「えっ……あ……」

視界が回り焦点が合わない。体が熱い。魔力が凄く高ぶって……。

「あ……」

そのまま私は椅子から落ち倒れる。

一体何が……。

「―――だから、何でこんな事をしたのですか!?」

「仕方なかろう……」

「うっ……あ……!?」

お母さんの怒声と窓の月明かりによって目が覚め起きようとしたのところで体から軋むような痛みを感じる。

関節が痛い……全身の骨と言う骨が痛い……。起き上がる事は出来るけど、力の加減が難しい。それにしても……ここは家?お婆さんの家から運ばれたのかな。

「……え?」

天井を見上げると幾つもの光の粒子が空中に浮遊しているのが分かる。

何……これ。まるで波のような……そんな動きがする。それに、臭いも……幾つもの臭いが絡まって変な臭いがする……。

「うっ……」

魔力を右手で高めようとした瞬間、凄まじい痛みに顔を歪める。

何だろう……とても流れがスムーズだ。スムーズ過ぎて今まで使ってこなかった場所も使われて痛みが発生しているのかな。

「お母さん……お婆さん……」

「リリィ!」

壁を伝って何とか扉を開けると居間にいたお母さんが泣きそうな顔で抱きつき抱き締める。

何で……何でそんなに泣きそうな顔をしてるの……?

「どうかしたの?」

「どうかしたもありません!リリィは……一週間(・・・)も寝てたのですよ!」

「……え?」

私……一週間も、寝てたの?

「少し鏡を借りてきたの。見てみなさい」

「えっ……?」

近隣の村人から借りてきた私と同じくらいの大きさの鏡を見て絶句をする。

短めだった金髪は腰まで伸び、碧眼の瞳は虹色に輝いている。全体的な身長も伸び160センチ後半程度になっており、簡単なドレスから見える胸も身長と比例するように更に成長している。

身長が……伸びてる……!この際、元々DカップだったのがFカップになっていても知った事か!

「身長が凄く伸びてる……!」

「そうさ。それが本来のリリィの姿さ」

「……どう言うことですか?」

身長が伸びてる事に喜ぶ私とは裏腹にお母さんはお婆さんに真剣な表情で聞く。

「その子は魔力障害でねぇ。普通の人よりも成長が著しく低かったのさ。それを治したから、身長が伸びた。その際に一番成長しやすいように睡眠状態になったのさね」

「そうだったんだ……それじゃあ、もう少し眠ってくる」

お婆さんの説明が終わったあたりで私は部屋に戻って再びベッドに入る。

さっきから凄く頭が痛い……一度眠らせて脳を休ませよう。



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