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血濡れの『赤ずきん』

『た、助けて!殺さないでくれぇ!!』

「だ~め」

『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

両足にナイフを刺されし立つことの出来ない猪さんを同時に投げられた五本のナイフが両目、口、喉、心臓に突き刺さる。

翌日、私は狩りをしていた。

そのため今日は何時ものチロルドレスから黒いズボンとシャツの上に革製の鎧を着て腰のベルトに十本近くのナイフの装備し鎧のいたるところにナイフを仕込んでいる。そして、血に濡れても大丈夫なように赤いずきんをきている。

……また胸が大きくなったのかしら。少し鎧がキツいわね。胸が育つのなら身長も育って欲しい。

「ふ~んふ~んふふ~ん」

鼻歌混じりに猪さんを解体し籠手に腰に付けられた袋の中に入れる。

これは『アイテムボックス』。魔法の産物で小さな袋に質量を無視して収納できる。これは行商さんから買ったもので愛用している。

「さて~」

猪の肉の殆んどを収納すると袋の中からクロスボウを草むらに仕掛けクロスボウに矢をつがえる。ロープをクロスボウの引き金と肉を繋ぐ。

狩りと言うのは、態々歩いて見つけ無くても良い。相手から近づかせ罠に嵌める事も狩りなのよ。

「よいしょ……ここら辺で良いかしら」

適当な木の上に登り太い枝の上に座りナイフに付着した血を袋から取り出した布切れで拭う。

私の狩りでナイフは本当に重要。手入れは欠かさずにやらなければならない。

「さてさて、来てくれるかな」

六本のナイフでジャグリングしながら獲物が来るのを待つ。

これを見た猟師さんやお母さんは「危ないから止めろ」と言って来るが、この程度の手先の器用さがないと狙ったところに寸分違わずナイフを投げるなんて芸当は出来ない。

『赤ずきん』の物語では赤ずきんは狩りをしない。物語と言う枠から外れるには物語ではあり得ない事をすれば良いのだからね。

私は私の物語は嫌いだ。

何が教訓だ、何が結末だ、下らない。

私の運命が物語で決まる事を私は許さない。

私の運命は私が決める。

『おい、こっちだ』

『まだ血を流して少ししか経っていないだろう。いい匂いだ』

『まあ、そっちの方が良いじゃねぇか』

「……来ましたか」

複数の男の声が聞こえると柔和な表情から冷徹な微笑に変わり六本のナイフの内五本をケースに収め木の枝に立つ。

これは御祓。私が物語から抜け出したと言うことの証明。そのために必要なのだ。

『お、あったぞ』

『ああ。良い匂いだ』

『本当についさっき死んだような匂いだ』

出てきたのは三頭の狼さんが草むらから現れる。そして、その機会をうずうずしながら待つ。

獣の臭いはこの辺りに五つ。草むらに隠れているようだけど、私の鼻は誤魔化せない。普通は食べれない魔物の肉を食らった事で嗅覚が普通の人間よりも遥かに高いのよ。

『いっただきまーす!』

食いついた!

『ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁガッ!?』

肉を口に加えて引っ張った瞬間クロスボウから矢が放たれ腹に矢が刺さり、その瞬間木の枝から飛び降りて首の骨を切り落とす。

『こい―――』

反応した狼さんの瞳に投げたナイフが刺さり痛みを感じる間も無くナイフを深く押し込まれ絶命する。

『まさか―――『赤ずき

「その名前で呼ばないでくれる?」

私に思い当たる節がある狼さんが何かを口にしながら噛みついてきたため左の二の腕を口に入れ倒れながらナイフを取り出し下顎に刺しそのまま殺す。

へぇ……動物たちの中では私は有名なのか。それは知らなかった。少し噛み傷があるけど、これぐらいなら問題ないわね。

『貴様……よくも部下を』

「あら、貴方たちが私の罠に嵌まるのが悪いんじゃなくて?」

『貴様……』

草むらから現れた狼さんたちのボスが私にはなしかけてくるため、冷酷に微笑する。

罠に嵌まるほうが悪いのよ。そして、殺されるのも貴方たちが悪いわ。

『殺せぇ!!』

「殺されるのは貴方たちよ」

狼さんのボスの命令と共に駆け出した狼さんにナイフを振るう。

やはり頭数の差は中々切り崩せないわね……。

「けれど、少しずつ」

両目を切り、足の健を切り、耳を削ぎ、鼻を切り、動きを封じていく。

体についた爪の引っ掻き傷や噛みつかれた時の傷の量と比べれば小さいけれど、五つの感覚の内三つを塞がれ足の健を切られれば立つことはできない。

『き、貴様……!』

「あら、これでお仕舞いかしら」

『貴様ぁ!』

四頭を地面に倒すと冷徹な微笑と共に狼さんのボスに近づき、狼さんのボスは唸りながら吠える。

私の微笑はただの痛み止めに過ぎない。鎧ざ隠してくれてる場所は良いけど額からは血が垂れているし胸の側面の服は破れて胸が見えてそこから血が滴っている。両腕には噛みつかれたし太ももや脇腹にも噛まれたため、血が服に滲んでいる。

重要な血管には傷ついてないから問題けど……少し量が多い。

『ぐおおおおおおおおおおおおお!』

狼さんのボスが飛びかかり私を地面に押し倒し肩に噛みつく。

「予想……通り!!」

噛みついてきた狼さんのボスの腹にケースから取り出したナイフ二本突き刺しそのまま蹴り、その勢いで転がって拘束から外れると脚に仕込んだナイフを二本とも取り出す。

「はい、これでお仕舞い」

そして二本とも投げ起き上がった狼さんのボスの両目に突き刺さる。

どんな時でも余裕あるように見せろ。これは猟師さんの教えだ。余裕があるように見れば獰猛な動物さんたちはそれを信じ自然と去っていく。ハッタリは得意なのよ。

「痛て……」

肩の噛みつき、骨に罅でも入ったのかしら。傷口を塞がないと……。

「よいしょ……」

赤いずきんを脱ぎ鎧を外して裸になると袋から包帯と薬を取り出して傷口に痛みを堪えながら薬を塗り包帯を巻いていく。

これで傷口を塞げたかしら……まあ、問題ないわね。

「く、くふ、くふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!!」

地面に倒れていた狼さんたちを殺し終えると恍惚に頬を染め笑い声をあげる。

やっと……やっと狼さんたちを殺せた!これで私は『赤ずきん』と言う物語から抜け出せた!ここから、私の、リリィ・フレイレッドの人生になるの!

『むう……凄まじい臭いだな』

「あら、そうかし―――!?」

背後から男が話しかけられ咄嗟に飛び退いた瞬間立っていた場所の地面が抉れる。

一体何が……!?

『だが、中々に良い。同族だろうと喰えない事はないからな』

草むらから出てきた白い毛を持った狼さんは地面を歩き狼さんたちを肉を裂き骨を砕き補職していき、私はナイフをケースから取り出して警戒する。

この狼さん……まさか猟師さんが言っていた魔物さん?なら、早く離れな――――

(……あ)

離れようと後ろに少しずつ離れていると頭に考えが過る。

―――『赤ずきん』で語られる狼さんは一頭だけ。

つまり、複数の狼さんではなく一頭で行動している狼さんを殺さないといけないと言うこと。

(……無理だ)

あの狼さんはかなり強い魔物だ。万全の状態なら兎も角、今の状態では勝ち目はない。

ならば―――

『む……離れないのか?』

「狼さん……」

恐怖をひた隠し狼さんに近づくと狼さんはおかしなものを見るような目で見てくる。

これは、本当に賭けだ。失敗すれば殺される可能性も内包した賭けだ。

―――私は、これに勝たなければならない。


「狼さん、私と友達になりませんか?(・・・・・・・・・)

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