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自害でお許しを……

 今まさに、絶体絶命の大ピンチを迎えている。


 ジェイドがジェイミーちゃんの中の人だと、レオナルド王子に知られてしまったからだ。

 それを知ったレオナルド王子は、見たことがないほど激昂している。


(やっぱり、私が腹を括るしかないわね)


 ワイアット様やニナちゃん、ヒナちゃんは全く関係ないのに巻き込んでしまった。

 ジェイドは私のためにジェイミーちゃんに変身してくれた。

 ラズ兄様だって、私のことをいつも助けてくれている。


(何よっ、遅かれ早かれ、私は破滅エンドを迎える予定じゃない! 少しくらい覚悟はできているわ。でも一番回避したかったレオナルド王子ルートの断罪だなんて……)


 レオナルド王子ルートの断罪は斬首だ。せめて違う方法を、と私は模索した。


(あ! あれがいいわ! 前世の私が見た時代劇で、切腹って方法があったわ! 首が真っ二つより、腹を切った方がマシよね。よし! こうなったら自害を申し出よう)


 私は意を決して、全てをレオナルド王子に打ち明けようとした。


「レオナ……」



----バタンッ



 緊迫した状況のサロンの中に、全く空気を読まない二人が入ってきた。


「ふふふ、とうとうバレちゃったのね」

「レオナルドも、ようやく次期国王としての素質が備わってきたってことかしら? 王妃としても、母としても、本当に嬉しいわ」


 今まさに、自害で許しを請おうとしたその瞬間、二人の女神が舞い降りた。


 いや、今までのことを考慮すると、もしかしたらこの女神たちは悪魔かもしれない。決して油断してはならない。


「えっ? どういうことですか? 母上?」


 あれほど激昂して我を忘れていたレオナルド王子が、一瞬にして自我を取り戻した。それだけでも、女神たちが降臨した効果は絶大だった。


「あら? 今までジェイドには協力してもらっていたのよ? あなたが立派な王になるために」


 何言ってるの? 当たり前でしょ? と言わんばかりに、王妃様が言葉を発する。


「「「「「協力?」」」」」


 ここにいる女神たちとヒナちゃん以外の全員が、声を揃えて首を傾げた。もちろんジェイドも。


(あれ? ジェイドも? ここはジェイドはハモっちゃいけない場面じゃない? と言うことは、やっぱりジェイドも初耳ってことよね?)


 これから先の展開が読めなくて怖い。けれど、私たちはこの女神たちに身を委ねるしかない。


「もう! 王になるためには、たしかな目が必要よ? いつ、どこで間者が紛れ込むか分からないもの。まさか、ジェイドの女装如きが見破れないなんてことがあるはずないわよね?」

「も、もちろんですっ」


 レオナルド王子は、これでもか、というほど首を縦に振っている。


(嘘だ、レオナルド王子は今、はっきりと嘘を吐いた。先ほど、恋心とまで仰っていたじゃないですか!!)


「ジェイドはあなたのためを思って、心を鬼にして、今まで女装してくれていたのよ。最初は『未来の国王陛下を欺くような行為は、私にはできません』って土下座までしたのよ。それにあなた、好き好んで女装して男とデートしたい?」

「いえ、俺にはそのような嗜好は……できれば、格好良い姿で可愛い女の子とデートがしたいです」


 とても素直に答えるレオナルド王子。


「ジェイドも同じよ。まさかそれを責めるなんてことはしないわよね?」

「当たり前じゃないですか! ジェイド、お前、俺のために……」


 感動的な場面に水を差すようで申し訳ないが、やっぱり全てが初耳だ。きっと、ジェイドもそうだろう。


 王妃様の言葉を聞くたびに、飛び出るんじゃないか、というほど目を見開き、開いた口は塞がらないでいる。

 ……というか、この場の雰囲気を見る限り、女神たち以外は全員が初耳みたいだ。


「これで、王に近付くための試練の第一関門は突破ね! 良かったわ。成績を落とした時はどうしたものかと心配になっちゃったもの」

「ふふふ、あの時もジェイドは泣きながら懇願してきたわね。『もう俺にはできません。大切な時期国王、大切な御学友を裏切るなんて、もう耐えられない。自害でお許しを……』ってね」


(お母様! さすがにそれは嘘だって気付きますよ!!)


 話を盛りすぎて、明らかに嘘っぽくなっている。いや、全てが嘘なんだけれど。


「ジェイド、それは本当か? お前はそこまで俺のことを……」


 ジェイドは恍惚とした表情で固まっている。決して女神たちの言葉に聞き惚れたわけではない。


 もう自分の手には負えない、どうしようもできない、と悟りを開いたからに違いない。


「よし! みんなの期待を裏切らないためにも、立派な次期国王に、俺は、なる!!」


 レオナルド王子はジェイドに「そこまで俺のことを思ってくれているのなら俺の側近にしてやる」とまで言おうとしてきた。


 それを絶対に言わせまいと、私は必死で阻止した。


(だめ! ジェイドは私の従者なんだから!!)


 二人の間に恋心は芽生えなかったけれど、熱い友情が芽生えた、と思う。






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