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王妃様救出大作戦(4)

「それで? どうしてあなたたちは、こんなイケナイことをしたのよ?」


 穴の中にいる男たちに向かって、お母様が叫んだ。叫ばないと声が届かないのだろう。とても深い穴だったから。


「言わねーよ、ババア」

「ふざけんじゃねーよ、ババア」

「早く出しやがれ、ババア」


 犯人の男たちのその言葉に、その場にいる全員が一斉に青褪めた。


(お願いだから謝って! すぐに土下座して! あなたたちには命乞いが必要だわ!! 死にたくないでしょ? 私たちも死にたくないのよ!!)


 私は心の中で必死で訴えた。けれど、もう手遅れかもしれない。


「ふふふ、よく聞こえなかったわ、なに?」


(怖い、笑っているはずのお母様が怖いよ……)


「うるせーよ、クソババア」

「黙れ、クソババア」

「帰れ、クソババア」


 ブチっと、何かが切れる音が聞こえてきた。


(ああ、終わった……)



ーーーードスーン



 犯人たちが落ちていた落とし穴が、一斉に深く掘り下がった。


「「「あーっちちちちっ!! 助けてくれえぇぇぇ!! ひぃっ、ごめんなさいっ!!」」」


(えっ、熱い?)


 穴の中をよく見てみると、なぜだか湯気が上がっていて、すでに下の方が見えなくなっていた。下の方では、物凄く熱いお湯が湧き出ているらしい。


「フン、あなたたちは一生そこにいなさい。仕方がないわね、こっちの男たちに聞きましょう」


 お母様が指をクイっと曲げると、



----ドサッ



 風魔法で連れてこられたのは、手足をガッチリと縛られ、口には猿轡までされている男たちだった。


(……大の大人が二人、しかもとても怯えているわ)


 レオナルド王子を見ると唖然としている。ラズ兄様は合掌して何かを呟いている。そして、私の目はジェイドによって塞がれた。


「え? どうしたの? これじゃ何も見えないわ?」

「サフィーお嬢様は、これ以上は見てはいけません」


 そんな中、お母様は全く躊躇うことなく、先ほどと同じ質問をする。


「モゴモゴモゴ」

「は? 聞こえないわよ、きちんと喋りなさいよ」

「モゴモゴモゴ」

「だから、聞こえないってばっ」

「スーフェ、さすがに猿轡を外さなきゃ喋れないわよ」


 そう言うと、王妃様が乱雑に男たちの猿轡を外したそうだ。

 

「ひぃぃぃっ」


 レオナルド王子の怯える声が聞こえてきた。さぞかし、いつもの優しい王妃様とは、天と地ほどかけ離れたお姿だったのだろう。


「俺らは頼まれてやっただけだ。いきなり身なりの良いやつが来て『これから村の悪口を言う生意気なガキが来る。そいつを攫ってくれ。そしてこの手紙を置いてこい。半分はガキの見張り、半分はガキの母親を痛めつけてくれ』ってな」

「それで、まさか見返りもなくやったわけじゃないんでしょ?」


 お母様が、躊躇なく男を問いただす。


「ああ、そうだ。俺たちだって、はじめは躊躇したけど、かなりの大金が貰えるから、それに目が眩んじまって。前金はもう貰っちまったから後には引けないし。俺らはこの村の者で、隣村が栄えてから観光客には素通りされ、もともと土も良くないから作物も育たなくて、財政難で廃村の危機なんだ。困ってたんだ、お願いだから許してくれ」


 男が悲痛な訴えをしているようだった。


「あなたたち、この方とそこのお坊ちゃんが誰か知らないの?」

「正直わからない、綺麗な若い母ちゃんだな、とは思ったけど」

「あら、許してあげようかしら」

「ベロニカ、勘違いしちゃだめよ。あいつが言っているのはジェイミーのことよ」


 一気に皆の視線がジェイドに向くのが分かった。


「頼むから巻き込まないでくれ……」


 ジェイドの呟きが聞こえてきた。その気持ち、よく分かる。


「いやいや、姐さんたちも物凄く綺麗だよ。俺ら姐さんたちのためだったら何でもするよ。約束する。せめて、俺はどうなってもいいから、他のやつらは見逃してやってくれ、頼む」

「兄貴……」 


(あら、感動のシーンぽいわ。私には何も見えてないけれど)


「もう一つ聞かせて、頼んできたのはどんなやつ?」

「なぜか、そいつのことは何も思い出せないんだ。ここにいるみんなも同じみたいだ。そいつが誰で、どんなやつだったのかも。ただ、昔大切にしてたものを盗られたとかって言ってたぜ」


(思い出せないってことは、記憶喪失ってこと? 一部の記憶がないってことは、余程のショックでその人のことだけを忘れたのかな? それとも人為的なもの? でも、そんなことができるのかな?)


「お母様、人の記憶を消す方法なんてあるのでしょうか?」

「……やって良いのか悪いのかは別として、あると思うわよ」


(へぇ〜、きっと世の中には未知の魔法やスキルがあるんだろうな。なら、私の黒歴史も消せるかも!? って、だめだわ、私の記憶だけが消えても意味がないものね。過去は消せないもの)


 その後、お母様がリーダーっぽい男の人と話し合って、色々決めた。


 もちろんアオも迎えに行った。今日はアオが大活躍したから、今度いっぱいお菓子を作ってあげようと、私は心に決めた。


「とりあえず、王妃様を無事に救出できて良かったわ! バンザーイ!!」





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