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王妃様救出大作戦(2)

 お母様とジェイドが、王妃様を連れて馬車に乗り込むこと。それが、今回の救出劇のスタートの合図だ。


 私とラズ兄様はアオと合流し、レオナルド王子の捜索を開始した。


「ラズ兄様、本当にレオナルド王子の居場所が分かるのですか?」

「ああ、ばっちりだ。むしろばっちり過ぎて、母様が何を持たせたのか、確信したって」


 そう話すラズ兄様からは、落胆の色が窺えた。


(ラズ兄様がそれほど落ち込むなんて、巻き込んでしまってごめんなさい……)


 ラズ兄様の言うとおり、レオナルド王子の居場所はすぐに判明した。


 少しだけ村から外れた場所に、小さな倉庫らしき建物があり、その中にレオナルド王子がいるのだという。


「アオ、こっそりと偵察に行くことってできる?」

『任せといて』


 私のお願いを聞くと、アオは勢いよく頷いて、建物を一回りして、すぐに帰ってきた。


『出入口は一つで、窓はなかったよ。表には一人だけ見張りがいたんだけど、さすがに中は見ることができなかったよ。ごめんなさい』


 アオから聞いて、ラズ兄様にも伝える。


「中には王子以外に三人の魔力を感じるな。母様は生きたまま捕らえたいって言っていたから……よし、作戦Bで行こう」


 作戦Bと、さも当然のように格好つけるラズ兄様。けれど、作戦なんて全く何も聞いていない。


「よし、行くぞ!」


 まず、建物の影に隠れて、出入口の前にいる見張りの男の様子を窺う。眠いのか暇なのか、頻繁に欠伸をしていて、全く緊張感を感じない。


「今がチャンス」と思い、ラズ兄様に目を向けて合図をした。


 再び見張りの男に目を向けると、そこにいたはずの男の姿が見当たらなかった。


「えっ!? ほんの一瞬だけ目を離した隙に、どこに行ったの?」

「サフィー、静かに。黙って俺の後ろを付いて来な」


 ラズ兄様の先導で出入口に近づくと、見張りの男が立っていた出入口前には、3メートル四方の大きな穴がぽっかりと空いていた。


 その穴を覗き込むと、見張りの男が見事に落ちていた。どうやら気を失っているようだ。


(これが噂の落とし穴!? 本当に一瞬の出来事で見事なナイスインだわ。 ん? 落とし穴って土属性魔法よね? まさか……!?)


「ラズ兄様って、土魔法も使えるの!?」


 ラズ兄様は口元に人差し指をあて「シッ」という仕草をする。その仕草に、慌てて私も両手で口を塞ぐ。


(危ない、危ない。気付かれてしまったら大変だわ)


「次はアオの番だ。お願いしていいか?」


 ラズ兄様はアオに、こそこそと耳打ちをする。


『オッケー、行ってくるね!』


 返事と同時に、出入り口前の落とし穴をピョーンと飛び越えて、建物の中に入っていった。


「さぁ、アオに任せて俺らはゆっくり待ってよう」


 ラズ兄様は呑気に昼寝を始めた。どうしてこの人はこんなに余裕なのだろうか。


「何か、全てラズ兄様にお任せしちゃってますね」

「ああ、気にしなくて平気だよ」


 ラズ兄様は優しいし、本当に頼りになる。今回みたいに、すぐに作戦を思いつくなんてすごいと思う。それに、


「ラズ兄様は、いつの間に土魔法を習得していたのですか?」


 水魔法、風魔法に引き続き、今度は土魔法だ。探知能力もあるって言うんじゃ、きっと、他の魔法や能力も隠し持っているに違いない。


「小さい時に母様に……落とし穴に落とされたことがあって、それから必死で特訓したんだよ。あのプールが因縁の場所だ」

「あっ、そう言えばプールは違う目的のために作られたって言っていましたね。ラズ兄様、碌でもない悪戯をして逃げ回っていたのですね」

「……」

「図星なんですね」


 そんな話をしている間も、建物の中から「ギャー」「来るなー」「死ぬー」「助けてくれー」という叫び声が響いてくる。


(アオは一体、何をしているんだろう?)


 すると、建物の出入口から、犯人の男たちが一斉に出てきた。……と思ったら、落とし穴に消えていった。


(わぉ! ナイスイン!!)


 見事なナイスインだった。たしかに、建物の中で、フェンリルに追いかけ回されれば、自然と建物の外に出ようとするだろう。窓がないんだから、出入り口は一つだ。そして、そこには落とし穴が待っている。策士だ。


『終わったよー。中に王子いたよ。生きてるみたいだから大丈夫!』


 背中にレオナルド王子を乗せて、落とし穴をピョーンと飛び越えて、アオは私たちの方に戻ってきた。


 私たちの前に来ると、背中に乗せたレオナルド王子をゆっくりと下ろす。

 レオナルド王子は「コレは夢なのか?」と驚愕の表情をしている。


「アオ〜お疲れ様。ありがとう。怪我しなかった? 大丈夫?」

『サフィー大丈夫だよ。サフィーは本当に優しいね』


 私はアオに抱きついて、もふもふを堪能した。


「そのフェンリルはサファイア嬢の従魔なのか?」

「ふふ、アオとはお友達なんです」


「ねー」とアオと笑い合う。


「助けてくれてありがとな。……それと、ひどいことを言って悪かった」


(ふふ、レオナルド王子も可愛いところがあるのね、って、王族の方が軽々しく頭を下げるのは良くないはずよね!?)


 突然レオナルド王子に謝罪され、私はあたふたとしてしまう。


「さあ、王妃様の無事を確かめに行くぞ」

「はい!」

「アオはここで、その男たちの見張りをしてもらっててもいいか?」

『オッケー!』


 ナイスインした男たちは、アオに見張っていてもらい、私たちは急いで王妃様たちのいる場所へと向かった。






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