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断罪イベントその後 後編

 気を取り直して、私はノルンちゃんに気になることを尋ねた。


「あの、ノルンちゃんの前世ってもしかして……」

「あら? やっと気付いてくれたの?」


 ノルンちゃんはとうとう私に、前世のノルンちゃんが誰なのか、正体を明かしてくれた。


 前世のノルンちゃんは、前世の私、あおいの主治医の先生、大好きなお姉ちゃんだった。


「最初から言ってくれれば、いいじゃないですか!!」

「何回もヒントをあげたじゃない『あなたに感謝してる』って」

「それだけでわかる訳ないでしょう……」

「だって、私があおいちゃんの主治医って言ってしまったら、絶対にサフィーちゃんはいろんな面で私に遠慮するでしょう?」

「そんなこと……ないと思うけど」

「私は、何のしがらみもない状態で、あなたに自由に生きて欲しかったし、あおいちゃんの願いを叶えるためにも、困っていたら絶対に助けてあげたかったの」


 前世でも散々お世話になって面倒見てくれた、お姉ちゃんのような主治医の先生が、また私のことを救ってくれようと頑張っていてくれたなんて……


(私、嬉しすぎるよ)


「それに、もう先生じゃないんだから!」

「はい、ノルンちゃん」


(ふふ、私がノルンちゃんの正体を知った途端、ノルンちゃんの口調が変わったわ。やっぱりこっちが素なのね)


 私が今、この場に立っていられるのはみんなのおかげだ。


「私、今、本当に生きててよかったと思っています。本当にありがとうございました!」


 私は姿勢を正し、みんなに向かって大きな声でお礼を言った。

 今言わなきゃ後悔する、きちんと言葉にして伝えたい、そう思ったから。


「よし! じゃあ、サフィー、俺はそろそろ行くからな。可愛いサフィーの卒業も見届けたし、俺もサフィーから卒業して、今から新しい道を歩むから」

「はい! 行ってらっしゃい、ラズ兄様!!」

「でも、何かあったらいつでも駆けつけるからな。ほら、行くぞ、マリリン」

「サフィーちゃん、心配しなくてもラズちゃんとルべちゃんは手取り足取り、アタシが面倒を見て、あ・げ・る!」

「え?」


(ラズ兄様が、まさかのマリリンさんをご指名? そしてマリリンさんもやっぱり制服を着てるのね。ラズ兄様の本命って、マリリンさんなの? ってことは二人は両思い?)


「サフィーお嬢様、ラズライト様は今から冒険者ギルドに行って、ギルドカードの申請を行うそうですよ。決して、お二人が両思いになったとかそういうことではありませんからね」


 また脳内を読まれてしまった。それとも顔に書いてあったのか。


(ラズ兄様は冒険者になのね。きっと、ラズ兄様ならお母様を超える冒険者にもなれるはず。何てったって、黒猫ちゃんの相棒までいるんだから!)


「ラズライト様! 待ってください。私も一緒に行きます。じゃ、あとはお二人さん仲良くしなさい。サフィーちゃん、今回は私を待たずに叶えても許してあげるからね」


 そう言うと、ノルンちゃんはラズ兄様を追いかけていった。


「俺のノルン、待ってくれ、一緒に我が国に帰ろう! エンディングのスチルシーンも一緒に再現しようじゃないか」

「絶対に嫌!! あ、ラズライト様、待ってくださーい。パーティーメンバーに聖女はいりませんかぁ?」


 ノルンちゃんも冒険者になるのか? と思っていたら、


「ノルン嬢、ぜひ我が王宮魔導士団に入ってください!」

「ちょっと、あなたたちしつこいわよ! ラズライト様がいないのなら入らないってば!!」


 ノルンちゃんは、見事に一気に新ルートが開けたみたいだ。ラズ兄様ルート、ニイットー王子ルート、そして、王宮魔導士団ルート。


 そして実は、ラズ兄様は王宮魔導士団の誘いを断ることに成功していた。レオナルド王子のおかげで。


 海でのかき氷対決の「何でも言うことを聞く権利」を発動したらしい。

 それにしても……


「ノルンちゃんを待つ? ジェイドは何か知ってる?」

「いえ……」


 ジェイドが顔を背け、その耳は赤い。これは絶対に何か知っているはずだ。


「そっかあ、ラズ兄様ルートが開かれたし、先生の夢も叶ったわけか。でも結局、感謝してるって一体何のことだったのかしら?」


 後日、ノルンちゃんに聞いたら、「そんなのスケ服を回避したことに決まってるでしょ。グッジョブよ!!」と言われた。


 ラズ兄様のスケ服を回避したことなんて、そんな設定があったことすら、すっかり忘れていた。


 そんな私の視界に、突然もふもふ様が入り込んできた。仕切りに私に何かを訴えているようにも感じる。


「そう言えば、レオナルド王子がいるのに、もふもふ様がいるのはどうしてですか? もふもふ様の中の人は一体どなたなんですか?」


 本来なら言及してはいけないこと。けれど、私はどうしても気になってしまい、聞いてしまった。


「あら? サフィーちゃん、気になるの?」

「はい」

「中の人はいないわ。もふもふ様はもふもふ様よ」


 お母様の言いたいことは分かる。中の人の話は禁句だよ、ということだ。


 すると突然、もふもふ様は手に持っているプラカードを裏返した。そこに書いてあったのは……


『どうしてお前たちは、俺を仲間外れにするんだ』


 どこかで聞いたことのあるフレーズだった。何となく、嫌な予感しかしない


「さあ、みんな、もふもふ様のことは放っておいて、向こうに行きましょう」


 お母様がもふもふ様を無視して、みんなを庭園の外に誘導し始めた。途端にもふもふ様は慌て出した。


 そして、公の場で決してやってはいけない禁断の行為に走ってしまった。

 頭部分を外し、叫んだのだ。


「どうして俺を仲間外れにするんだ!!」

「「「国王陛下!?」」」「父上!?」


 もふもふ様の中の人は、国王陛下だった。

 もちろん悪魔たち以外のみんなは驚き、思わず声を揃えてしまった。


「あら? 仲間外れなんてしてないわよ?」

「スーフェ、俺の分もよこせ、俺もスーフェやみんなとお揃いがいい、なあいいだろ、スーフェ」


 スーフェ呼びが解禁した途端、これ見よがしにスーフェと呼ぶ国王陛下に、うんざり気味のお母様は相変わらずの塩対応だ。


「……何のこと?」

「俺もみんなと同じ制服が着たい!」


 え? そこ? と、一同が唖然とする中、お母様とケール王妃様は呆れた顔をし、ベロニカ王妃様だけが微笑ましく笑っていた。


 どうやってこの事態を幕引きしようかと考えを張り巡らせていた時、可愛らしい天使が舞い降りた。


「私の大好きなもふもふ様は、レオ様のお父様だったんですね。これからは、お義父様とお呼びしてもいいですか?」


 ステファニーちゃんがエンジェルスマイルで、もふもふ様に抱きつきながら、おねだりをしていた。


(この状況の国王陛下におねだりをするなんて、なんて強者なの!?)


「ああ、もちろんだ。俺、このままもふもふでもいい」


 国王陛下が見事に陥落された。


「父上、ステファニーちゃんから離れてください。……!? ステファニーちゃん、お義父様ってことは、俺と!!」


 ステファニーちゃんは小悪魔な笑みで「ふふ」っと笑っていた。それは、天使から小悪魔に変身した瞬間だった。


「やるわね、さすがケールと腹黒国王の娘だわ」

「ええ、ステファニーは我が家で一番侮れないわよ。我が娘ながら、筋金入りの小悪魔よ」

「ふふふ、嫁姑、これからが楽しみね」

「「こわい、こわい」」


 ベロニカ王妃様の言葉に、お母様とケール王妃様は声を揃えた。


(あなたたち、全員こわいですから!!)







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