町へ行く前の試験
試験はある理由から始まった。
「父さん、俺、町行きたい」
アルギンが15歳になった誕生日、何が欲しいかと尋ねたら町に行きたいといった。自分はもう冒険者としては生きていけないのではと思っていたから。
しかしカイルたちはそんなことを息子が思っているとは知らずに、冒険者になるために行くのだと思っていた。そして、それはまだ許可できないことだった。
カイルたち両親にとって初めての子供。そして、アルバンたち祖父母にとって初めての可愛い可愛い孫である。そんなアルギンと別れたくはない。でも、一緒に町に行くことは出来ない。それはアルギンに妹が出来たからだ。
アルギンの妹はハイリ・フィーチャーという。アルギンと9歳年が離れており、今は6歳である。そんな彼女もアルギンには及ばないが才能があった。そんな彼女を育てなければならない。だから、一緒に町に行くことが出来ないのだ。
一緒に行けないから心配。まだ、自分たちより弱いから。だから、魔物相手にして、どれくらい強くなったのかを確認しようと。
「父さん、目的地まであとどれくらい?」
「あと、少しだ。でも、油断するなよ。ここら辺は更に魔素が強くなっている。さっきまで奴らより強い奴が出てくるぞ」
「分かってるよ、そんなこと。さっきのゴブリンも少し時間かかったし。あのゴブリン赤くなかった?」
「そうだな。あれも色違いのゴブリンだ。」
カイルたちは顔を引きつらせながら答える。自分たちの子なのに化け物じみてきたなと思っている。自分たちは15歳のときはこんなに強くなかった。そして、アルギンがゴブリンと同じように殺した赤いゴブリンは普通の緑のゴブリンの上位種のハイゴブリンだ。ゴブリンよりかなり強い。それをゴブリンと同じくらいの時間で倒してしまった。今の自分なら余裕だが15歳のとき出来たのかと聞かれれば無理だろう。
「あ、オーク3匹出てきた。オーク苦手なんだよね」
そう話していたアルギンたちの前に普通の緑色のオークとは違って赤いオークが出てきた。それはオークの上位種、ハイオークだ。アルギンはそんなことは知らないが。
アルギンは背中に背負っている大きい魔物を倒すようの大剣を抜き、構え、目で距離を測り、突っ込む。
ハイオークは近づいてきたアルギンに向かって木で出来た大きな棍棒を振る。それをアルギンはギリギリに避け、背中に回る。そして、大剣を一振りしてハイオークの首を落とす。
「まずは一匹」
残りのハイオークはミュリアとケイトを見て、そっちに向かおうとしていたがアルギンを危険人物と認めたのか、二匹はアルギンの向きなおす。そして、互いに目を合わせて、同時にアルギンに棍棒を振り落とす。
アルギンはそれを大剣で切り落とす。半分になった棍棒を見た、ハイオークたちは怒ったのかそれを捨て、こっちに突進してくる。
その二匹の間を通りぬけ、二匹同時に首を切り落とす。
「終わったよ。どうだった、父さん?」
アルギンは父さんたちに今の戦いにどれくらい時間がたっていたのか計って貰っていたのだ。
「29秒だ」
アルギンは父たちにはまだ遠く及ばない。だから、いつも戦闘後は各師匠に何処が
悪かったのかを聞いている。今回は大剣を使ったのでアルバンに聞いている。
「それはだな」
アルギンは大剣の師匠アルバンに言われたことをしっかりと頭に焼き付ける。
「なるほどね。さすがじいちゃん。それは気づかなかったよ」
「それを間違えると下手したら致命傷になるぞ」
「分かったよ。父さん、こいつらどうする?さっきみたいに燃やす?」
「そうだな。燃やしとけ」
「はーい」
ハイオークを風魔法で浮かび上がらせ、3匹を一箇所にまとめる。そしてそれを火魔法で燃やし、灰にする。山火事にならないように消火もしておく。
再び湖に向かって歩き出す。アルギンはその湖に何があるのか全然知らないのだが。
途中でハイオークがたくさん襲ってきたが、アルギンは鍛錬代わりに倒していった。少しでも英雄に近づくために。
湿度が高くなり、湖が近づいてきたところで襲ってきたハイオークは湖の魔物の餌になるので、ミュリアが風魔法で運んでいる。
そこからしばらく歩くと大きな湖までたどり着いた。そこは何故か黒い霧には覆われてはおらず、太陽の光が直に当たる。
「父さん。ここ?」
「そうだ。アルギン、今からこのオークでここにいる魔物をおびきだす。そいつを倒せ。時間は幾らかかってもいいが、倒せ。ちなみに普通は2分くらいだ」
この二分というのはカイル自身がこの湖に住む魔物を倒すのにかかった時間だ。
「二分かぁ。やってみる」
「じゃあ、ミュリア、頼む」
「分かったわ」
ミュリアが死んだハイオークを風魔法で湖に投げる。
すると、湖から巨大な黒色の蛇が出てきて、それをパクリと人のみし、こちらを睨んできた。その蛇は全身を黒い鱗で覆われており、アルギンの二倍の大きさを持つハイオークを丸呑みできる大きさを持っていた。