あなたへ。映画神より。
正直俺は最近することがなくなってきた。
学校での勉強。授業など聞かなくてもわかる。
体育。練習しなくても大抵のスポーツはできる。
友達?友達と遊ぶのは楽しいな。けど、何かが足りない。
彼女?性的欲求はあるが、本当に好きな人が出来るまではしたくない。
ゲーム、漫画、ラノベ?前までは面白かった。けど、最近飽きてきた。
剣道、空手、柔道、ボクシング?あれは楽しい。でも、まだ何かが足りない。
俺が一番楽しいと思っているのが映画鑑賞。でも、ただの映画じゃない。監督が永賀信の映画。
この人の映画は本当にすごい。
この人はド派手なアクション映画をたくさん作っている。彼のバトルシーンはCGとは思えないCG技術が使われている。何にも違和感がない。俺も初めて見たときは本当に感動した。
観客がどの方向からのシーンを見たいのか、完全に把握しているような完璧なカメラ配置。
そして何よりすごいのが、その映画に登場した何人かが新人で後々デビューをしていることだ。
これはすごいと思って、ネット、本、あらゆるもので調べまくった。
そして、不思議なことが分かった。誰もこの人の映画の撮影現場を見たことがないということだ。
これはおかしい。映画の撮影には何かの許可証がいる。でも、永賀信は一回もしていない。それも一つではなく、全ての映画でだ。
更におかしいのは、永賀信はどこの会社にも所属していないのだ。アシスタントもいない。なのにあんなすごい映画が作れている。
これはおかしいと思い、更に調べなおした。でも、結局分かったことは一つもなかった。
今度は映画のデータを調べてみた。すると、分かったことはCG技術が使われていなかったということだ。カメラの映像を切ってつなげただけだった。
でも、映画の中で倒壊したはずの駅は倒壊していない。映画の中で死んだはずの俳優もバラエティー番組に出ていた。
これは明らかに以上だ。でも、そんなこと疑っている人が一人もいない。
そこまで分かって俺の調査は終わった。結局真相にはたどりつけなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そのことが分かった一カ月後の今、俺の目の前には一つの手紙があった。
差出人は分からない。でも、宛先には俺の住所と茂垣隼人の文字がしっかりと記されていた。
手紙をもらう相手なんか学校の女子くらいしかいないだろう。家族はいない。
でも、俺は基本顔面偏差値より少し高いだけのモブ顔。そんな相手なんかいない。
恐る恐る俺はその手紙を開けた。
最初に差出人を見たがそこも名前がなかったので仕方なく最初から読むことにした。
『茂垣隼人様へ
いつも私の映画を見てくださってありがとうございます。
良く気づかれましたね。私の映画がCGではないと。人間を騙すことなど簡単だと侮っていました。
そんなあなたに特別にあなたへのプレゼントを与えましょう。
それは『相手の能力をコピーし使用できるようになる能力』です。
「はぁ?何言ってんだ」と思ってるでしょうか?
それとも、「ああ、なるほど」とでも納得しているのでしょうか?
私ではそこまでは分かりません。
それでは、能力の説明の方に移りましょう。
能力とは簡単に言うとゲームの魔法やスキルのようなものです。体が火になったりゴムみたいになったり。超能力とでもいえばいいでしょうか?
これらの能力は人が生まれつき持っている能力ではありません。私が与えている能力です。
では、あなたの能力『相手の能力をコピーし使用できるようになる能力』はどのような能力なのか?
それはそのままの意味で周りの人の能力をコピーして、自分が使えるようになる能力です。自分がコピーしたいと思っている能力を持っている人にコピーと唱えながらその人に触ると自分でも使えるようになります。
でも、触るといっても何か間に挟まってはいけません。素肌と素肌の接触でないと成り立ちません。
そして、驚きの機能がさらにあります。自分には要らないとと思った能力を他人に分け与える事が出来ます。
すごいですね。現実で俺TUEEEできますよ。おめでとうございます。
能力の説明はここまででいいでしょう。
次は私がどうしてこのようなことをしているのかということです。それは私が映画を作るのが大好きだからです。映画のためならば人間の命なんてどうでもいいんです。
でも、それをすると人間があまりにもかわいそすぎます。なので、戦闘中は地球をすっぽり覆う結界を張ります。その結界内で人間が死だり、建物が壊れても、結界を解くとしっかりと死んだ人間は生き返りますし、壊れた建物はもとに戻ります。まぁ、結界を解くとその時起こったことは、能力を持っている人間を除いて記憶から消えますが。
では、死んだ能力者はどうなるのか?能力がなくなり能力を持っていたころの記憶ずべてが失われます。
私って優しいですね。
では、どんな人間に能力を与えているのか?それは人生に絶望した人。俳優や女優になりたい人とかですね。あなたはどちらでもありませんが。
俳優、女優になりたくてもなかなかなれない人間にチャンスを与えています。
ミッションをあたえてそれが成功すれば映画に登場させてあげる。そんなことです。私の映画に登場すればほぼ必ず俳優や女優になれますから。
ここまで説明すれば分かりますね。私の映画の内容は私が能力者に与えたミッションをつなぎ合わせ出来ているのです。なんて素晴らしい。
ですから、私の映画の秘密を知ってしまったあなたにも参加してもらわないといけないのです。これはお願いではないのです。命令です。
あと、結界が張っていないときに人間を殺せば生き返りませんから、そのことだけは知っておいてください。
では、またいつかお会いしましょう。ミッション楽しみにしておいてください。
永賀信より』
このありえない手紙を読んだとき、わずかに口が笑っていたことを俺は知らなかった。