人の役にたつということ
久しぶりの更新で申し訳ありません!!!<(_ _)>
「いくぞっ! ステータスリセットッ!」
『ゴブッ!!!!』
目が合って数秒、互いの意思に通じるのは敵の殲滅――
人とモンスター、互いに形は違えど意思は同じ。己の命をかけ、相手の命に食らいつく!
「はぁぁぁぁぁぁッ!!!」
『ゴブッ!?』
木の棒を構えて直進してくるゴブリンに対し、静流は底上げされたAGIでひらりと身をかわす。
(いけるっ!)
心の片隅にある恐怖という二文字を己の速度でカバーする。
全く信用していなかったスキルを全力で信じてやる! と、笑みを浮かべた静流は間髪入れずに跳躍し、
叫ぶ――
「ステータスリセットッ!!」
「……す、凄い」
先程まで怖がっていた冒険者とは思えない程の静流の動きに、ナナは一歩も動けないでいた。
「俺だってなぁ! やれば出来るんだよぉぉぉぉッ!!!!」
『…………』
奇妙な程に動かない敵を見た静流は、なりふり構わず双剣を上段に構え、全振りしたSTRでゴブリンの両肩目掛けて振り下ろす。
「食らえっ!」
キラリと閃かせた双剣は空気を斬ったあと、ゴブリンの肩を捉え、サクリと綺麗に肉を裂く。
「やった――」
手応えのある感触に歓喜したその直後、いきなり終着点へとたどり着いた双剣は勢いを失い、ピタリと止まった――
「えっ……」
『ゴブゥゥゥゥッッ!!!』
それを狙っていたかのように不気味に口を歪ませたゴブリンは、己の筋肉質の足に力を入れ、
静流諸共飛んだ――
「うわぁぁぁぁっ!!」
何としてでも離さまいと双剣を持つ手に力を込めるが、ゴブリンの並外れた脚力によってあっという間に静流は宙を共に舞い、手を離してしまう。
「くっそ、ステータスリセットッ!」
頭から垂直落下する形となった静流はすぐに機転をきかし、異様に下がっているVITにステータスを振り直す。
はずだった――
「~~~~~~~~~~~ッ!」
直後に響いたのはグシャリという脚による悲鳴。
VITにステ振り出来ていない静流の右足は、赤子の手をひねる様に簡単に折れた――
「静流さん!!」
聞いただけで耳を塞ぎたくなるような音を聞いたナナは、自分の役割をも捨て静流に駆け寄る。
ナナの魔法詠唱は長い――
それ故の戦闘距離。基本的に無防備になってしまう詠唱時は、敵の手に届かない距離に居なくてはならない。もちろん上位魔道士になれば、動きながらの詠唱も可能になるが、今のナナにはそのような技術を持ち合わせていない。
「くっ……そ、スキルを発動出来なかった――」
額に浮かぶ嫌な汗と共に唇を噛んだ静流は、己の足より先に、勢いをなくしつつあるゴブリンを睨みつける。
『ゴブッ!』
後は重力に任せるだけとなったゴブリンは木の棒を上段に構え、静流の頭を目掛けて飛んでくる。
(まずい……)
まともに立つのすら厳しくなった今、出来ることはステータスリセットだが――
(上手く反映されねぇ……)
静流の現在のステータスはSTR全振りのまま。何故かステ振りが上手く反映されず、完全無防備の状態となっていた。
脳裏によぎる【制限】という嫌な言葉。
使い慣れていない己の欠陥という可能性に意識が遠のきそうになる。
(どうしたらいい……)
刻刻とゴブリンとの距離が縮まっていく中、双剣すら無い静流に出来ることとしたら――
(迎え撃つ――)
木の棒諸共殴りつけ、押さえ込んだところをナナに倒してもらう。
(それしかない……)
本当最悪だ……と、悪態をつきながら右手を力強く握り、限界まで腰を拗じった静流はナナに向けて指示を飛ばす、
「俺が捕まえたその隙にやってくれ!」
「そんなのダメだよ!」
『ゴブブッッッ!!』
いよいよ来てしまった射程圏内。
静流の言うことも聞かないで詠唱を行わないナナは静流の元へ走り続ける。
(だめ、あれはまともに捌けるものじゃない。くらえば――)
死が待つのみ。
それがわかっているナナは首を縦に振ることをしなかった。
『ゴブゴブゥゥゥゥ!!!』
微動だにしない冒険者を目の前にしたゴブリンは、目をギラつかせ、もらったとばかりにヨダレを垂らしながら腕を振り下ろした。
「くっそがァァァァ!!!!!」
こんな所で死ねない。
それだけを心の支えに木の棒目掛けて真っ直ぐ拳を突き出したその時だった――
「がはっ……!!」
「……!」
静流とゴブリンの間に介入したのはナナ。
まともな防具もつけていないナナの背中に振り下ろされた木の棒は、シャレにならないほどの火力である。
それなのにもかかわらず……。
ナナは、大丈夫……。と苦し紛れに笑った。
「私、人の役に……たてたかな…………」
「な、何してんだ!!」
虫の息とも取れるナナの姿に、静流は焦りと怒りを覚える。
今も尚ゴブリンは目の前で息を荒らげるが攻撃しようとはしてこない。
「早く! 早く逃げろ!」
静流の荒らげた声がルームに響く。
それでも首を横に振ったナナは涙を流した後、美しい笑顔と共に意識を失った――
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