闇×病み
( ̄^ ̄ゞ
「…………ぐす」
「まぁ、主人の分身みたいなものだからな……この棒が……あんちゃんなのよ……」
メタリックな短棒を片手に泣く静流は、ガンドに慰められていた――
「これで…………どうやって戦えばいいんだよッ!!!!」
「わからんッ!」
激昂激昂激昂である。
ガンドが言うに、作られた武器は所持者の姿を写した物であり、主人によって形、性能が違うらしい。故にこの世に1つしかない武器なのだ。
で?
静流の頭はその一文字に尽きていた。
いや、で? やん?
まぁ、つまり静流本人は、短くて細いこの棒というわけである。
「いや、死のっかな」
「…………ごめん……ほんと、ごめん」
正直ガンドに非は無いが、作った者として最大限の謝罪をするガンド。
そんな二人を見つめるモモ達は、もう何を言ってあげたらいいか困り果てていた。
「ねぇねぇソティアちゃん。あんな棒でモンスターなんて倒せないよね? もう普通に武器買った方がいいんじゃない?」
「……ま、まぁ……あれはさすがに気の毒ですね……」
「何言ってるの!?静流くんは双剣使いになるんだからっ!」
いやもう、この棒武器として見てるやつ誰もいないじゃん。
三人の会話に追い打ちをかけられた静流は、下を向いたまま立ち上がり、俺もう帰る。と扉へ足を向ける。
「あ、あんちゃん。分かった。せめてものお詫びとして防具一式と武器持ってっていいぞ……」
「ありがとうおっちゃん……いずれお金は返しに来るから……」
「お……おう」
ガンドの優しい提案に少し悩んだあと、静流は軽装がいいかなと、目立たない篭手にすね当て、他には服の中に付けれる薄い胸当てを貰った。その他に、この街に似合わないその服装変えた方がいいよというソティアの提案により、黒いインナーに白をベースとした安そうな服も貰った。最後にモモにオススメされた双剣を貰い。ガンドから、これも持っていけ。と、短棒をしまうケースと腰につけるアイテムポーチを貰った。
いたせりつくせりだったが、なんかいまいちぱっとしなかった。
ありがとうと言って扉を開けた静流の後をいそいそと追う3人。
見送りをしたガンドは、悪い。俺のシードは武器を作れないのかもしれない……。と一人悩みまくるという、最悪の結末になった――
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「し、静流くん。一緒にほら! ダンジョン行こ! 凄いよこの双剣! キラキラしててかっこいいよ!」
「ありがとう……」
「うう………………」
頑張って慰めようとするモモに静流は、ぎこちない笑顔で答える。
いや、普通に考えてこの世界来てからまともな奇跡起きてないからな? まじでこのゲーム作ったやつ許さないからな?
能力にせよスキルにせよ武器にせよ、毎回毎回ハズレ散らかしちゃってんだから――
静流は、そう言う運命なんだなぁ……。と空を仰ぎながら足を進める。
すると、後ろを歩いていたソティアが何かを思い出したようにはっと立ち止まり、
「あ、まって、今日ってスタコラ八百屋のお手伝いの日じゃ……」
「「あ……」」
やばい! と汗を流したソティアは、わたわたしながらモモの髪の毛を引っ張る。
「静流さん。私たちお手伝いしに行かなくてはならないので、ナナとダンジョンに行ってください……ナナ。あなたの分はモモに働かせるので、任せたよ……」
「ラジャッ!」
「ちょ、なんで私~~!?」
そう言って爆速で走り去って行った二人を見送った静流が、はぁと一つため息をついたあと、んじゃ切り替えていきますか! と、ナナに手を出した時だった――
「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい――」
と、
何があったと思わず聞きたくなるような絶望に満ちた声で謝り続け始めたナナは、もう先程のナナでは無く、闇そのものだった――
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