現実
紗奈が可愛そうで仕方ない……
「…………ん」
意識が朦朧とする中目を開けた静流の視界には、見慣れた景色が広がっていた。
無駄に広い部屋に、いつも静流が寝転がってはテレビを見ている紺色のソファ。
「……家なのか?」
そんなことを呟きながら辺りを見渡す静流は、どうにも帰ってきたという気持ちにはなれなかった。
時計を見ても、あの世界に行く前と少ししか進んでいない……。
夢でも見ていたのかと思い、テレビをつけソファに腰を下ろす。
体に痛みはない。達也の能力を受けていたことを踏まえたとしても、素足で歩いた時の傷はあったはずだ。
「ノーダメージ……」
達也に初めてこのゲームの話をしてもらった時、ダメージはゲームから戻れば完治してると教えられていたが……。
「なぁ達也……本当に死んじまったのか?」
達也の最後の笑顔を思い返しながら、そんな言葉を漏らす。
あの世界で死なんて生まれないはずなんじゃねぇのかよ……。と、悪態をつきながらソファによしかかった静流は、今後のことを考える。
「とりあえずあのマッチョ仮面は俺がぶっ飛ばさねぇと……」
あの仮面越しに伝わるサイコパスオーラを思い返し、怒りが込上げてくる静流は、握りこぶしを作りながら歯を噛み締める。
「まずは、すぐにでもあの世界に戻るしか……」
と、何もかもが半信半疑の静流が、なにか行動しないとと、懐からガードを取り出そうとした時だった。
『速報です、またしても原因不明の死が――』
「ん?」
テレビに流れる速報に何故か引っかかった静流は、画面を見入る。
『最近原因不明の死が連続で起きていますが心配ですね――』
「いや……もしかしてあれ…………」
静流は亡くなった人の現場が映る画面を見て、あることに気づいた。
「もしかしてこの死んだ人達……みんなSPゲームプレイヤーなのか?」
死体があったと思われる付近に、真っ黒のカードが落ちているのを見て、静流の背中は泡立っていた。
似ているカードがたまたま落ちていただけなのかもしれないが……嫌な予感しかしなかった。
達也が言うには基本的にあの世界で人は死なない。マッチョ仮面が特別な力を持っていたからこそ生まれた死だと考えるべき……つまり。
「これまでの原因不明の死はマッチョ仮面がやったのか……」
何かを悟った静流は、弾かれるようにゲームの世界に戻っていた――
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「うーん。全然達也から返信こないし、もう寝ちゃったのかなぁ。絶対あれSPゲームのカードだと思うんだけど……」
静流と同じくニュースを見ていた紗奈は、そんなことを呟きながら、まいっか! と、クマのぬいぐるみを抱きしめながら布団に潜る。
「はやく達也に会いたいなぁ……さっきあったばっかりだけど!!」
達也から貰ったプレゼントのことを思い返し、きゃーー!! と一人騒ぐ紗奈が現実を知るのは、もう少し先の話だ――
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