ゲームエンド後編
ちょっと内容長めだったので執筆2日かかってしまいましたァァm(*_ _)m
『なんだコイツ――』
「んだよこれ……」
その場の誰もが固まった。
見える見えないの問題じゃなかった。
達也は……
――風になっていた。
壁、地面、そこらから僅かに舞う土煙。それが居場所を教えてくれるが、達也の姿を見ること、達也の居場所を完全に特定することは出来なかった。
唖然とする2人を置き去りに加速する達也は、先程落としてしまった白身のナイフをいつの間にか回収し、スペアナイフと共に煌めかせ、マッチョ仮面の右肩を切りつけた。
「ふっ!」
『…………ッッ!?』
切られる瞬間も目にできなかったマッチョ仮面は、驚きの表情とともに反射的に右肩を抑える。
それでも尚スピードを緩めない達也は、左膝、背中、右太股に二本のナイフを滑らせる。
『グアァァッッ!』
血飛沫が生まれ続ける己の体に苦しみながら叫ぶマッチョ仮面は、達也の場所を見極めようと辺りを血眼で探す。
そんなマッチョ仮面の隣で棒立ちだった静流は、今も尚淡く光る体を見ながら思っていた。
(なんで達也はこんなに強いのに……倒すのは無理って言ったんだ……?)
引っかかる。
それが、達也がこの速度を出すのに己の身を削っているのか、マッチョ仮面にまだ隠し玉があるとわかっているのか。はたまた……
――両方なのか
そんなことは分からない。
ただ、どの道考えるだけでゾッとする発想に、静流は首を大きく横に振る。
そして、現実と向き合おうとマッチョ仮面を見た時だった、
それはもう始まっていた――
「クソがァァァァァァァァァッ! これで終わりだくそ仮面ッッ!」
空高くまで跳躍した達也が、重力と共に加速し、ナイフをクロスさせ前に突き出し、トドメの一撃を顔面に喰らわそうとした時……。
マッチョ仮面はククッと笑っていたのだ――
「……っ! ダメだ達也っ! ……ちっ、くしょうがぁぁぁぁ!!!」
横から見ていた静流には分かった。
マッチョ仮面がトドメを刺されるこの瞬間を待っていた事に――
「……なっ!?」
ナイフとマッチョ仮面の距離が僅か数センチになった時、静流は自分の体を犠牲にして達也のナイフを受け止めた。
もちろんダメージはない。
だからこその行動だった。
「なにやって……」
『ちっ、邪魔すんじゃねぇクソがァァァァァァァァ!!』
達也の拍子抜けした声と共に、憤怒した声を荒らげるのはマッチョ仮面。
自分が長らく耐え、温めていた己の技を邪魔され苛立ったのか、なりふり構わず右腕の腹で静流を横薙ぎに吹き飛ばす。
もちろん達也の能力でダメージはないが、ノックバックが起き、先程達也がぶつかった壁まで勢いよく吹き飛んだ。
「うわぁぁぁぁっっ!!!」
「静流っ!!」
『ククッ……よそ見すんな、お前も一緒にぶっ飛びやがれぇぇ!!!』
「なっ……」
もちろん油断なんかしていなかった。
ただそれは今の状況での話だ。予測不可能はまた別の話……。
静流が石壁を崩しながら立ち上がったと同時に、マッチョ仮面の左手は紅く煌めき、達也の腹……否、体全身を殴打され静流と同じ末路を辿らせていた。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
――ドスン
という鈍い音共に壁に再び穴を開けた達也は、今度こそ虫の息となっていた。
そんな達也に駆け寄った静流は声を咄嗟に荒らげる。
「おい達也! もういい! 早く自分に能力使え! このままじゃお前が死んじまう!!」
隣で苦しむ親友に涙目になる静流は、そう怒鳴ることしか出来なかった。
『さて……もう終わりにするぞ……糞ガキ共……』
鈍く重い声が響き渡る。
治癒を施しながら近づいてくるマッチョ仮面に恐怖しながら静流は何度も早くしろ! と言い続ける。
しかし。
何度言っても達也は弱々しく首を横に振り続けた。
そんな達也の態度に痺れをきらせた静流は、なりふり構わず不細工な顔で叫び散らかす。
自分が弱く必要価値がないこと。親友を失いたくない気持ちが自分にもあるということ。子供の頃のあの仮を返したいということ。
全部言った、どうにかしてでも達也には生きて欲しいと思ったから。
それでも達也は首を横に振り、重い口を開いた、
「お前は……俺が一番自慢出来る親友で……くっそ最高の奴なんだぜ? いいか静流……よく聞け……お前は弱くない。そう思いこんでるだけだ……親友の俺が保証してやんよぉ……っ!」
そう言って笑った達也は、半分意識を飛ばした状態で立ち上がった。
「ったく。だからここは来ちゃ行けねぇって言ったのによ……。静流いいか? 俺が死んでもお前は勝て……どんな野郎にも勝て。勝って勝って勝ちまくれ……俺にはもう……出来ないが……お前はできる、絶対に!!!」
そして達也は、俺の目指した太陽にお前が代わりになってくれと笑い、ボロボロの体で静流の前に立った。
「……だ……だめだ……だめだ達也! 俺はお前がいないと!」
涙を流しながら叫ぶ静流に、達也は俺がいなくてももう大丈夫だぜと笑い、マッチョ仮面に飛びかかった――
先程のMAX速度の十分の一も出ていなかったが、今までのどの攻撃よりも静流には温かく、そして強く感じた。
まるで静流の背中を押すように温かく、死んでも親友だという強い気持ちが伝わった。
そして最後に、もう俺の後はついてくるなよ? と皮肉めきながら笑った達也は、マッチョ仮面の懐に潜り込み、白身のナイフを突き立てる。
『……ククッ、クソみてぇな攻撃だな……まぁ、お前の能力はもう俺の物だ、死んでも仲良くしような……ククッ…………』
それがマッチョ仮面なりの思いやりなのかはわからないが、最後まで手を抜くことは無かった。
――本気の一撃。
右腕に更に力を込め、超巨大大剣に変えたマッチョ仮面は、あばよと大振りに振りかぶり、無抵抗の達也を容易く押し潰した――
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次回からは完全静流主人公パートですよ!