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9話 魔法薬の力

 ルシアを見捨てたパーティは、さっきの俺の発言でこの国の冒険者ギルドでは行動し辛くなっただろう。


 自業自得でしかないし、俺はギルドの外に出ると、かなり落ち込んでいるルシアが俺の元に来て。


「あ、あの……やっぱりDランクでも役立たずだった私が、Bランクの冒険者パーティは無理だと思うのですが……」


 おずおずとそう呟くけれど、今のルシアは自暴自棄になってしまっているのだろう。


「色々と間違っているぞ」


「えっ?」


「ルシアは素質があるし、今回悪いのはルシアを捨てた奴等だ。そして、俺は最強の冒険者を目指している。ルシアにはSランク冒険者パーティの一員になってもらうつもりだから」


「ええっ!? いえいえ! 私なんかじゃ……」


 ここは強引に行くべきか。


「なんでもすると言っただろ? それならせめて、俺がパーティを抜けて欲しいと言うまでは、行動を共にしてくれないか?」


「っっ!? そ、そうですね……解りました。なんでしょうか、この気持ちは……」


 昨日カーラが俺に見せた反応と同じだな。

 顔を赤くして頬を触っているけれど、年下で小柄の弱そうな少年に強く言われることが快感となっているのかもしれない。


 とりあえず、ルシアを鍛えるのは明日にしよう。

 アリシア姉さんとキャシーと遭遇するまでに、なるべく早く、とにかくアリシア姉さんに抵抗できるぐらい強くしなければならない。


 仲間を集めようと考えた時点で色々と用意はしているから……今日はとにかく、俺はルシアの精神状態を何とかしようとしていた。


 × × ×


 あれから俺達は大衆浴場に行き、王都でもかなり高価な宿の一室をとっている。


 ベッドが二つ並んでいる広く豪華な部屋で、大衆浴場から出てきて以降、装備を外して寝間着なのか簡素なネグリジェを着たルシアが困惑としながら、どこか期待した様子で周囲を見渡して。


「そ、その……なんでもするということはやっぱり、そういうことなんですね」


 ルシアは自分で言いながらも更に顔を赤くして、息がかなり荒くなっているな。


「ルシア、これは確認のために聞いておきたいんだけど、俺のことが好きか?」


「すっ!? リベルはそういうことを面と向かって言えるんですね……出会ってから半日も経っていませんけど、優しくしてくれたリベルなら何をされてもいいと思えるようになっています……惚れやすいと思われても仕方ないですけど、好きなんですから仕方ないじゃないですか……」


 顔を真っ赤にしながらルシアが両手を振ってそう言ってくれる。


 だからこそ、俺は言わなければならない。


「惚れやすいか。俺も半日だけどルシアと恋人になれたらいいなと考えているから、そこに関しては気にしなくていいだろ」


「ほ、本当ですか! それなら――」


「しかし、俺は今のルシアと恋人同士になることができない」


「なっ――」

 

 俺の発言を聞いて、ルシアが目を見開かせて。


「ど、どうしてですか!?」


「そうなった場合、ルシアは近日中に殺されるからだ」


「えええぇぇぇぇっ――っっ!!!?」


 まさか俺と恋人になったら近日死ぬとは思っていなかったのか、ルシアは今日一番の驚きを見せていた。


 宿は高価だから防音になっている。

 絶対に驚かれることがわかっていたから高い宿にしたけど、正解だったな。


 驚くルシアに対して、俺は事情を説明することにした。


「俺には姉と妹が居る……妹のキャシーはハーレム思考だからいいのだが、アリシア姉さんは独占欲が強いから、キャシーと親友のカーラ以外の女性が迫った場合、その女性を排除しようと動く」


「あ、あの……色々とおかしくないですか? いえ、私もリベルと付き合えるのなら、リベルに何人恋人居ても構いませんけど……」


 自分に自信がないからこその発言だろうし、もしルシアが俺を独占したい場合はキャシーも敵に回すから、そこに関しては安堵するしかない。

 どう説明すべきかと考えながらも、俺は説明を放棄して。


「俺の姉と妹はヤバいんだ」


「なるほど、一週間でBランク冒険者になったリベルのお姉さんと妹さんですもんね!」


 今までの俺から納得してくれたみたいで、ここから本題に入ろうとしていた。


「ルシアはなんでもすると言っていたから……俺が調合したこの魔法薬を飲んで欲しい」


「魔法薬、ですか? というか、魔法薬の調合ってかなり高度な錬金魔法使いが、完璧に調合しないと真っ黒な失敗水になるって聞いたんですけど……超綺麗な青色ですね……」


 ルシアが唖然としながら俺が調合した魔法薬を眺めるけれど、素材が貴重だから、前世の知識を思い返し慎重かつ真剣にやったからこそだな。


「明日からルシアは鍛錬をしてもらうけど、これを飲んで寝て起きれば成長速度が上がる」


 万一副作用で苦しみ始めた時に備えて、俺は傍に居なければならないから二人用の部屋をとっていた。


 色々とルシアを誤解させてしまったかもしれないけれど、ルシアは俺が取り出した魔法薬を受け取って。


「これを飲んで明日鍛錬をすればいいんですね!」


「ルシア、少しは警戒しないのか?」


「リベルの言うことなら、私はなんでも聞きますよ! 命の恩人ですし、その、仲間なのですから……」


 後半は少し小声になりながらも、ルシアが俺に微笑んでくれる。


 アリシア姉さんも似たようなことを言っていたけれど、姉さんは何も言ってないのに色々とやっていたっけ。


 ルシアが魔法薬の瓶に口をつけて飲み始めて……どうやら、問題なく飲み終えることができたようだ。


 これで後は眠れば、明日一日中は成長速度が上がると考えているも……いきなりルシアが俺に抱き着いてきて。


「リベル~~ペラーネのパーティから追い出されちゃった私を慰めてくださいよ~」


 今までずっと涙目にはなるも泣くのは堪えていたルシアが、いきなり号泣して俺に抱きつき、体を摺り寄せてくる。


 魔法薬の原料に酒は入っていたけれど少量のはずだ……問題はないと考えていたけれど、ルシアはすぐに酔ってしまうのか。


 俺の服を脱がそうとしてきたのを抑え、ルシアが寝間着を脱ごうとしたのも抑える。


 もしこの行為がアリシア姉さんに判明した瞬間、ルシアは死んでしまうだろう。


 ベッドの上で抵抗しながらも、俺はルシアの愚痴をとにかく聞いていく。


「私は冒険者になってからそれはもう頑張ったんですよ! しっかり活躍していたのに、Eランクだった頃にペラーネとペラーネの弟が誘ってくれたから一緒に頑張ってきたのに! Dランクになって男の人がやって来てから私を外したそうにしてたんれすぅ!」


「そ、そうか……」


 密着した状態でルシアの愚痴を聞いていき、泣き叫び疲れたのかルシアは眠りにつくけど……何度も俺の事が好きだと言ってきて、ここまで好きだと言われたのはアリシア姉さん以来だ。


 もしアリシア姉さんのことを思い返せなければ、俺の理性は間違いなく飛んでいただろう。


 ……そう考えると、俺は前世の記憶によって自信がつくも、本能ではアリシア姉さんを恐れているのかもしれない。

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