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41話 報酬

 依頼の報酬を貰い、ラッセは俺が欲しかった物を持っていたから、それを倉庫から特別報酬として受け取っている。


 ラッセが今日渡すと言ってギルドの倉庫まで向かったこともあって、話が長くなったこともあり、ルシアとキャシーと別れてから時間はかなり経っていた。


「これで明日にはリベルのモノが……私の手にぃっ……」


 冒険者ギルドと併設している酒場のテーブルで、俺とアリシア姉さんは対面して座っている。


 テーブルの上には貴重な魔石が置かれていて、俺が所持している素材を含めると、通信用の魔道具を二人分作るのに必要な素材が揃っていた。


 魔石を眺めてアリシア姉さんが興奮しているけど、アリシア姉さんの発言は周囲を誤解させたのかギルドに居た人達が俺達を見て、すぐに目を逸らしている。

 どうやらアリシア姉さんのヤバさを、ここの冒険者ギルドの人達は理解しつつあるようだ。


 この魔石は貴重で高価だから買取るつもりだったけど、ラッセはタダでやると言い、それを聞いたアリシア姉さんは「リベルに貢ぐだなんて許せない」と強引に金を払っていた。

 ラッセはアリシア姉さんに困惑していたけど、無理もないだろう。


「二人分もあったのは運がよかった。これで二人の武器に通信機能をつけることができそうだ。キャシーの杖は性能が落ちても新しいのを買えば何とかなるけど、アリシア姉さんの剣は聖剣だから、失敗できないな」


 俺が錬金魔法を使い、ルシアの武器に通信効果をつけることには成功するも、僅かだけど失敗する可能性もあった。


 失敗しても剣や杖が砕けることはないけど性能は間違いなく落ちるから、キャシーの杖はともかくアリシア姉さんの聖剣で試すのは不安だった。


 そう考えていると――


「私としては最初から最後までリベルの手がかかった剣も欲しいけど、今日のことを考えると、戦いながら意思を送れるのは色々と便利よね……それなら、やっぱり今まで使っているこの聖剣に通信効果をつけて欲しいかな」


 そうアリシア姉さんが言ってくれるけど、確かにその通りだろう。


 巧くいけばアリシア姉さんとキャシーの武器性能が向上するし、それが一番いいはずだ。


「わかった……姉さんは朝から今まで食事をとってないだろ? 俺はダマージを倒してから保存食を食べたけど腹は空いているし、ここで食べて帰ろう」


 俺はテーブルの上に乗せていた魔石をカバンに入れて、アリシア姉さんに提案する。


 提案を聞いたアリシア姉さんは、少し考える素振りを見せて。


「流石に朝から今日まで何も食べていないと少し辛いわね……リベルとしては、スリムなお姉ちゃんの方がいい?」


 ここで頷いたら、アリシア姉さんはしばらく絶食しそうだな。


「いや、無理しない自然のままな姉さんがいい」


 俺の発言に、アリシア姉さんは目を輝かせながら歓喜して。


「リベルならそう言ってくれると思っていたわ! リベルと二人きりで食事は嬉しいけど、キャシーちゃんとルシアがお腹を空かせて待ってるかもしれないし、帰って私が用意した方がいいと思うの」


「そのことだけど、ルシアが二人分の料理を作ってキャシーと一緒に食べてる。食材を結構使ったから、どこかで食べてきて欲しいって通信がきてた」

 

 俺は剣の鞘に触れながら、アリシア姉さんに説明する。


 ラッセに今日の出来事を説明して、そこから魔石を受け取ったりしていたから、結構時間が経っていた。


 ルシアとキャシーが食事をしているのは当然だと思うけど、アリシア姉さんはどこか不満げにして。


「……そう」


「姉さん、どうした?」


「大丈夫よ。ちょっとルシアが、私の想像していたよりも驚異になるかもしれないって思っちゃったけど、私も通信できるようになったら大丈夫のはず!」


 そう言いながらもどこか焦っていそうなアリシア姉さんが、俺は気になってしまった。 

  

 × × ×


 冒険者ギルドで食事を終えて、俺とアリシア姉さんはようやく家に到着していた。


「キャシーちゃんとルシアが二人きり、キャシーちゃんは人見知りするから少し不安だわ」


「そういえば、ルシアとキャシーが二人きりになったことはなかったっけ」


「ええ。キャシーちゃんは一人で立派に行動できるけど、家の中で関わりが短いルシアと二人きりだと不安になってるかもしれないわね」


 俺に対してはいき過ぎだと思われてもおかしくないほどの愛情を向けているけど、アリシア姉さんはキャシーも普通に妹として好きなのだろう。


 アリシア姉さんが俺とキャシーに向ける愛情を足して割れば丁度よさそうな気がするけど、それはあくまで気がするだけだ。


 アリシア姉さんは今のままが一番いい。

 いや、俺に関わろうとした女性に対する殺意は、ちょっと抑えて欲しい気もする。


 家に入ると灯りがついていないことが気になり、俺とアリシア姉さんは寝室に向かう。


 寝室は薄明るい灯りがついていて……そこにはベッドで寝間着姿になって眠っている二人の姿があった。


 ルシアは眠り、キャシーがルシアを抱きしめて眠っている。

 二人とも疲れていたからだろう、俺は二人きりになったキャシーがルシアと仲良くできていそうで安堵していると、アリシア姉さんが目を見開かせて。


「なっ……キャシーちゃんとルシアって、こんなに仲が良かったの……私よりも?」


「姉さん、落ち着いてくれ。それにしても、人見知りをするキャシーが、俺と姉さん以外に抱きつくとはな」


 心地よく眠っている二人を見てアリシア姉さんは嫉妬しながらも、キャシーとルシアを眺めて微笑み。


「……そうね。人見知りするキャシーちゃんがルシアと仲良くなれてるのは嬉しいけど、お姉ちゃんとしては少しショックだわ……ねぇリベル、傷ついたお姉ちゃんを、慰めて欲しいな?」


 そう言われたからとりあえず頭を撫でてみるけど、それだけでアリシア姉さんは大満足していた。


 寝ている二人を邪魔しない為か、顔を赤くしながら自分の手で口を、口から出る喘ぎ声を抑えているけど、それほどまでに嬉しいのか。


 それから――俺とアリシア姉さんも、眠ることにしていた。


 隣で眠るアリシア姉さんが幸せそうな寝顔を浮かべているのは何よりで……激動の一日だったなと、俺は今日の出来事を思い返す。


 ダンジョンの異変、ジェイルとの対面、ダマージとの戦闘を経て――俺達は上位冒険者となる寸前、B+ランク冒険者になっていた。

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