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39話 後始末

 俺達はダンジョンの二階層から三階層へ向かう大部屋で、疲労困憊で立つことすらできず座り込んでいるダマージを見下ろす。


 ダンジョンの核が破壊されたことで、ダマージは成す術がなくなっている。


 どうやら肉体と魔力が強化されていたのは、ダンジョンを制御してモンスターと同じように自身の力を向上させたからであり、本人の実力はレイエール兄より下のようだ。


 それでも固有能力があった時点で、固有能力がなかったレイエール兄より遥かに強いだろう。


 俺は、そんなダマージを見下ろしながら。


「お前はあくまでダンジョンに寄生しているだけだから、核が壊れたダンジョンと同化することはできない……今のお前は、殺せば死ぬんだろ?」


「はい。核が壊れた瞬間にリベルさんに殺されかけて、それを回復魔法を使って治しただけで私の魔力は尽きました。知っていることは全て話したのですから、私を助けてくれるんですよねぇ?」


 そうダマージが訪ねてくるから、俺は首を左右に振って。


「助ける? 俺、アリシア姉さん、キャシー、ルシアが殺さないと言っただけで、助けるだなんて一言も言っていないぞ」


 そもそも悪魔は、他人を取り込まないと生きることができない。


 俺が手をダマージに向けた瞬間、ダマージは目を見開かせて。


「はっ、話が違うぞ! 私を殺さないって約束したはず――」


 叫ぶダマージに対して、俺は説明することにしていた。


「俺はお前の呪印を解呪して、悪魔でなくすだけだ。それからどうなるのかはお前次第さ」


「はっ? 悪魔から人間に戻す? そんなのは不可能では……」


 唖然としているダマージに対して、アリシア姉さんと眠そうなキャシーが前に出て。


「リベルに不可能はないわ! そう、リベルは私に何をしてもいいのよ!」


「お兄さまは呪印を解呪できる。ふぁわっ……」


「不可能はないって言っても、流石に姉弟でアリシアさんの考えていることをするのはどうなのでしょうか……」


 アリシア姉さんの発言に何かを察しているルシアだけど、俺にはよく解らない。


 それよりも、うとうとしているキャシーを家のベッドで寝かせたいから、さっさと終わらせよう。

   

「悪魔のまま生かしておけないから、呪印は絶対に解除する。アルベールの記憶だと、人間を取り込んだ悪魔の呪印を解除すると、取り込んだ魂が反発した場合は死に至るらしい」


 取り込んだ魂の寿命が尽きるまでは悪魔の体内に宿り、その悪魔の寿命と化して徐々に消えていく。


 悪魔が死ねばその魂ごと消えることになるし、取り込んで魂だけになった存在を復活させる方法はない。


 ダマージがジェイルと同調していて、そもそも人を取り込まないと生きられない悪魔の時点で、呪印を解除するのは当然だ。


 そこから先は、取り込んだ魂がダマージに反発するかどうかだが、絶対に反発して死ぬだろうと俺は確信している。


「なぁっ!? それはお前が、私を殺すようなもんじゃねぇか!」


 ダマージも理解できているのか、目を見開かせながら激昂し。


「確かに悪魔と化したら人の魂を取り込まねぇと生きていけねぇ! けどそんなの些細な人数だろ!? ダンジョンに潜って帰って来れねぇ冒険者は大量に居る。その何人かを取り込むって条件で私を悪魔のまま生かしてくれねぇか!?」


 命乞いを始めたダマージだけど、俺はアリシア姉さん、キャシー、ルシアに目をやって。


「俺達は殺さないけど、お前の取り込んだ人の魂が反発した場合、お前は死ぬことになるだけだ……皆はそれでいいか?」


「私としては、解除しても死ななければ、約束を破ってでも殺すべきだと思います」


 ダマージの発言が癇に障り、Aランク冒険者パーティを取り込んだことから、苛立っているルシアが強い口調で言う。


 どうせ口約束だし、その時はルシアに任せよう。


「待て! まだ私はダンジョンがこの世界に存在する理由を突き止めてないんだよねぇ! この固有能力と不老ならいつか私はダンジョンの全てを知ることができる! 私の存在は世界の宝だぞ!?」


 ダンジョンに対する想いが強すぎて、ダンジョンと同化する固有能力を手に入れた男らしい発言だ。


 俺はダマージを見下ろしながら。


「悪魔の時点で人間の敵だ。俺はお前を悪魔から人間に戻す」


 抵抗されたら解呪できなくなるもダマージに魔力はなく、会話中に呪印の解呪は行っていて、ようやく解呪することができた。


 俺の発言と同時にダマージの呪いを解除した瞬間――ダマージは白目を剥き、心臓から軋む音が鳴り響く。


「がぁっ……ぁぁっ……こ、この私がぁっ、下等だと見下していた奴等の魂如きに、やられるなんてねぇぇぇっッ――ッ!!!?」


 そして取り込んでいた魂と何があったのかは解らないも……断末魔と共にダマージの肉体が霧散していく。


「これで、ようやく終わったぁ……」


 敵が消えたことで安堵したキャシーが眠りについたから、俺は倒れそうになっていたキャシーを抱きしめて。


「キャシー、よく頑張ったな」


「そうね、キャシーちゃんもリベルのために頑張っていたわ……その、後で私も、キャシーちゃんと同じことをして欲しいな?」


「わっ、私もお願いします!」


 アリシア姉さんとルシアは、俺が両腕で抱きかかえたキャシーを見て、羨ましそうに頼んでくる。


 ルシアは少し疲れているようで、アリシア姉さんは体力も元気もありそうだけど、今日の三人はよく頑張ってくれた。


「わかった……とにかく、このダンジョンを出よう」


「はいっ」


「リベルが私を両腕で抱きかかえてくれる……本当に楽しみぃっ!!」


 ルシアはダンジョン内だから警戒しているものの、アリシア姉さんは興奮しすぎて歓喜の叫びをあげている。


 モンスターも強化がなくなって元に戻ったし、この程度のダンジョンなら、俺達はすぐにここから出ることができるだろう。


 地下だから時間がよく解らないも、恐らく夕方から夜になったばかりのはず。 


 冒険者ギルドへ向かい依頼を報告する前に、家に戻ってキャシーをベッドで寝かせたかった。

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