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14話 決戦の時

 眼に光が無く、ルシアに刃を向けているアリシア姉さん。


 いきなりアリシア姉さんに睨まれたルシアが、キッと決意しながら前に出て。


「わっ、私はリベルのパーティメンバーのルシアです! リベルに危害は加えさせません!」


 そう言ってルシアが俺とアリシア姉さんの間に割って入るけれど……あまりにも無謀に見えるだろう。


 恐らくアリシア姉さんの発言を聞いて、実力差がありながらもルシアはいてもたってもいられなくなったのかもしれない。


 俺の為に動いてくれるのは嬉しいけれど、アリシア姉さんは呪印の効果なのか前よりも強くなっている。


「……あたしはお兄さまと一緒に居られるのなら、何番目でも構わない」


 そんな中で、抱き着いたままキャシーが俺に言ってくれるけれど、キャシーはルシアを受け入れてくれそうで何よりだな。


「キャシー、とりあえず離れてくれ」


「うん。後でまた、抱き着いていい?」


「ああ」


 そう言うことで納得してくれたのか、キャシーが俺から少し離れて、対面しているアリシア姉さんとルシアを眺めている。


 アリシア姉さんは、瞳に光が一切ない状態で「はぁ?」と言わんばかりの表情をルシアに見せながら。


「パーティメンバーね。そうなの……それはいいけど問題はリベルと密着したこと、頭を何度も撫でられているし、ここ三日間は寝る前にリベルを抱きしめている。この数日間だけで、そこまで仲良くなるのはお姉ちゃんとして許せないわ。一瞬で仕留めてあげる」


「そ、それは酔った勢いといいますか……というか、なんでそんなことまで解るんですか!? 発言も物騒過ぎますよ!?」


「愛の力よ」


 かなりの距離があるのに俺の場所が解ったり、アリシア姉さんは的確に何があったのかを理解している。


 愛の力と断言したことで納得しそうになるけれど、流石にそれは変な気がする。


「あたしも、今日はお兄さまと一緒に寝る」


 この状況下なのに本能のまま会話するヤバい姉妹を俺は眺め、ルシアがドン引きしながらも鞘から剣を抜いて構えると。


「その剣からもリベルのにおいがするわね……まさか、剣を使ったプレイを?」


「してません! リベルに危害を加えるのなら、私はリベルを守ります!」


「無謀……お兄さま、あたしは助けた方がいい?」


 そう心配してくれるキャシーは優しく、俺はキャシーの頭を撫でながら。


「いや、初撃は間違いなく耐えるし、保険も用意している……初撃を防いだら、それからは俺が動く」


 ここ三十分もの間、ルシアはミスなく完璧にこなしていたし、本番で緊張していない。

 

 いや、むしろ本番だからこそ集中力が完璧だ。


 ここまで守ると決意してくれているのだから、ここで特訓の成果を発揮した方がルシアは自信がつくだろう。


「俺……今のお兄さまは本当に素敵」


 もうキャシーとしてはアリシア姉さんとルシアの戦いより、俺の変化に興味津々のようだな。


 どうやらそれはアリシア姉さんも同じみたいでチラチラ見てくるけど、目の前に居るルシアが邪魔なのだろう。


 それが不快なのかアリシア姉さんが顔を歪ませて、一瞬で剣を引き抜き――ルシアに斬りかかる。


 超速の斬撃に魔力と体力を使うことで、更に新たな斬撃を発生させる。   


 首、心臓部に対して同時に斬撃を放ちながら直進する帝技、二重突剣(デュオブレイド)だけど、俺はここ数時間、その二重突剣を木刀でルシアに散々見せていた。


 呪印の魔法で強化されたとはいえ、アリシア姉さんは実力差で侮ったのか嫉妬で焦ったのか、会話中にもチャージの魔法を使っていない。


 この速度なら、ルシアなら余裕で対処できるだろう。


「つっ!?」


 体力を消費することで、加速しながら斬る加速刃(アクセルブレイド)の剣技を使うことにより、ルシアがアリシア姉さんの刃を弾き飛ばし、発生した衝撃によって大きく吹き飛ぶ。


 衝撃の痛みを瞬時にルシアが回復したのだろう、ルシアとアリシア姉さんの実力差で、一撃を問題なく耐えたのは見事だった。


「すごい」


「私とリベルの邪魔をするだけあるけど……これで!」


 そう言ってルシアが吹き飛んでいる隙を狙い、アリシア姉さんが間合いを詰めようとした瞬間。


「これで俺が戦える」


 ルシアに迫ろうとしたアリシア姉さんとの間に、俺は一瞬でファイヤーウォールの魔法による火炎の壁を張る。


 急激に高まった温度差から、アリシア姉さんはルシアへの追撃を止めて後方へ跳ぶ。

 これでルシアは安全だ。


「あたしより凄いファイヤーウォール……やっぱり、あたし達が言ってた通り!」


「ああ。本来の力を発揮するのが遅くなったけど……ようやく、俺は強くなれた」


 これでキャシーを喜ばせることにも成功したし、ルシアにも自信がつけることができた。


 唖然としながら炎の壁を眺めているアリシア姉さんに、俺は近づくと。


「凄い……素質はあったけど、数週間見ない間にここまでだなんて……それでも、お姉ちゃんを相手に距離を詰めようとするのは、無謀だと思うな?」


 両脚を斬ると言っていたアリシア姉さんは抵抗されることを理解しているのか、俺が近づいてきていることに困惑している。


「お兄さま、今の姉さまは危険……本当に両脚を斬られる」


 俺が急激に強くなったのは数週間前からだから、この炎を見て剣技よりも魔法を優先して扱えるようになったとアリシア姉さんは推測しているのだろう。

 同じ気持ちなのか、キャシーも俺を心配してくれている。


「大丈夫だ。俺は最強の冒険者になる以上、今の時点で剣帝のアリシア姉さんに勝てるかどうか、ここで試しておきたい」


 普段ならアリシア姉さんと手合わせしても、姉さんは絶対に手を抜いてくるに決まっているけれど、この状況下なら本気で戦う事ができそうだ。


 俺の魔法はすでに賢者のキャシーを凌駕しているも、剣技でアリシア姉さんより上かは戦ってみないと解らない。


 それに――今ここで俺がアリシア姉さんを止めれば、全ての問題が解決するだろう。

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