表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/43

10話 錬金魔法

 翌日、俺はルシアと共に目が覚めて、ルシアが顔を真っ赤にしていきなりベッドから飛び退いて頭を何度も下げる。


 どうやら、酔った後の記憶は残っているようだ。

 ルシアの精神が楽になるならと、俺が一緒に寝ていたこともあるのだろう。


「あの、その、ええっと……昨日のことは、その……」


「まさかルシアがあそこまで甘えてくるとは思っていなかった」


「うぅっ……リベルのお姉さんが居なければ、今頃……」


 今頃なんだったのかは、聞かないでおこう。


「決めました!」


「何を?」


「私はリベルに相応しい女性となります! お姉さんと妹さんの次に愛される女性が目標です!」


 アリシア姉さんとキャシーの次か。

 自分に自信がないルシアらしい発言だけど、昨日は強くなれないと考えていただけに、それに比べると遥かにいいな。


 ルシアを強くする準備は事前しているから、着替えた俺とルシアは冒険者ギルドに向かうことにしていた。


 × × ×


 冒険者ギルドから依頼を受けて、俺とルシアは王都からかなり離れた荒野までやって来ていた。


 近場でモンスター討伐の依頼はCランクしかなかったけれど、ルシアを鍛えることが最重要だろう。


「ルシア、ひとまず腰の剣と背負っている盾を俺に貸してくれ」


「どうぞ」


 俺はルシアから剣と盾を受け取り、鞄の中から魔力を持った鉱石やモンスターの素材を使い、錬金魔法を使う。


 仲間ができた時用に素材を買ったりして準備していたからこそ、俺は何の問題もなく鍛錬に最適な剣と盾を完成させることができていた。


「強化したから、この剣と盾を使ってくれ」


「わ、わかりました……それにしても、魔法薬もそうでしたけど、この剣も見事ですね……」


 ルシアの剣を使ったのは長さを同じにするためで、完成した銀のショートソードを眺めながら、ルシアは感銘を受けている。


「それは連絡魔道具と同じ原理で創られた剣だ。俺が持っているこの剣に魔力を籠めると、所持している者に直接意思を送れる」


「そ、それって……連絡魔道具を携帯化したってことですか!?」


 通信手段である連絡用魔道具は高価かつ大きくて、携帯することは不可能だとも言われていた。


「これはかなり高度な技術がいるから量産化できない。今販売している連絡魔道具の方が、量産化できているという時点で凄いぞ」


「そ、そうなんですか……魔法薬もですけど、リベルの錬金魔法で作った魔道具を販売するだけで、冒険者になんてならなくても余裕で暮らしていけそうです……」


 柄を持つルシアの手が震えるけれど、連絡する部分は握っている柄の部分にあるから、剣が壊れても通信は可能だ。


「俺は金よりも最強の冒険者になるということを目的にしている。俺の剣で指示を出すから、ルシアはそれを参考にしながらモンスター達と戦ってくれ」


「わ、わかりました! それにしても……お揃いですね!」


「同じ武器だからな」


 実際は俺の方が刀身は長いけど、見た目はほとんど同じだからか、ルシアが満面の笑みを浮かべながら自分の剣を撫でている。 


 荒野の岩陰に隠れている敵はCランクモンスターだけど、俺が一緒に居るからかルシアは一切怯まずに、モンスターであるゴブリンの群れに斬りかかっていく。

 

 今回の依頼はホワイトゴブリンというゴブリンの突然変異種で、群れを作っているから被害が広まる前に潰して欲しいという依頼だ。


 ただでさえ発見が困難なゴブリン、それに知性が増す突然種だから誰も依頼を受けなかったみたいだけど、俺は場所の予測ができる。


 白い身体をしたゴブリン八体がルシアに驚愕しながらも抵抗しようとして、即座にルシアを囲もうとする。


『真っ先に後ろに飛びのいた奴がリーダーだ。そいつの首を切り裂け』


『えっ!? わ、わかりました!』


 いきなり離れている俺の指示が脳内に飛んできたことに驚きながらも、ルシアが言う通りホワイトゴブリンを一体撃破する。 


 それによる動揺、更に俺が二体のゴブリンを炎の弾丸、ファイヤーボールの魔法を使い焼き払ったことで、更に困惑して動きが止まる。


 その隙を突き――残り五体のゴブリンは問題なくルシアが仕留めることができて、昨日飲ませた魔法薬の効果もあり、ルシアの強さは昨日とは大違いになっている。


 そこから更に高ランクのゴブリンを倒したことでステータスが上がっているだろう……これを今日と明日続ければ、魔法薬で成長できる限界まで到達するはずだ。


 そして自分自身の強さに驚愕しながら、ルシアが飛び跳ねる。

 それによって脚力が上がっているのにも気付いて、楽しくなったのか何度も跳ねて。


「す、すごいすごい! 何からどういいのか解らなくなるぐらい凄いですよ! まず私が明らかに強くなりましたし、通信も一瞬でした!」


 ルシアからすれば、距離が近いといっても連絡魔道具なのだから、指示は遅れてやってくると考えていたのかもしれない。


 俺が作った通信魔道具の剣は視認できる距離なら一瞬で意思を伝えることができるし、それと魔法薬の効果にも驚いていたということか。


 ルシアの為に受けたCランクの依頼は達成したけれど、ルシアの鍛錬が今日の目的だから、俺は他にも荒野でモンスターを探し、ルシアが倒していく。


 元々素質があり、向上心が高い事も幸いして――Bランクパーティの冒険者として通るだけの強さを、ルシアは一日で身に着けていた。


 明日で魔法薬で成長できる限界に到達するだろう。

 その頃合いで、アリシア姉さんの対策を立てるとしよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ