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流れ時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー18

いくつもの階段を登りオーナーの部屋にたどり着いたのだが、そこに龍水天海とやらはいなかった。


「いないじゃない。」

アヤは若干拍子抜けしたような顔をしていた。


「上だ……。」

アヤの横で龍様が珍しく真面目な顔で天井を睨んでいる。


「上?」

「竜宮には秘密の天上階があるあるんだナ!龍になってないといけないんだナ!シャウ!」


シャウはしきりとジャンプをしていた。


「だから、なんで知ってんだよ!天上階は龍の庭だぜ。龍しか見る事のできない雲の上の庭園。と言ってもまあ、上の海と竜宮の間の空間ってだけだけどな。」


「つまり、あれね。空を飛べないといけないのね?」

アヤの問いかけに龍様は顔を曇らせた。


「そうだが……。これ、俺様が龍になんねぇとダメってか?」

「さっさとなるんだナ!シャアウ!」


シャウがオーナーの部屋にある窓を開け放った。

そしてステッキを窓に向け微笑んだ。


「っち……簡単に言いやがってよぉ……。」


疲れんだよな……とつぶやきながら龍様はしぶしぶ窓から外へと飛び出した。

龍様が飛んで間もなく緑色の大きな五爪龍が窓脇に止まった。


「おお!かっこいいんだナ!シャアウ!」

シャウははしゃぎながらぴょんと五爪龍に飛び乗る。


「いちいちうるせぇ男だな……。それから!そんな気軽に乗るんじゃねぇよ!」

その五爪龍からは龍様の声がした。


挿絵(By みてみん)

「アヤちゃんも突っ立ってないで乗るんだナー!シャアアウ!」

「そ、そうよね……。龍も龍神なのよね……。龍になれるのね……。」


あまりの大きさに圧倒されていたアヤだったがシャウの声で我に返った。


「俺様、この姿疲れるからあんまなりたくねぇんだよなー……。」

龍様がぶつぶつ言っている中、アヤも龍様の上に飛び乗った。


「やっぱり鱗が固いわね……。座り心地は何とも言えないわ……。」

アヤは龍様の背中をさすった。固い。ずっと座っていたら腰が痛くなりそうだ。


「しょうがねぇよ……。人を乗せるもんじゃねぇからな!」


「さっさと行くんだナ!早くしないと電気でびりびりするんだナ!こう、びりびりって!シャアウ!」


シャウがステッキで龍様の鱗をつつく。


「わ、わかった。わかったから騒ぐな。そして電気はやめろ!お前、本性はドSか?」

「……シャウ?」


残念ながらシャウには龍様の発した単語がよくわからなかったらしい。

龍様はため息をついた。


「それより、はやく行きましょう。」

「……あー……わーったよ。」


アヤの言葉に龍様は投げやりに頷くと空へと舞い上がって行った。

人を乗せているという事もあって龍様は垂直に舞い上がったりはしなかった。


徐々に上へと昇っていく。


しばらく風の音だけが耳を横切った。

まわりはコバルトブルーの空と真っ白な雲。


すぐ上が海だとはどうしても思えない。

そんな幻想的な風景にひときわ目立つオレンジの髪の男。


「……あれか?」


龍様が警戒の色を見せた。

まがまがしい気がオレンジの髪の男のまわりをまわっている。


頭に金色の双龍が交わった冠を被っており、ストレートのオレンジの髪が腰辺りまで伸びている。紫色と赤がベースの水干袴のようなものを着ていた。


どういう仕組みなのか、彼は空に浮いている。


「ああ?天上階に何か用かぁ?」


オレンジの髪の男がこちらを睨んだ。その目つきは自分の中に入って来るなと言っていた。


「君があれなんだナ?龍雷水天なんだナ?シャアウ!」

「一緒にすんじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!拙者は龍水天海神だぁ!」


シャウの言葉に龍水天海が怒りを爆発させた。


「もとは一緒だろうが……。」


龍様のつぶやきは丸無視して龍水天海は狂気的な笑みをこちらに向けた。


「お前らは死にに来たのかぁ?そうなのかぁ?あーはははは!拙者を消しにきたんだろ?逆に消される事になるってわかっててなあ!はははは!」


龍水天海はいきなり襲ってきた。

龍様の真下に来るとそのまま拳を振り上げた。


拳から爆風が舞い、龍になって重量が増しているはずの龍様が上空へ突き上げられた。


「ぐああ!」

龍様が呻く。凄い衝撃が上に乗っているシャウとアヤにのしかかる。


「……っうう!」


シャウは龍様から落ちそうになっているアヤの手を素早く引くと遥か下で狂気的に笑っている龍水天海に雷を落とす。


しかし、龍水天海はもうその場にいなかった。


「はっ!」


龍様が咄嗟に上を向いた途端、爆風が龍様を貫いた。

龍様は勢いよく下に落とされた。


「きゃあ!」


上にいるアヤはバランスを保てず、シャウにしがみつくしかない。

龍様は竜宮にぶつかる形でとどまった。


「爆ぜろぉ!爆ぜろぉ!」


龍水天海は体勢を立て直せない龍様にカマイタチを浴びせる。

衝撃波と爆発が龍様を襲う。


「ちっくしょう!あいつ……つええ……。」

龍様が苦しそうにつぶやく。


「はやく動くんだナ!龍!このままじゃ死ぬんだナ!シャアウ!」

「わかってるぜ!くそっ!」


シャウの焦った声で龍様が素早く横に逃げた。

その後を追うようにカマイタチが襲ってくる。


「逃げてんだけかあ?ははははは!」

「龍!右よ!」


アヤの言葉で龍様は身体をくねらせながら上昇する。


龍様がさっきまでいた所に蹴りあげるポーズのまま止まっている龍水天海がいた。龍水天海は足をゆっくりと降ろすとこちらをみて再び笑った。


ここまで力の差があるとは思わなかった。

龍様は逃げる事で精一杯でシャウの雷はまったく当たらない。


アヤはどうすればいいかわからなかった。


「拙者は風の神、そして海の神だぁ!」


龍水天海はいつのまにかシャウの前にいた。

そのまま拳がシャウに飛ぶ。


シャウは素早くステッキで拳を受け止める。

しかし受け止めきれず、吹っ飛ばされ龍様から落下した。


「シャアアウ!」

「シャウー!」


アヤはシャウに叫んだ。


「ずいぶんとかわいらしい顔してんだなあ?人間くせぇその顔……。」

龍水天海はアヤをみて笑っている。


アヤの頬に汗が伝う。


「アヤちゃん!逃げろ!俺様から飛び降りんだ!早くしろ!」

龍様がアヤを振り下ろそうとした。


「うるせぇんだよぉ!てめぇは!」

「龍!」


龍水天海は龍様を思い切り殴りつけた。衝撃が下に突き抜ける。


龍様は衝撃波と共に地面に落とされた。

アヤは咄嗟に自分の足元の時間を止める。うまく浮くことができた。


「あはははは!時間を止めるってのは便利な力だなあ?おい。」

「……な、なによ……。」


アヤは心底この神が怖かった。


自分の足が震えている事はわかっているが確認していられなかった。

彼から目を離したら殺されてしまいそうだったからだ。


「その怯える顔も人間を思い出すなあ!はははは!」


「なんで私だけ残したのよ!あなたが紳士的な心を持ち合わせているとは思えないのだけど。」


「ははは!なめてんのか?ああ?お前、拙者をなめてんだろ?ええ?」

龍水天海は一瞬でアヤの目の前に来ると腹を殴りつけた。


「……うっ!」

アヤは苦しそうに呻いた。


「優しくしてもらえるとでも思ったのか?」

「はあ……はあ……これだけですませてくれるの?や、優しいじゃない……。」


「挑発のつもりかあ?へっ、どこまでも人間くせぇ!勘違いしているようだから言っておくなあ?……お前は使える。そう判断しただけだ!ははは!」


「……っ?」

アヤが戸惑っているとアヤの周りの風が高速で動き始めた。


「カマイタチだあ。少しでも拙者に反する行為をしたら容赦なく斬れるぜぇ?ひひひ……。」


「な、何よ……これ……あうっ!」


龍水天海が指を少し動かした途端、アヤの肩が浅くシュッと斬れた。


「楽しいだろお?まず、あの男神を始末する。言う事を聞かないと……。」

龍水天海はまたも指を動かし先程斬れたアヤの肩を再び斬る。


「いっ……やあああ!」

アヤは痛みに悶えた。鮮血が飛び散る。


「いい声だあ。あはははは!」


泣きながら震えているアヤを龍水天海は楽しそうに見つめていた。

その時、シャウを乗せた龍様が龍水天海の前に現れた。


「アヤちゃん!どうした?」

「肩に……。シャウ……。」


龍様とシャウは愕然とした。アヤが動揺した顔で時間の鎖を飛ばしてきたからだ。


「……ごめんなさい……。」

「アヤちゃん……。」


龍様とシャウの動きが固くなった。

そこへ龍水天海神が狂気の笑みを浮かべながら龍様達に攻撃を仕掛ける。


アヤは目をつむり、耳を塞いだ。


……イタイのは嫌……刃物も実はとても苦手……見ているだけで怖い……。

死にたくない……。


ふっとアヤはらしくない自分がいる事に気がついた。


……待ちなさい……。ちょっと今、私は何をしているの?

私自身、任意でつきあったわけじゃなかったとしても彼らは私を守ってくれた。


なのに、私は何をしているの?

そうよ……。私は何をしているの?


アヤは覚悟を決めた。


……怖いのなら目をつむって突っ切ればいいのよ。

自分でこのカマイタチを抜けないと何にも進展しない!


アヤが一歩を踏み出した時、シャウが何かを悟ったのか叫んだ。


「やめるんだナ!アヤちゃん!ダメなんだナ!死んじゃうんだナ!シャアウ!」


シャウと龍様は龍水天海の攻撃を受け、疲弊していた。

アヤはシャウの言葉を無視して歩き出す。


「ダメなんだナ!シャアアウ!」


シャウが今までにないくらいの電撃を身体に纏わせ龍様からアヤに向かって飛んだ。龍水天海が追いかけようとしたが龍様が必死にとどめる。


「狂った野郎め!」

龍様が咆哮を上げる。龍水天海と龍様が再びぶつかる。


「……っえ?」

アヤが目を開けた時、シャウに抱きかかえられていた。


「無茶するんだナ……。シャウ!」

「シャウ……あなた……。」


シャウは体中切り傷でボロボロだった。

カマイタチの中、アヤをかばいながら抜けたらしい。


「シャウは身体を多少、雷にできるからこれくらいで済んだんだナ!アヤちゃんがやったらミンチなんだナ……シャアウ!」


シャウはにっこりと笑った。


「……ありがとう……。私、あなた達を攻撃したわ……。ごめんなさい。……怖かったの。」


「当然なんだナ……。あんな状況だったら皆怖いんだナ……。シャウは君を連れて来てしまった事を後悔しているんだナ……。君はこんな目に遭うべきじゃないんだナ。シャウ!」


シャウは珍しく真剣な顔で頭を抱えていた。


「大丈夫よ。あなたを恨んでいるわけじゃないから……。」

「怪我しているんだナ……。シャウのせいなんだナ……。シャウ!」


「……これは自分が弱かっただけ。心配は無用よ。」

アヤを抱えたシャウはふわりと龍様の上に戻ってきた。


「龍、こいつには勝てないんだナ!ちょっと逃げるんだナ!シャウ!」

「逃げる?お、おう!じゃあ、全力で逃げるぜ!」


龍様は龍水天海の攻撃をうまく避けてそのまま逃走を始めた。


「お前らに逃げ場なんてねぇんだよお!あははは!その時神、拙者に渡せぇえ!なーんてな!あははははー!」


龍水天海は龍様を追い始めた。

どうやらアヤを使おうとしたのも気まぐれだったようだ。


彼自身、何か計画があるわけではない。


「あいつの行動パターンが読めてきたぜ。あいつは風を操っている。風の動きでどこに来るか予想ができる!」


龍様のスピードは先ほどと違ってかなり速い。避けるのに迷いがないからだ。


「さすがなんだナ!シャアウ!」

「……あなた達はあの神を結局どうしたいの?」


アヤの言葉にシャウと龍様は止まった。


「うーん……。なんかもうシャウの目的は果たせたんだナ……。よく考えたらあれの事はどうでもいいんだナ?シャアウ!」


シャウはシルクハットを抑えながら唸った。


「そうだな。お前はもういいのか。俺様はこの竜宮を元に戻さねぇとなんねぇんだが……あれがいようがいまいが竜宮が元に戻ればそれでいいんだがなあ……。」


龍様もカマイタチを避けながら唸る。


「それとイドを助けるためになんとかしようとしているんでしょ?」

「え?ああ、そうそう!」


龍様の反応をみてアヤはため息をついた。


「大事な事をすぐ忘れるのね……。……で、具体的にあの神をどうすればいいかわからないのよね?」


アヤの言葉にシャウが頷いた。


「そうなんだナ!あれを消すのがいいのか、他に何か利用方法があるのか……シャアウ!」


「あの神はなんだかただ狂っているだけじゃないような気がするの。理由があるのかもしれないわ。その理由がわかればおとなしくなるかもしれない。」


「やっぱり結局はあいつか……龍雷がいないと……。」


龍様は大きくため息をついた。


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