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流れ時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー16

「龍雷様!傷が……!」

カメが慌ててイドさんを止める。イドさんはもう歩ける状態ではなかった。


「……やめて……ください……。僕に入ってこないでください……。

拙者は…………。僕は……拙者は……僕は……拙者……」


イドさんは独り言のように小声で言葉を紡いでいる。


「龍雷様!」

カメに呼ばれ、イドさんは我に返った。


「……カメ……。笑っちゃいますよね……。これが僕なんです。


あいつが封印された時、僕は新しい龍神として生まれました……。


生まれ変わったはずなのに心にはあいつがいて、しかも僕もあいつも心の奥は同じ……。


封印が解かれてもともと一つだった僕達の……切れていた糸がまた繋がってしまった……。」


「わちきの……せいで……。」

カメは目に涙を浮かべながらうなだれた。


「カメ……、あなたを憎んではいません。

……それよりも……今、僕は何をすればいいと思いますか?


……こんな時に僕は何も策を思いつきません。

……彼らを止めたいというのと……勝ち目のないあれに勝つ方法……。」


うなだれているカメにイドさんはそっと話しかけた。


「……龍雷様はさっき、頭を使えば神格の高い神に勝てるって言ってたさね?」


「……それは勝てるでしょう。でもあれは僕自身です。


自分の力を超えるというのはなかなかできないんです。

あれは力が強かった時の僕。


僕はあいつを一人で処理したい……

彼らに入り込んでほしくないし、迷惑をかけられない……。」


「わちきは……一人じゃ何にもできないと思うさね……。」

カメの一言にイドさんは黙り込んだ。


「今回は龍様達にまかせて……」

「それはいけません!」


イドさんはどこか必死の表情でカメを睨みつけた。


「……?」


「僕は他者に頼りすぎているんです!あいつの事で!


……封印したあれを安全にかくまってくれたのは天津。


あれの中から生まれた僕に立ち上がる足をくれたのは加茂……。


僕は、あれを自分自身でなんとかしたことがないんです!


そして今回も!そんな事……僕は認めたくありません……。」


イドさんは一人叫んだ。


「龍雷様は龍水天海様を消し去るつもりさね?

でも、彼を消した後、自分自身がどうなるかわからないから怖いさね?」


カメが尋ねるように聞くがイドさんは黙っている。


「……。」


「だから頑張ろうと思ってもできないさね?本当は助けてほしいと思っている?」

「……。」

黙り込んでいるイドさんにカメは少しムッとして叫んだ。


「イクジナシ!龍雷様はイクジナシさね!それと馬鹿さね!」

「……っな!」


カメは甲羅に隠れながらイドさんに罵倒をあびせる。

後が怖かったので一応甲羅に隠れたようだ。


だがイドさんは単純に驚いているだけだった。


「助けてくれる神がいるうちは助けてもらえばいいさね!


その分、どこかで助けてくれた神を助ければいいさね!

人間と同じように神も助け合って生きているさね!


それがわからんちんな龍雷様は馬鹿さね!」


「……言いますねぇ……。後、どうなっても知りませんよ……。」

イドさんの気の流れがカメへと伝わる。


「ご、ごめんなさいさね!ちょっと調子に乗りすぎたわぁ……。」

カメは慌てて土下座をする。


「でも、その通りなんじゃねぇの?

ははっ!カメに対してそんな態度ってお前らしくねぇなあ!」


カメのすぐ後ろで女の声がした。


「飛龍……。」


イドさんはカメの後ろに立っている赤髪の女、飛龍を睨みつける。


「わっ!わっ!飛龍様さね?はわわわ……。なんでここに?」

カメの顔は蒼白だ。カメにとって彼女は相当怖い存在らしい。


「うるせぇな!暇だったから来たんだよ!わりいか?ハハハハ!」

「あなたの出る幕はありませんよ。」


「話は大方聞いたぜ。ここにオーナーがいるんだって?

さっさとオーナーを元に戻すぜ!」


飛龍はどこだどこだとあたりを見回している。イドさんは焦って叫んだ。


「ま、待ってください!それは……」


「ああ?なんだよ。お前は何もしねぇ気なのかよ。


そうやってぼーっと突っ立ってよ、あれはやめてくださーい、これはやめてくださーいって?なんかやれよな。


そのうち、皆に解決してもらっておしまいってなるぜ?

まあ、それもお前らしいけどな!ハハハハ!」


飛龍は「やめてくださーい」の部分をわざとふざけて言った。


「ちょっ……飛龍様……。」

カメは戸惑った。イドさんが本気で怒りはじめていたからだ。


「なんだよ?怒ったのか?事実じゃねぇか。なあ?」


飛龍はカメに同意を求めたがカメは首を縦に振る事はできなかった。

あまりの恐怖にカメはイドさんから遠ざかる。


「……あなたに何がわかるっていうんですか……。

いままで僕がどれだけ慎重に世を渡ってきたか……。


僕の生は負け犬から始まったんです……。その苦しみがあなたにわかりますか?」


イドさんの身体から殺気が漏れ出る。飛龍は涼しい顔で一言言った。


「ん?知らねぇよ。そんなの。」


「わからないですよね?わかるはずないんですよ……。


僕は所詮、あいつの続きなんです。


あいつは好き勝手に幼少期から生きてきた事でしょう。

ですが僕はあれが封印された後の生を受け継いだだけ。


気がついた時には青年でまわりからは罵倒される……。

世渡りを散々学びました。


……はは……。なんかもうどうでもよくなってきたな……。

はははは……、もう……何もかも壊してしまおうか……。

あー、どうでもいい。ハハハハ!」


イドさんは急に狂ったように笑いだした。


「龍雷様……どうしたさね?様子がおかしい……よ?」

カメはオロオロと飛龍を見上げる。


「知らねぇ。狂ったんじゃねぇのか?

まあ、とりあえずお前はオーナーを復活させろ。

あいつの命令は終わっただろ?今度はあたしの命令を聞いてもらおうか。」


「……わかったさね!」

カメは頷くと配線に近づいて行った。


「やめろぉぉぉぉ!」

突然、イドさんが叫んだ。カメは怯えて立ち止った。


イドさんの目つきが変わり鋭い咆哮が飛龍達に刺さる。

イドさんはまるで別人格のようだった。


いつもの優しいイドさんの目ではなく、狂気の瞳。

一体彼に何が起こってしまったのか。


単純に怒りが爆発しただけではなさそうだった。


そして怪我を負った事を忘れてしまったのかと思うくらいスッと立ち上がり、飛龍に向かい飛びかかった。


イドさんの身体からは血が滴っている。しかし動きは先ほどよりも機敏だ。

床から柱のような水が多数飛龍に向かい飛ぶ。


「おっと……。」

飛龍は軽やかに避け、怯えているカメに向かい叫んだ。


「手を止めるな!さっさとやれ。あたしがこれの相手をしててやる。」

カメは飛龍の言葉にオドオドしながら頷いた。


「消えろ!消えろ!消えろ!グルァアア!」


イドさんは水の槍を振り回しながら水の柱を動かす。

飛龍は槍を避けながら水の柱も避けていた。


「うー!やっぱあんたは強ええよ!」

飛龍はきれいにバク転して攻撃を避けると床に着地した。


「グルォオオオ!」

イドさんはまた鋭い咆哮を上げると今度は一匹の龍になった。

広い制御室に大きな龍が飛ぶ。


「ふふ……。あんたがその気なら!」

飛龍も真っ赤な龍へと変身した。


さすがに龍二匹ではこの制御室は狭そうだ。

だが彼らには関係なさそうだった。


真っ赤な翼をはばたかせ、飛龍はイドさんに向かって火を吐く。


イドさんの身体から雷がほとばしり、炎の間を掻い潜って鋭い牙を飛龍に向けた。


二匹の龍はお互いを鋭い牙で噛みあった。

炎と雷、水と龍の咆哮が制御室に広がる。


その間、カメは必死に配線の並びを思い出していた。


イドさんが言うには逆流した術を戻すのなら元の配線に戻せばいいとのことだが……。


……わからないさね……わからないさね!


カメは焦っていた。

わからないものはわからない。

カメは自分のしてしまった事を本当に後悔した。


……わちきのせい……すべてわちきの……。

ごめんなさいさね……天津様、飛龍様……龍様……龍雷様……

ごめんなさい……ごめんなさい……。


カメは泣きじゃくった。

泣いてもしょうがないのだがどうすればいいかわからなかった。


その時、カメの前によくわからない記憶が入ってきた。



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