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流れ時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー12

「……こんな見たくもない記憶ばかり……。僕の前を横切る……。あれの記憶はもういいです……。うんざりです……。」


イドさんの前を龍水天海がケラケラ笑いながら通り過ぎる。

ここは竜宮、三ノ丸のオーナーの部屋に続く廊下。


イドさんの目には今の整備された竜宮ではなく木でできた古い廊下が広がっている。


龍神が多数通り過ぎる。その龍神達の目は皆、奇怪なものを見るような目だ。


―殺してやる……殺してやるゥ!あーはっはっは!―


龍水天海は狂ったように笑い出した。


……もう……もう……やめてください。僕はあれとは違うんですよ……。


イドさんは記憶を消そうと頭をふる。

記憶はすぐに消えた。消えたと同時にもう一つの記憶が広がる。


……またこれですか……


―お前に力なんてない。ここ竜宮に何しに来た?―


誰だかわからない龍神が今とさほど変わらないイドさんに話しかける。


龍水天神りゅうすいてんのかみだったか?ここはお前の来るようなところじゃねぇんだよ。―


隣りにいた龍神もイドさんに罵倒の言葉を吐く。


―僕の神格は今ありません……。このままでは消えてしまいます……。

竜宮でかくまってもらえないでしょうか?


天津様の力を少しだけでもいただければ……―


イドさんは土下座しながら龍神に頼み込んだ。


―ふざけんじゃねぇ!龍水天海神に似たような名前しやがって!

あいつのせいで俺達龍神がどんな思いをしたか!


同じ字をもらっているって事は関係者なんだろ?―


―現世で神格を高めろよ?こんなところに来るな!―


龍神達はイドさんを蹴り飛ばす。


―それができないから頼んでいるのです……。彼に……天津彦根神に会わせてください!―


―天津は忙しいんだよ!お前にかまってる余裕なんてねぇんだ!―


自分が現世で人々の信仰を集められたらよかった。

でも、それはできなかった。


龍神信仰があったあの地域は龍神をひどく恐れていた。

そしてスサノオ尊を英雄として祀っていた。


龍神が来たらスサノオ様が守ってくれる。そういう信仰になっていた。


……あいつのせいで。


だから自分は現世で神格を上げる事ができなかったのだ。

イドさんは散々蹴り飛ばされこの場から追い出された。


記憶はそこできれた。


……せっかくここまで築きあげたものが……またあれのせいで壊れる……。


あれが外に出なければ僕の過去は露見しないしあれがいたことを思い出す神もいない。


いつもうまく世を渡ってきましたが……

今回は自分より力が強いのが敵なので用心ですね。


それよりもなぜ、あれが蘇ったのでしょうか……。


イドさんは目をつぶり再び歩きはじめた。



「ここはどこなの?」


アヤは唸った。まわりは真っ暗でよくわからない。

先程、龍様達に従い、明かりがまったく灯っていない階段を降りた。


階段を降りたところまではわかるがそこから先は真っ暗なので表現のしようがない。ただ、カメがアヤの肩を掴み、震えながら背中にひっついているのはわかっていた。


「加茂、明かりをつけろ。」

「シャアウ!」


シャウは龍様の言葉に従い、自分で発電を始めた。眼鏡に光が灯る。


「……って、全身が光るわけじゃないさね?光るのは眼鏡だけ?」


後ろでカメのつぶやきが聞こえる。前を歩くシャウが笑いながらこちらを向いた。

眼鏡が光って眩しいし、なんだかすごく不気味だ。


「そうなんだナ!シャウ!」


「こいつはな、白雷光びゃくらいこうのメガネってあだ名で呼ばれてたんだぜ。電気を発する時に眼鏡が光るかららしい。」


「いっぱいあだ名があるのねぇ……。」


龍様の顔がかろうじて映った。アヤは呆れながら進む。

シャウの眼鏡が光源なため、足元しか照らされていないがないよりはましだった。


しばらく歩いているとカメが悲鳴をあげた。


「どうしたの?カメ?」

「血が……血が地面にあるさね……。」


あんまり気にして下を見ていたわけではなかったためアヤは気がつかなかったがよく見ると点々と血が地面に染み込んでいる。


「ん……?まだ新しいな……。血にかすかに龍神の力を感じるぜ?」

龍様のつぶやきでアヤはハッとした。


……まさかイドがここで……


アヤがカメの方を向く。カメもアヤと同じ考えのようだ。


イドさんがここで暴行を受けた。……いや、拷問か?


「まあ、いいや。とりあえず進むぜ。」

「シャウ?」


今度はシャウが声を発した。


「加茂様……どうしたさね?」


カメは不安そうな目をシャウの背中に向ける。


「道がもう一つあるんだナ……。シャウ!」


「そんなわけねぇよ。ここは三ノ丸に行くための最短手段、暗いが一本道なんだぜ?」


「でもほら?シャアアアウ!」

シャウは眼鏡を何もないはずの所に向ける。


「……っ!」

そこにはトンネルのようになっている一本の道があった。


「こ、ここは何さね……?わちき怖いよぅ……。」

カメはアヤの背中に身体をうずめる。


「ちょっと……私だって怖いのよ。私はここにすら来た事ないんだから……。」

「とりあえず行ってみるんだナ!シャアウ!」


シャウはなんだか楽しそうにトンネル内に足を踏み入れている。

きっと冒険感覚で楽しんでいるんだろう。


「ちょ、ちょっと……ま・て・よ!」


龍様がウキウキなシャウを必死に止める。


「何なんだナ?シャアウ?」

「お前が何なんだよ!危険度もわからずに飛び込もうとしてよ……。」


シャウの頭にはハテナが飛んでいる。龍様は深いため息をついた。


「……わちき……この先で天津様の力を感じるさね……。ほんの少しだけど……。」

「何だって!」


カメの発言に龍様が今度は驚いた。


「いままで天津彦根神の気配をずっと感じ取れなかったんでしょう?竜宮にいたんじゃないの。」


「そ、そんな……そんなはずねぇよ……。」


アヤに向かい、龍様は頭をぶんぶん振った。


「まあ、これで行ってみるしかなくなったんだナ!シャアウ!」


「あーっ!だからちょっと待てって!

……はあ、アヤちゃんにカメ、俺様から離れるなよ……。」


龍様はさっさと行ってしまったシャウにため息をつきながら後を追いかけて行った。


アヤ達も後に続いた。




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