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流れ時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー11

飛龍の機嫌は完全に治ったらしい。彼女は闘えればなんだっていいのだ。


闘技場の隅っこにあった階段にシャウを先頭にしてアヤ、カメが足をかけ、最後に龍様が続く。


「ここから先、わちきがおかしくしちゃったアトラクションが襲って来るかもしれないから注意さね!」


「お前、なんで偉そうにしゃべってんだよ!お前のせいだろうが!こうしてやる!うりゃうりゃ!」


龍様は前を歩くカメの甲羅にオモチャの骨を入れ始めた。


「や、やめてぇ……❤」

「ああ、もういいわ!黙ってて!」


「シャシャシャシャーウ♪シャシャシャシャーウ♪」


シャウは前をただ歩くことに飽きたのかステップをきざみながら階段を登っている。正直イライラする。


先頭のシャウが踊りながら登るのでなかなか前へ進まない。


「いい加減にして!さっさと登って!その耳に残る歌、やめてちょうだい。」


「階段がもう終わるんだナ!

ここから先は渡り廊下があって二の丸へ行けるんだナ!


普通の観光は渡り廊下を渡らないでさらに階段を登って、そこでやっているウミカメ達のショーを見てさらに上で食事してそれから二の丸へ行くんだナ!シャアウ!」


「クソ……。加茂のやつ、ツアー内容覚えてやがる……。俺様は竜宮開けただけかよ!」


楽しそうに説明するシャウに龍様は頭を抱えていた。

アヤ達は階段を登りきって絶句した。


目の前は階段と渡り廊下があるがその渡り廊下にレーザーみたいなものが無数に張り巡らされており、謎のロボットが無言で多数……機械音をたてながら徘徊している。これはあきらかに危ないと言っている。


「おい……どうするんだよ……。」

「知らないわよ……。」


不思議と話す声まで小さくなった。


「これは竜宮の警戒体勢さね……。そんなに中に入れたくないのかね……。ああ、そうだ。加茂様の電気でロボットを狂わして……」


「シャウは今電気ないからロボット狂わせられないんだナ!シャウ!」

「……。」


カメは顔を青くする。もちろん、アヤ達の表情も暗い。


「な、なんかあれよね……。この赤い光に当たったらなんかやばいのよね?」

「触ってみるんだナ!シャウ!」

「お、おい!馬鹿やろう!やめろ!加茂!」


シャウを龍様が止めようとするがシャウはもうすでに赤い光に触れていた。


なんだか予想できていた事だがビービーと警戒音が鳴り、ロボットが一斉にこちらを向いた。


カメは咄嗟に防御の体勢をとった。ロボットから一斉に光線が飛んできたからだ。


ビームはカメの甲羅から発せられるシールドですべてうまく弾いた。


「危なかったさね……。次が来るけどどうするさね?」


カメは甲羅を持つ手が震えている。

咄嗟に甲羅をかざした事がカメの中で奇跡に近かったらしい。


「走って逃げるしかねぇだろ?」

「原始的で好きなんだナ!シャウ!」


「私はそんなに速く走れないわよ。体育はそんなに得意じゃなかったの。」

「アヤちゃん、アヤちゃん、時間ストップいいんじゃねぇか?」


龍様の発言にアヤはハッとした。


……そうだ。ここならきっと時間操作が楽だ。


「やってみるわ。」

アヤは鎖をロボットに巻きつける。そして止まれと願いを込めて鎖を消す。


「お!うまくいったんだナ!シャウ!」


シャウが喜びの声を上げたので成功したようだ。ロボットはピクリとも動かない。


「よし!これで通れるぜ。……ぐぼあ!」


龍様がいきなり奇声を発した。


「どうしたのよ?」


龍様は頭を押さえてうずくまっている。何かが当たったらしい。


「この赤い線が……棒みてぇに……。」

「ああ、そうか……。」


アヤにはわかった。

時間を止めた事により無数に張り巡らされているレーザーの時間が流れなくなったため、棒のように固くなったらしい。


……ということは……つまり今、固い棒が無数に張り巡らされているという事だ。


「これ……通るの無理じゃないかい?軟体動物なら通れるよ!」


「そ……そうねぇ……。時神避けみたいだわ……。ここを通るなら時間を戻してロボットをかわしながらレーザーの中を走るしかない……。」


「……だ、だな……。よし。覚悟決めていくぜ……。」


龍様はまだ頭を押さえている。そんなに固いのか。


「本当にやるの?」


「あたりめぇだろ。大丈夫だ。俺様がロボットの動きを読んでどこにレーザーが飛んでくるのか完璧に把握してからやるからな。」


龍様はカッコよくゴーグルを目にかける。

そしてしばらく沈黙した。ゴーグルには無数の数字が流れている。


それで一体何を見ているのかアヤにはわからないがここは龍様に任せてみる事にした。


「……よし……。」

龍様が突然目を開けた。


「何がわかったの?」


「いいか。よく聞けよ。ロボから飛んでくるレーザーは規則的だ。覚えれば避けられるんだよ。ここからよく聞け。いいか。右左左右左右左右右右左……」


「そんなの覚えられるわけないじゃないの……。あなた馬鹿なの?」

「……だな。」


アヤのツッコミを龍様はあっさりと認めた。


「ああ、時間が動き出したさね!やばいわあ!」

カメの言葉にアヤ達は焦った。結局何もできなかった。


「もうこうなったらてきとうに進むしかないんだナ!シャアアウ!」

ロボットは普通に動き出した。シャウは咄嗟に走り出す。


「ああ!もう。どうにでもなれ……よ。」


アヤも半ばやけくそでシャウの後を追う。龍様もカメを担ぐと走り出した。


「わあい。龍様にダッコだわ❤」

「降ろすぞ!てめえ!」


カメが足手まといになると考えた龍様はカメを抱えて走る事にしたのだ。

カメは龍様と一緒だから安心しているのかかなり余裕の表情だ。


張り巡らされているレーザーはただの赤い光だがロボットから出るビームは当たったら怪我では済まない気がする。


ロボットは的確にビームを発射していた。アヤ達はほぼやけくそに走る。


先程から横でズガアアン!バゴオン!と何かが破裂する音が響いているがそれを確認している余裕は残念ながらない。


「ああああ!」

叫び声にならない声を発しながらアヤ達は駆け抜ける。


……なんだったっけ……ええい!やけくそよ!右左左右左右左右右右左!


アヤはレーザーを素早くかわした。


「……嘘……。」


かわした本人も自覚がなくなんだかよくわからない感動を覚えていた。


よ……避けられた……。


シャウは楽しそうに軽々と避けてアヤの隣に着地した。


「楽しいんだナ!シャウ!これも竜宮のアトラクションに……」

「馬鹿野郎!ツアーコンダクターの俺様が死ぬだろうが!」


龍様はまだレーザーの中を走っている。


地面がえぐれるような光線がロボットから発せられており龍様はそれを避けるので精一杯だ。しばらくして龍様がぜえぜえと息を漏らしながらアヤ達に追いついた。


龍様はカメを降ろす。


「ああ……疲れたぜ……。」

「龍様❤素敵❤」

「うるせぇよ!さっきから。」


龍様とカメの無事を確認してアヤはシャウに目を向ける。


「うまく抜けられたみたいね。」


「アヤちゃんがすごかったんだナ!ビームが飛んでくるのがわかっているみたいだったんだナ!シャアウ!」


ほぼてきとうに走っていたのだがうまく抜けられたようだ。


その時、またアヤにあの感覚が襲った。


……何?また……


アヤの目の前に今とは違う竜宮が映り、アヤが立っているこの場所で笑い合っている神々が通り過ぎる。


―そういえば加茂君。君はオーナーに会った事ってあるの?―


立花こばるとが隣を歩くシャウに声をかけている。


―天津彦根神?

彼は普段は人型だけど変身すると一つ目龍になるんだナ!シャアウ!―


―一つ目龍?へえ、それは凄いや。あ、あと、全然竜宮に帰って来ない龍神がいるって聞いたんだけど……―


―龍雷水天神の事なんだナ?シャアウ!彼にシャウの力を少しあげたらしいんだナ!昔々に。そのことをシャウは知らないんだナ。―


―つまり加茂君も僕達時神と同じなの?転生して……―


―似通っているんだナ!シャアウ!―


そこで記憶は切れた。アヤは何か思う前に唐突に現実に戻された。


「おい!アヤ!逃げるぞ!」

龍様が叫んでいる。後ろを見るとあのロボットが追っかけてきていた。


「逃げるんだナ!シャアウ!」


シャウはアヤの手をとると走り出した。

ロボットのビームをかわしながらシャウは走る。


アヤ達は二の丸に入った。

まだロボットは追ってきている。おまけに暴走したアトラクションが襲ってきた。


なんのアトラクションだかは知らないが急に火柱が立ったり強風が吹き抜けたりした。これはシャウがいないとかわせる自信はない。


龍様はカメを再び抱き上げ、片手で水の槍を振り回し火柱を斬っている。


「おい!こっちだ!」

龍様は三つに分かれた道の内の右端の道を指差した。


「ああ、キープアウトの三の丸に最速で行ける道なんだナ!シャアウ!」

「だからお前はなんでそんな事を知ってんだよ!関係者じゃねぇだろ?」

「昔よく忍び込んだんだナ……ムフフ。シャアアウ!」

「お前なあ……。」


楽しそうなシャウに龍様は頭を抱えた。


こんな会話をしている間もどこからか瓦礫のようなものが飛んできていた。


カメが甲羅をかざし、バリアをつくっているのでこんなのんきに会話ができている。


「シャウ……、あなたは……本当は何をしにここに来たの?」

シャウはアヤの手を引きながら火柱をかわす。


「……。シャウは……お友達との記憶が観たかっただけなんだナ!シャウ!」

「友達って先代の時神?」

「そうなんだナ!シャアウ!」


シャウはロボットから発せられるビームをかわす。


「じゃあ、私を連れてきたのって……。」

アヤがシャウに手を引かれながらつぶやいた。


「……鋭いんだナ……。時神の記憶が観たいなら時神を連れて来ればいいんだナ……。シャウ!」


「それだけなの?」


「もう一つ……あるんだナ。シャウは昔の加茂別雷神が観たいんだナ。

この竜宮で龍雷に力をほんの少しだけ渡したという……あの加茂に……。


龍雷がどういう龍神なのかがこれでわかるんだナ……。

シャウが龍雷にここで会う事によってナ!シャアウ!」


シャウは火柱を避け、広いフロアにたどり着く。


「……なるほどね……。」


「おい!こっちだ!早く来い!」

「早く来るさね!」


龍様とカメがフロアの先にある右端の道に立って手を振っている。


「じゃあ行くんだナ!シャアウ!」

「……ええ。」


シャウとアヤは龍様達に向かって走り出した。


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