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流れ時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー9

日本で昔から描かれているあの龍と外見は同じだが飛龍というだけあり、背中に大きな翼が生えている。


威圧感が空気を震わせていた。


「飛龍の龍バージョンかよ……。厄介だぜ。……うわあ!」

「危ないんだナ!シャウウ!」


飛龍はいきなり翼を大きく動かし龍様とシャウを飛ばした。

龍様達はアヤとカメがいる位置まで吹っ飛ばされた。


「龍様、加茂様、大丈夫さね?」

「カメ!あいつなんとかできねぇか?」


「できない!できない!無理無理!わちきにやれなんて……。龍様が龍になれば……。」


「ここで俺様が龍になったらお前らタダじゃすまないぜ?巻き添え食うだけだ。」


龍様は青くなっているカメをおもちゃの骨でいじめている。


そんな事をしている間に飛龍がアヤ達に向けて火を放った。

ハンパのない灼熱がアヤ達のまわりをまわる。


「あ!あっつい!」


「ちょっと!まわり火で囲まれちゃったわ。どうすんのよ!」


アヤは焦った。火の海で囲まれている上から飛龍が覗きこんでいる。


何をされるのかわからないがこのまま突っ立っていたら一撃の攻撃をくらうかもしれない。


「とりあえず消火なんだナ!シャアウ!」

シャウは龍様の背中を叩く。


「ああ、わかっ……。」


龍様がそこで言葉を切った。

飛龍が口を開けてこちらに向かい飛び込んできていた。鋭い牙がギラリと覗く。


シャウは慌てて電撃を放つが質量共にかなり大きくなった飛龍には効かなかった。


「ちっ!カメ!甲羅よこせ!」

「ああ……わちきの……。」


龍様は乱暴にカメの甲羅を奪うとかざした。

すると強力なシールドがドーム状に覆いはじめた。


「ほんっといつも思うがお前のこれはすげぇよな……。」

飛龍はシールドを破ろうと噛みつくがシールドはびくともしない。


「だけどこれじゃあ、何にもできないんだナ!シャウ!」

「確かにそうね。飛龍を抑え込めているだけだわ。」


シャウの言葉にアヤは同意を示した。

飛龍は噛みつくのを諦め、続いて灼熱の炎を吐きはじめた。


「これはキツイぜ……。シールドは物理的なものを避けるだけだ。逃げるぞ!」

「どこに?まわりは火の海なのよ!」


アヤ達はまたピンチに陥った。


「とりあえず俺様が水の槍で突破口を開くからあいつの炎が来る前に火の海から脱出だ!」


龍様はそういうと一端、シールドを解いてしまった。


飛龍は待ってましたとばかりの勢いで尾を鞭のようにしならせアヤ達を薙ぎ払った。


「しまっ……」


アヤ達は重い打撃を食らい、横に吹っ飛ばされた。風の音か轟音は聞こえたがアヤは不思議となんの衝撃もなかった。


「いったたた……。」

アヤは頭を抱えながら起きあがった。


……あれ?なんで私これだけですんでいるわけ?なんで生きているの?


アヤはかすり傷程度しか負っていなかった。

闘技場の隅っこまで吹っ飛ばされたらしいのだが……。


目の前を見るとシャウが倒れていた。


「シャウ!しっかりしなさい!」

アヤと対するシャウは身体から血を流している。傷はかなり重そうだ。


「う……うう……アヤちゃん、無事でよかったんだナ……。シャウ……。」


シャウのゲージはもうほとんどゼロに近い。

なぜこんなにアヤとの差があるのか少し考えたらすぐに答えが出た。


「あなた、私をかばったのね……。」

「まあ……こういうのはそういうもんなんだナ……。シャウ……。」


シャウはフラフラと倒れそうになりながらも立ち上がる。


「……。」

「アヤちゃん、そんな悲しい顔はダメなんだナ。シャウは大丈夫なんだナ!シャウ!」


アヤの曇った表情をみてシャウが空元気でしゃべりだした。


「……こんな事をアトラクションでやっているの?」


「違うんだナ……。昔は……こんなんじゃなかったんだナ……。

でも飛龍はおかしくないんだナ……。


おかしいのはオーナーなんだナ……。シャウ……。」


シャウは笑っている飛龍を見ながら言葉を紡ぐ。


「そうだな。

俺様だったらこんなアブネェのツアーのオプションにも入れないぜ……。」


シャウの横には同じくボロボロな龍様がいた。

龍様も後、何かしらの攻撃をもらったらゲージがゼロになってしまうだろう。


「うわああん……。もうやだよぉ……。」


そのさらに隣で泣きじゃくっているカメが映る。カメはほとんど無傷だ。

龍様が素早くカメに甲羅を返してあげたらしい。


「俺様な、ちょっと良い事思いついたんだ。」

「何だナ?シャウ!」

「ここに海を出現させる。」


「だけどあれはアヤちゃんとかカメを巻きこんじゃうナ!シャウ。」


龍様とシャウはこそこそと話しはじめた。


「大丈夫だぜ。アヤちゃん、カメ。今からここに海ができる。


アヤちゃんはカメに捕まって海を回避、その後、アヤちゃんがカメのすぐ下の部分だけ時間を止める!いいな!」


龍様は今度、アヤとカメの方に目を向けた。


「……何するか知らないけど……従うわ。」

「海?そうかい!龍様は海神でもあったんさね!」


カメは感動のまなざしを龍様に向けた。


「さっさとやるぜ。カメ、ぼさっとしてんじゃねぇよ。」


龍様が静かに目を閉じた。どこからかさざ波の音が聞こえはじめる。


さざ波はどんどん大きくなり、闘技場から海水がどこからともなく吹き出しはじめた。海水はどんどん多くなり、闘技場を埋め尽くすほどになった。


アヤはカメに捕まり海に浮く。シャウは雷神が持つと言われる雷雲に乗っていた。龍様は一人海の中だ。海は高波へと変わった。


飛龍は先ほどから海の上を飛行している。出方をうかがっているようだ。


「飛龍……俺様に喧嘩を売った事を後悔させてやるよ……。」


海全体から龍様の声が響く。

飛龍が動き始めた瞬間、龍様の高波が生き物のように飛龍に纏わりついた。

もがく飛龍を海へと引きずり込む。


「アヤちゃん、時間を止めるんだナ。シャウ!」

「わ、わかったわ。」


シャウの言った通りにアヤはカメの下だけ時間を止めた。

これでカメは海の上に乗っている感じになった。


「いまだ!加茂!やれ!」

「シャアアアウ!」


龍様の声に従い、シャウは思い切り電流を海に流した。

まぶしいほどの電流が海を埋め尽くす。


一体、どれだけの電流を流したかわからないが普通の人間なら足をつけた瞬間に死ぬに違いない。


「よし!」

龍様の声がまた響く。


「龍はカメの下にいるんだナ?シャウ。

時間の止まった海の中にいるから電流が来なかったんだナ!


カメも時間の止まった海の上にいるから電流が来なかった!考えたナ!シャウ!」


シャウが興奮しながら語ってくれたので龍様が何したかったのかがよくわかった。


海は静かにゆっくりと退いて行った。どこに消えたのかはわからないがしばらくしたら元の闘技場に戻った。


目の前には黒焦げになった飛龍が人型で倒れていた。ゲージはゼロだ。


……勝った!

アヤはそう確信した。


「勝った……ぜ!あー……危なかった。」

「さすが龍様と加茂様さね!」

「今ので電気なくなっちゃったんだナ……。シャアアウ!」


龍様達は喜びを分かち合ったが先程から飛龍がまったく動かない。


「ちょっと、喜ぶのはいいけどあの神、大丈夫なの?」

「加茂が本気だったからな……。死んではいねぇと思うが……。」


アヤ達は恐る恐る飛龍に近づく。


「ごめんなんだナ……。怪我……しちゃったのかナ……。シャウ……。」

シャウが飛龍に手を伸ばした時、飛龍がむくりと起きあがった。


「すげー技放ちやがって……。お前ら、本気だったろ?試合だって言ってんだろうが!」


飛龍はとても元気そうだった。


「お前がはじめにルール破ったんじゃねぇか。」

龍様は飛龍を睨む。


「はあ?何言ってんだ?あたしはね、オーナーの指示通りに動いただけなんだぜ!死なない程度だろ?


加減が難しかったが結果、お前ら死んでねーじゃん?

お前らの攻撃はまじで死ぬかと思ったわ!」


「悪かった。お前なら死なないなと思ったからよぉ……。」

龍様は若干汗をかいている。


「ごめんなんだナ……。シャウが悪いんだナ……。シャウ……。」

シャウも汗をかきながらあやまっている。


「くそっ!くそっ!さっさと出てけ!うわああん!馬鹿ヤロー!馬鹿ヤロー!龍に食われちまえ!くそったれ!」


飛龍は突然泣き出した。


「な、なに?どうしたのよ……。」


「……飛龍はところどころに女の子が混ざるんだよなあ……。


こうなった時、思い切り暴力ふるっちまった俺様達はどんな顔をしてりゃあいいんだよ……。」


「とりあえずあやまって落ち着いたところで後日、チョコレートでもあげて……シャウ!」


「それしかねぇか……。あと……酒か。」


シャウと龍様は大きなため息をついた。


……チョコレートと酒って……おじさんなのか少女なのかわかんないじゃない……。


アヤは黙って頭をかいた。


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