流れ時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー8
「シャウ!」
シャウは飛んできた水の柱をひらりとかわす。
龍様はもう相手を捕捉したのか一方向に走り出していた。
竜巻をものともしていない。
「俺様だって一応、風雨の神だぜ。風くらいなんとかなるぜ!おっと!」
雷を纏った水の柱が龍様に向かい飛んできていた。龍様はぎりぎりで避ける。
「あんぎゃ!」
ふと後ろから変な声が聞こえた。
「しまった!カメ!」
龍様は気がついて叫んだが遅かった。カメは龍様が避けた水の柱にぶつかりスパーンと音をたてながら飛んで行ってしまった。
「うわーん。龍様―!」
カメはぐずっていたが無事のようだ。
甲羅がクッションになって落下の衝撃を和らげたらしい。
意外に丈夫だ。しかし少し頭の上のゲージが減ってしまっていた。
「ああ、わりぃわりぃ。本当に最強の防具……」
龍様が最後まで言い終わる前に電気を纏った水の柱が龍様に激突した。
「ぐあっ!」
「龍!シャウ!」
シャウは龍様を呼んだが龍様は遠くに飛ばされ背中を打ちつけて落下した。
「いってぇえええ!馬鹿ヤロー飛龍!これ、死ぬぜ!」
龍様はよろよろと起きあがった。頭のゲージはかなり減ってしまっている。
「一発であれって飛龍、なかなか本気なんだナ……。シャウ。」
「私はあのカメの防御力の高さがすごいと思うわ……。
同じ攻撃をくらった龍があんなにゲージ減らされているのに……。」
シャウはやれやれと首を振っているだけだがアヤには単純に恐怖だった。
あれに当たったらタダじゃすまない。
……はっきり言って私はカメよりも弱い。
シャウと龍がいなくなったら自分は確実に終わる。
ゲームと言っているが死んでしまうかもしれない……。
「……なら!」
アヤはいきなりカメに向かい走り出した。
「ああ、アヤちゃん!危ないんだナ!シャウ!」
シャウがアヤを追おうとするがアヤとシャウの前に火柱が立ったのでシャウは後退するしかなかった。
「なんだあ?あたしに向かってくんのはツアコンだけか?あっはははは!」
飛龍の動きに合わせて龍様もスピードを上げて動く。
「飛龍……話が違うぜ……。今のはアトラクション用の攻撃じゃねぇだろうが!」
「難易度が上がったんだよ!龍雷が許可したんだ!
あいつ、情緒不安定なんかね?
最初と言っている事が違うんだよな!最初は怪我させない程度の攻撃で行う事。
で、さっきは死なない程度の攻撃で行う事!
死なない程度って事は怪我はいいんだよな!ははっ!」
「龍雷がそんなやべぇ攻撃を許すと思うか?」
龍様は飛龍に向かい、水の槍を出現させかざす。
「さあね!あたしの知った事じゃねーな!ははっ!」
飛龍の鋭い蹴りが龍様を打つ。
龍様は素早く水の槍で飛龍の足を弾いた。
水の槍はそのまま龍のようにうねり飛龍に向かい飛ぶ。
「返してやるよ!」
飛龍は水を手から吸収すると龍様の水を倍にして返した。
「うおわ!まじかよ……!」
龍様は全力で逃げ始めた。
「なんだよ!逃げんのか?あははは!……ん?」
飛龍は咄嗟に後ろを向いた。
しかしもう遅かった。飛龍の身体を強力な電流が走り抜けた。
「うあああ!」
飛龍は膝をついてシャウを睨みつけた。
シャウの杖先は少し焦げていて煙が出ている。
「けっこう効いたみたいなんだナ!シャウ!
女の子だからゲーム上、傷がつかない程度の電流にしたんだナ!
ゲージを減らすためだけなんだナ!シャウ!」
「……へっ。相変わらずだな。優しくされんのは嫌いじゃないぜえ!ははは!」
飛龍はシャウにカマイタチをぶつける。
シャウはきれいに避けたが後ろから迫る炎に身体を貫かれた。
「シャアアウ!げ、ゲージが減っちゃったんだナ……。シャウ……。」
シャウの背中は焼け焦げていた。ゲージの減り具合はそうでもないが火傷を負ってしまったらしい。飛龍はにやりと笑うと龍様を潰しにかかった。
その間、アヤはカメの元までたどり着いていた。
「アヤ?どうしたのさ……。わちきは隠れる事で精一杯だよ……。」
カメの不安そうな声にアヤは冷静に話しはじめる。
「いいのよ。そのまま隠れてて。私も一緒にいれて。」
「い、いいけど……。龍様も加茂様も押されてるみたいさね。」
「それなんだけどね。私、戦闘はダメだけど彼らのゲージを回復する事ならできそう。」
アヤの言葉にカメは嬉しそうにこちらを見た。
「何するさね!」
「飛龍の動きが速すぎて目に追えないから動きを止めたりすることはできないけど龍達は見えるでしょ?あのゲージを攻撃される前に戻すのよ。」
「そんな事できるのかい?」
「たぶん。現世だと人間の数とか建物の歴史とかが邪魔して時間の戻しはできないけどここは高天原でなおかつ、ゲームのゲージ。歴史の修正はほとんどないし、龍達の時間を戻すわけじゃないから大丈夫。」
アヤはそっと手を前に出した。
飛龍の攻撃はすべてカメが持つ甲羅に弾き返されている。
アヤがゲージに向かい鎖を巻きつける。
ゲージが一端消えたが龍様達に影響はない。
そしてアヤが手を握った時、ゲージは満タンの数字に戻った。
「なっ!……ははっ!やってくれるねぇ!」
飛龍は一瞬驚きの表情を見せたがすぐに笑い出した。
「おお!こりゃあすげー!」
「シャウ!」
龍様とシャウは元気になりいつもの調子を取り戻したらしい。
「あははは!思い出すなあ!加茂!あの時の時神も同じ事をやりやがったよな!」
「そうなんだナ!シャウ!」
飛龍の言葉にシャウは笑い出した。
「おい!加茂!笑っている場合じゃねぇぞ!今がチャンスだ!たたむぜ!」
龍様がシャウをつつく。シャウは元気よく頷いた。
「そうはさせねぇんだよ!なら、一瞬で戦闘不能にしてやるよ!ははは!」
飛龍は大声で笑うとひょうたんの酒を飲みほした。
刹那、飛龍のまわりで炎と風が舞い始めた。
「!」
気がついた時には飛龍は真っ赤な龍へと変身していた。




