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流れ時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー7

 アヤ達は階段を登り、二階へ到達した。

二階はどういうことか大きなスタジアムになっていた。


おそらく闘技場だろう。

闘技場の真ん中には赤髪の女が立っていた。


あまり手入れされていない髪と龍が描かれている鉢巻、目は赤く鋭く、手にはひょうたんと日の丸うちわが握られている。


「よう!客か?受付がいねぇせいか客がこねぇんだよ。って、カメにツアーコンダクターと加茂かよ。」

女はあきらかに嫌そうな顔をむけた。


「ひっ……飛龍様……いたんだね……。わちき……死んだわ。」

カメはガクガクと震えながら龍様の後ろに隠れる。


「カメ、あんたな、いっつも思うけどよ、口悪いんだよ!ぶっとばすぞ!」


飛龍の眼力と凄味のある声にカメは完全に委縮していた。

その手前にいた龍様も委縮している。


「お、落ち着けよ。飛龍……。お前、カリカリしすぎじゃねぇか?」


龍様は飛龍をなだめる。その横でシャウは闘技場の砂でお絵かきをはじめていた。


「はっ!あたしはそのカメにお仕置きしなきゃなんねぇんだよなあ。勝手に現世に行って、しかもアトラクションをいじりやがった。許される行為じゃねぇよなあ?」

飛龍の言葉にカメが青くなる。


「おい、アトラクションをいじったのはお前なのか?」

龍様が小声で後ろにいるカメに話しかけた。


「……そうさね……。わちきさね……。飛龍様やオーナーの目を盗むため、やったんよ。どうしても現世に行かなきゃならなくてねぇ……。」


カメも小声でつぶやいた。


「お前、バカか!んなことやったら龍神から袋叩きだぞ!しかも飛龍にバレた。こいつはやべぇ。」

龍様はいままでで一番厳しい顔つきでカメを睨む。


「……あやまってすむ問題じゃないさね……。でもわちきは現世に行きたかったんよ……。わちきは……。」

カメが泣きはじめたので龍様は慌てて飛龍に向き直った。


「お、俺様がやれって言ったんだ!アトラクションをおかしくしろって!」

「なんのためにだ?」

飛龍は日の丸のうちわで自身をあおぐ。


「えーと……オーナーがいなくなった理由を調べるためだ!」


「そりゃあ、おかしな話だ!ははっ!アトラクションがおかしくなったときはまだオーナーはいたんだぜ?」

飛龍の笑い声が響くと同時に龍様の頬に汗がつたいはじめる。


「シャウがやったんだナ。シャウ!」

沈黙をやぶったのはシャウだった。


「へぇ?お前が?」


「カメを現世に連れて行くために龍神の目をごまかさないといけなかったんだナ!シャウ!」


「なぜだ?」

飛龍は笑いながら聞き、シャウは落ち着いて話しはじめる。


「現世でこの時神ちゃんを見つけるためだったんだナ!シャウ!」

シャウは事の成りゆきを黙って眺めているアヤを指差した。


「お、おいおい。」


龍様が口出ししようとしたがシャウは華麗に止めた。


「ちょうど鶴があいてなかったのでカメに龍雷水天の居所を聞こうと思ったんだナ!よく現世にいるって聞いたしナ!シャアウ!」


「どうして龍雷が出てくる?」


「彼はこの時神ちゃんと友達っぽいんだナ!もしかしたら龍雷水天が彼女の居場所を知っているのかナと思ったんだナ!シャウ!」


「そんなに時神が恋しいのかよ?」


飛龍はにやにやと笑いながらひょうたんに入ったお酒を飲んでいる。


「そうなんだナ!シャウ!」


シャウも楽しそうに笑う。先程から龍様はそわそわとしている。


「よくもまあ、あんな大嘘がつけるもんだよな……。」

「加茂様のおかげで助かるさね……。」


龍様とカメは完全に大嘘だと思っているらしいがアヤは何かひっかかりがあった。


「まあ、いいや!それより新オーナーが現れてねぇ!ここのアトラクションをあたしに勝てなきゃ通れないってしたらしいんだ。」


「なんだって!新オーナー?」


飛龍の言葉に龍様達は驚いた。


「あれー?知らねぇのか?オーナーは龍雷になったらしいぜ?」

「イドが!?」


アヤはカメと目を見合わせた。


「なんでまたあいつが……。」


龍様は頭を抱えて唸った。


「とりあえず!あんたらはあたしに勝てなきゃ通れないんだぜ?試合だ!さっさとやろうぜ!ははっ!」


飛龍はアヤ達を見回した。


「飛龍は強ええ……俺様一人じゃ勝てねぇ。加茂!カメ!そしてアヤちゃん!協力しろ!」


「相手は女の神みたいだけど……。」


アヤの発言に龍様は焦った声をあげる。


「たしかに男と女じゃ力の差はあるぜ。だけどな、それは物理的な力だ。俺様が言ってんのは神としての力。あいつの場合、龍神としての力だ。あいつの神格は高いわけじゃない。色々と分野があるんだ。


だから神格が上でも戦闘に関しては弱い奴もいる。奴は戦闘が得意な神がだいたい持っている火の力と雷、水の力を持っている。だから戦闘に関しては天才的に強い。」


「……なるほどね。じゃあ、あんまり迂闊にぶつかるのはダメだわ。生兵法は大怪我の元。」


「なんでそんな古臭いことわざを知ってるんだよ……。」

龍様のため息にアヤはきっぱりと答えた。


「暇な時に辞書を開くようにしているの。」

「そりゃあご苦労な事で。」

龍様は飛龍に向き直った。


「おい。話は終わったか?じゃあ、試合を開始するぜぇ!」

飛龍は腕を上にあげた。

するとアトラクションの一部なのかアヤ達の身体に緑の光りが動きはじめ、頭の上でラインとなって止まった。


「なによ。これ。なんか緑の光りが頭についているんだけど……。」


「これはアトラクションだ!ははっ!ヒットポイントってやつだよ!ゲームでいうところのHP!攻撃をうけると頭のついている緑のラインが減っていく。緑のラインがなくなったら負けだ。単純だろ?」

飛龍はアヤに親切に説明する。


「そうね。実に単純だわ。」

「じゃあ……いくぜぇ!」


飛龍が先に動いた。動いたというか消えた。


「シャウ!」

シャウがほぼ反射的に飛び上がる。


気がつくとシャウが立っていた地面が陥没していた。


「はわわわ……。飛龍様……。」

カメは横で甲羅に隠れて怯えていた。


「アヤちゃん!後ろだぜ!」

「え?」


龍様が声をかけてくれたがアヤには動くことができなかった。

この前まで普通の高校生だった彼女には厳しい反射だ。


慌ててシャウがアヤを抱き上げ避ける。風の斬撃がシャウ達を通り過ぎていった。


「風の力で速く動いているんだナ!シャアウ!」

「無事か……。よかったぜ。」


気がつくと龍様のまわりに竜巻と呼んでもいいくらいの風が砂埃とともに舞っていた。


「危ないんだナ!死ぬんだナ!シャアウ!」

「縁起でもねぇ事言うんじゃねぇよ!」


シャウは心配していたが龍様は落ち着いていた。


頭についていたゴーグルを素早く目にかける。

近くにいるカメはひたすら甲羅を盾にして隠れている。


「これが機械的なシステムだとしたら飛龍にもHPのラインがあるはずだ。俺様がそのシステムの数字を見つける。そうすりゃあ、奴がどこにいるかわかるぜ。これはゲームだ。実戦じゃねぇ。」


「さ、さすが龍様さね!わちきは動けないよ……。」


「ほんっと使えねぇ使いだぜ……。……それからツアーコンダクターをなめんな……飛龍。」

竜巻はひどくなっている。別のところにも小さな竜巻ができはじめた。

その中を飛龍が駆け抜ける音だけが響く。


シャウとアヤのまわりに今度は火柱が立ちはじめた。


シャウはステッキをライフル銃のように構え、杖の先端から電気の塊を飛ばしている。しかし飛龍が速すぎて当たらない。


「私の時間停止も効かないわ。目で追えないんだから無理。」

アヤはふぅとため息をついた。その時、また先程の感覚が襲ってきた。


……何よ……だから何なのよ……


目の前に闘技場が映る。

今とは違い、沢山の観客がいる。目の前に飛龍が立っていた。


―加茂か?あんたも好きだなあ。―


飛龍がニヒヒと嘲るように笑っている。シャウも楽しそうに笑う。


―今日はお友達と来たんだナ!シャウ!―


―あ……えっと……どうも。―


シャウが手を出した先に立花こばるとがいた。


―どうでもいいけどよ、今日は観客がすげーんだ!楽しいだろ?さっさとやろうぜ!―


飛龍が素早く動き始めた。


―ええ?いきなりはじまるの?―


―そうなんだナ!シャウ!―


シャウはこばるとの手を引きながら走り出す。

シャウ達が立っていたところにいきなり火柱がたった。


―わあ!すごいね……。速すぎてみえないよ……。―


―大丈夫なんだナ!たぶん。シャウ!―


―大丈夫なの?本当に?―


楽しそうなシャウにこばるとがため息をついた。

そこまで見た時、映像が遠のいていった。


アヤの目の前にあった映像は跡形もなく消えてしまった。


「消えた……。」

アヤはまた我に返った。

気がついたら雷を纏った水の柱がうねりをあげて襲ってきていた。

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