流れ時…1ロスト・クロッカー1
はじめに。
※「Kindle版」や「製本版(紙書籍)」(七冊セット780円)はしっかり、読みやすく、ルールも守っていますが、web版は当時が残ってます……。
会話文の末で句読点をつけてはいけないというルールはありませんが、一般的な本には確かについていないので指摘を受けまして、後半はなくしました。前半はついてます。
ちなみに、「!」や「?」の後に全角スペースは入れていません。ゴメンナサイ……。一応、直している最中。
「、」をあまり入れておらず、やや読みにくい部分があります。
そして、
なぜかWordで存在していた段落のスペースが、コピペしたらなくなりました泣。ということで段落最初のスペースがないです……およよ泣。ゴメンナサイ……。
挿し絵が不要な場合は設定からお願いします。
一応、注意書き。
誰でも簡単に読めるを目標にしています!
こちらは十年ほど前の完結済の旧作です。
新作は「TOKIの世界譚」で今、連載中!
「この現象はおかしいね。……ああ、『ナオ』が原因か。時神アヤに余計な運命を背負わせてしまったね」
少年の声がどこからかする。
「君はそのうち気がつくかもしれないね……霊史直神……ナオ」
少年は、「袴姿の赤髪の少女」にささやくが、少女は記憶を失っているかのように無邪気に笑っていた。
これはある少女のマイナスから始まる物語。
時計……
人間がつくった数字化した時間。
私はそれが好きだった。
※※
ジジ……ジジ……
ノイズが響く。
「おかしいな! ツクヨミの所から出られるはずだったがっ……」
ジジ……ジジ……
「おい! マナ! ここはダメだ!」
ジジ……ジジ……
* * * *
とある普通のマンションの一室。
つくられた年代がバラバラな時計が多数置いてある。隅の方に机と椅子があり、そこには一人の少女が座っていた。
薄いピンクのパーカーに青い短いスカート。
短くきられた茶色の髪と、髪と同じ色の目。
一見普通の少女だがこの少女は少し変わっている事で有名だった。
「時間……時計……歴史……」
少女は誰にともなくつぶやいた。
「歴史は時間があるから存在する。私は今、時間の中で生きている。こうやって話している間にも私の中の歴史は進む。……時間を止めたら歴史はなくなるの? 自分だけ歳をとらないようにする……とかってできないの?」
彼女は時間と時計がやけに好きだった。
ゆえに彼女の部屋は時計だらけだ。
その時計はすべて同じタイミングでカチカチ鳴っている。
「タイムマシンをもし人がつくれるようになったら……タイムマシンに乗った人はどうなってしまうの? 未来に行ったとしたら歳をとりすぎて死んでしまうの? 過去に行ったとしたらその人はいなかった事になり消えてしまうの?」
少女は目の前でカチカチ鳴っている時計を見つめた。
今は……午後五時半……
もう……夕方か……
夕方……
ん?
五時半?
しばらくぼんやり見つめていた少女の目がいきなり見開かれた。
「ちょっとまって……」
時計を見ていた少女は立ち上がり、周りを見回し始めた。
……さっきも五時半だったじゃない!
「嘘……時計が……」
徐々にだがさっきまでそろっていた秒針の音がずれはじめていた。
しかもひとつではない。複数の時計の針が狂っているようだ。
どの時計が狂っているのか……
少女は時計をかたっぱしからチェックしていった。
「……あれ? い、いま……何時?」
そのうち元の時間がわからなくなってしまった。
少女の部屋にテレビも携帯もなく、時間を確認できるものがない。
しかたなしに外にある公園の時計を見る事にした。
「もう暗くなっているから……六時か……七時……。」
そんなものだろうと予想を立てて部屋のドアを開けようとした時、突如時計の一つが光り出した。
「え?」
少女はその不気味な光りがなんだかわからずただ立ち尽くしていた。
しばらくして光りがやむと目の前に学生服姿のかわいらしい顔つきをしている男の子が現れた。
「……だ……だれ?」
気が動転していた少女は震える声で男の子に問いかける。
「お! 壱の世界に来た! ……あ……いや……僕は……その……」
意味深な言葉を吐いた学生服の男の子は少女に誰何されると内気なのか下を向いて困っていた。
「泥棒? 空き巣? どこから入ってきたの?」
少女は怯えながら疑問をぶつけた。
「ち……違うよ。僕は現代の時の神だよ……。えーと……現代神って皆僕の事を呼ぶんだ……。」
「時の神様? それって空き巣とか泥棒した言い訳?」
もちろん、時の神様なんて信じていなかったが彼の言葉に少し興味があった。
彼が時間関係の事を話しはじめたからだ。
話を聞いてあげるのもいいかもしれない。
それが忍び込んだ言い訳だったとしても。
とりあえず、すぐに警察を呼べる位置に立っておいた。
「……まあ……信じてもらえないのも無理ないよ……。でも、僕は君に協力してほしいんだ……。」
「協力? 盗みとかの?」
「ち……違うってば……。ん~……なんて言えばいいのかなあ。今、時計とか……その……時間とかおかしいでしょ?」
「!」
この男から時計が狂っている事を持ち出されるとは思わなかった。
もしかして……この人が私の時計を狂わせたの?
用意周到な空き巣又は泥棒……。
でも……なんのために時計を?
「それね、君の家だけじゃないんだ……。ニホン全体の時計が狂っているんだ。ニュースで問題になっているよ。君はテレビを見ないからわからないかもしれないけど。で、それは、ニホンの時神のせいなんだ。」
「わけわからない。あなた、頭大丈夫? ……ん?」
少女は外で大声を出して言い合っているカップルの話に耳がいってしまった。
おそらく、マンションの横に通っている路地で言い合いをしているのだろう。
「あんた! デートに三時間も遅れるってどういう事?」
「何言ってんだ! 十分前に来たぞ!」
「ほら! 私の腕時計見てよ! 待ち合わせ何分だと思ってんのよ!」
「お前の時計が壊れてんだろ! 俺のは十分前だ!」
そのカップルはいつも路地に集まり夜の街へと消えて行く。
いままで時間の事で喧嘩なんてしていなかったように思えたが……。
「……おーい! 大変だ! 時計の針が全部バラバラになってるぞ!」
「ねぇ、今何時?」
気がつくとあちらこちらから動揺の声が聞こえはじめた。
「なに? 皆……時計が狂っているって言うの?」
少女は男の子に目線を戻した。
「えーと……だからね、僕の他に時神が二人いるんだ。一人は過去を守っている時神、もう一人は未来を守っている時神。ねぇ……助けて。君の助けが……」
脈絡がなさすぎて意味不明である。
「伝わらない。ちゃんとしゃべりなさい。」
少女の言葉に男の子は泣きそうになっていた。
「うう……えーと……ね、かこのかみさまとみらいのかみさまがね……」
このままいくともっとわからなくなりそうなので少女は質問を変えることにした。
「なんで私の力が必要なの?」
「僕、時計を使って動いているんだ。だからさ、過去の時神に会いたい時に君の家の時計を利用させてもらおうと思って……」
男の子はおどおどしながら大きい年代物の和時計を指差す。
「……? それ、うちの家宝よ?」
「た、たとえば……この時計、これは江戸くらいにつくられた和時計なんだ……。
僕はこれを使うと江戸の時代に行けるんだ。」
「へぇ……。その発想はなかったわ。あなたの話だと未来には行けないわね。
未来の時計なんてここにはないもの。」
「それは君が描いてくれるといいんだけど……。」
「描く? 何を言っているの?」
「君が未来の時計のイメージと年代を描いてくれれば僕はその年代に行けるんだ。」
「それだったら過去の時計だって自分で描いて行けばいいじゃない。」
「それはできないんだ。過去の時計はもう存在している。
時計のパーツや組み立て方が当時のものじゃないと僕は渡れない。
平安の世が現代、つまり僕の管轄だった時は時計なんて使わなくても渡れたんだけど、人が時計をつくって正確に時間の管理をしはじめてからうまく動けなくなっちゃって……」
ふーん……なかなか面白い事を言うのね……
少女はおどおどしている男の子に目を向けながら内心楽しんでいた。
「私を過去に連れて行ったりする事はできるの?」
おもしろ半分で聞いてみた。
「できるよ。たぶん……僕から離れなければ……。」
「そう……。」
「さっきよりも楽しそう……だね? 信じてくれたの?」
「まあ……そんなところ。あなた、過去に行きたいんでしょ? ついでに私を一緒に連れて行ってくれないかしら?」
半ば冗談まじりだった。
彼が言っている事はお話としてはよくできている。
話にのってみたらもっと面白い事が聞ける……ただ、そう思っていただけだった。
しかし、男の子は冗談など言っていなかった。
「ありがとう。僕一人だと不安だったんだ……。すごく助かるよ! じゃあ、さっそく行こうか!
ええと……現代の時計を持って行ってね。戻れなくなっちゃうからさ。」
男の子はニコリと笑うと少女の手に小さい置時計を乗せた。
「え?」
少女が不安な表情になりはじめたが男の子は構わず少女の手を握る。
「ちょっ……」
男の子は和時計に向かって走り出した。
まぶしい光りが少女を照らす。
あまりのまぶしさに少女は目を強くつぶった。
※※
ビビッ……ビビッ……
一瞬、時空が歪む。
メガネの少女がパソコンに向かいながらキーボードに手をかける。
……パチパチ……パチパチ……
時計の好きな「彼女」は
……さあどうするかな……。
※※
おもしろいと感じたら
星評価お願いしまーす(*´-`)
感想、レビューもいつでもお待ちしてます。