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流れ時…4ドラゴン・キャッスル・ヒストリー2

「う……。なんか色々間違ってた気がしたけどここ間違いなく高天原ね。」


アヤは目を開けた。いきなりだったが前も一度任意ではなかったが来た事があったのですぐに高天原だとわかった。


石畳の地面には神々がひしめき合っていた。

目の前には鉄か何かでできた頑丈なゲートがそびえ立っている。


「……確か、ここにいる神々はゲートを通る順番待ちをしているのよねぇ?」

「その通りだナ!シャウ!ザ・ストリート!シャウ!」


シャウはなんだか知らないが楽しそうだ。

アヤは頭を抱えながら順番を待つ。


神々がゲートを通るには認証システムや身分を明かす機械などに触れなければならない。そこでエラーが出たら高天原のチケットを持っていてもゲートの中には入れてもらえない。


そしてゲートは沢山あるが行ける場所は四か所だ。高天原東、西、北、南。


チケットがどこ行きかでゲートにあるマジックミラーのようなものが反応し、行き先を提示する。


そこまでいけば後は中に入るだけである。


ゲート付近には銀の鎧を着た門番らしき神々が沢山うろついている。

まず不正はできない。


並んでいるとアヤ達の番になった。

アヤ達のまわりに緑の電子数字がまわる。


おそらく身分を調べる機械だ。

シャウはオールクリアだったがアヤとカメは認証にひっかかった。


「まあ、当然よね。私はまだ高天原に入れる神格を持っていないんだから。」


アヤはやれやれと首をふる。

神格があまりに低い神はチケットを持っていても高天原へ入る事はできない。


人間界で修行してはじめて高天原の地を踏める。


「それよりカメはなんでひっかかったの?」


「ん……。それは……わちきの場合は龍神様と同伴じゃないと通れんの。

鶴も同じ。鶴は神様と同伴じゃなきゃ通れんの。


わちきらは僕、使いであるから単体で行動する事自体いけない事なんよー。わちきがカメの神様とかになったら別なんだろうけどねぇ。」


カメは苦笑いをアヤに向けた。


「ああ、そういう事ね。シャウ?どうすればいいのよ。私達は。」

「おい!そこの銀の鎧!通るヨ!シャウ!……シャウの連れ。いい?」


シャウはうろうろしていた鎧に話しかける。


「どうぞ。どうぞ。お通りください。」

銀の鎧はマジックミラーの一つを指差した。


「サンキュ!さあ、いくヨ!シャウ!」


……こんな簡単に入れるわけ?高天原のセキュリティーどうなってんのよ……

私達思いっきりエラー出てたんだけど。


そう思ったが話がややこしくなると思い黙ってシャウに続いた。

カメも恐る恐るついてきた。


銀の鎧達はおとなしくマジックミラーを通り抜けるアヤ達を見ていただけだった。

光りがアヤ達を包んだ後、一気に風景が目に広がった。


その先は古臭い家々が並ぶ小さな町のようだった。かやぶき屋根が連なっている。まわりは山で今現在、桜が満開に咲いている。


「ここが高天原南?」

「そうだナ!シャウ!でもここはまだ龍神の里じゃないナ!シャウ!」


確かにここにいる神達は普通の神様だ。多少観光客もいるらしい。


「ここにいる神達はもちろん、私よりも神格が上なのよね?」

「そうなるナ!シャウ!」


シャウはここに住んでいたのか足取りに迷いがない。

かやぶき屋根が連なる家々をよけながら路地裏に入って行く。


地面は石畳だ。


とても歩きやすく舗装されている。

お店もけっこうある。レストランや土産物屋、喫茶店にツアー計画所。


ん?ツアー計画所ってなんだ?


アヤは一つの看板が気になった。

なんだか嫌な予感がしたため素通りしようとしたのだがシャウが許さなかった。


「おーい!時神ちゃん、アヤちゃん!どこ行くんだヨ!シャウ!こっちこっち!」

シャウは怪しい看板の前でアヤを手招いた。


……いやだ……行きたくない。

こういう危ない看板がいつもなぜだか目的地なのよね……。

これは明らかにやばい事が起こる前兆だ。絶対。


ふっと横を見るとカメがありえないくらい怯えていた。


「かかかか……加茂様!ここはやばいって!わちきは優しい龍神様に……。」


「何言ってんだヨ!シャウ!リゾート地と言えば『つあこんだくた』!シャウ!」

シャウは言えていなかったがツアーコンダクターの事らしい。


「いや、だから観光客にはあれかもしれんけどわちきに対しては……。」

「こんちはー!シャアウ!」


カメが何か言い終わる前にシャウは堂々と『ツアー計画所』と書いてあるかやぶき屋根の家に入って行った。


「うわあん!聞いておくれよ!チクショー!」

カメは汚い言葉を吐きながらアヤの後ろにこそこそと隠れる。


「なんだかわかんないけど行くしかないようね……。」

アヤは覚悟を決めてカメを引っ張りながらシャウに続いた。


中に入った。中はシックな茶色で木目がきれいなフローリングが広がっていた。


真ん中に長机が置いてあり上には鎖で吊るされたプラスチックの看板。

受付と書いてある。


長机の奥で椅子に座っている男が見えた。

男はこちらに気がつくと気前よさそうに近づいてきた。


「はいはい。いらっしゃいませ。竜宮城ツアーコンダクター流河龍神りゅうかりゅうのかみでございます!」


ニコニコと笑っている男はとっても愉快な格好をしていた。


短く切りそろえられている緑の髪にシュノーケルグッズがついており、真黒な着物を左半分だけ着ている。


右は袖に手を通さずにだらんと下に垂れていた。つまり右半分は裸だ。

その黒い着物に白字の龍が流れるように描かれていた。


そして下は藍色の袴。腰に骨のおもちゃがついている。

目つきは悪いが聡明そうな青年だ。


「シャウ!」

「……シャウ!」

二人は謎の掛け声をあげる。


……それ挨拶だったのか。


アヤはここでも深くつっこまないようにする。


「なんでぇ。加茂かよ。あーあー、こんな仕事俺様にむいてねーっつーの。


だりぃだりぃ。まじ、何がツアーコンダクターだよな?


竜宮城なんか見て誰が得すんだよ。ったく。」


シャウを見た途端、彼の態度が急変した。


「竜宮城に用があるんだ!シャウ!ツアーを頼みたいんだナ!シャウ!」

男はシャウの頼みに大きなため息をついた。


「おいおい。ふざけんじゃねぇって。今、あそこどうなってんのか知ってんのかよ?って……そこの小娘誰?」

男はシャウを見てからアヤを見つめた。


「ああ、私は時神アヤ。それでこっちは……。」

「ああああ!ダメ!ダメってカンニンしてぇ!」


カメはアヤの後ろで小さくなっていた。

カメの声を聞いた男の眉間にしわが寄る。


「カメかあ?そこにいやがるのは!出てきやがれぇ!」

「ひぃいい!」


男はひときわ凄味のある声を上げる。

カメは涙目で絶叫しながらオズオズとアヤの後ろから顔を出した。


「てんめぇ!いままでどこ行ってやがったんでぇ!ああ?」

「ひぃ!許してくださいまし……龍様……。」


カメは土下座しながらあやまっている。

龍様と呼ばれた男はカメを怒鳴りつけていた。


「てめぇ!服全部はぎ取ってすっぽん鍋にしてやろうか!」

「ひぃいい!それはカンニンしてぇ……!」


……だからカメじゃないのか?あ、すっぽんぽんのすっぽんなのか?卑猥だ。


龍様はアヤをちらりと見た後、カメに近づきオモチャの骨でカメをペチペチ叩きはじめた。


「てめぇなんてこうしてやる!お仕置きだ!うりゃ!うりゃ!」

「ふえぇえん。カンニンしてぇ……。」


カメは泣きじゃくりながら龍様のお仕置きを受けている。


……どこのいじめっ子?竜宮城に行く前のカメみたいだわ。


アヤはため息をついた。


「ワァウ!そんなにペチペチしなくてもいいナ!シャウ!」

謎の掛け声とともにシャウが龍様とカメの間に割って入る。


浦島太郎がそこにはいた。


「なんでぇ。加茂!大丈夫だぜ!俺様はそんなに強く叩いてねぇって!怪我でもしたら大変だろうが!」


……口調は荒っぽいが実は優しい男らしい。


「けっこう痛かったはにゃほにゃ……。」

龍様はカメの頬をみょーんと引っ張る。


「何言ってんかわかんねぇなあ!ああん?もう一回言って見ろよ?ええ?」


龍様は黒い笑顔をカメに向ける。

カメはがたがた震えながらその場にへたり込んだ。


アヤはカメが怯えていた理由がよくわかった。


「その辺にしてあげたら?」

アヤはカメを華麗にかばった。


「そうだな。これ以上やったら俺様いじめっ子になっちまうからな。これはあくまでお仕置きだぜ。」


「……これは完璧ないじめだったわ……。」

「ねぇちゃん、言うねぇ!」


龍様は愉快そうに笑った。カメはしくしく泣いている。


「これだから……これだから……うう……。」


「おい!さっさと立て!俺様がこんなもんで許してやったんだ。


さっさと立ち直れって。

お前な?いいか?俺様に最初に会ったからこれだけで済んだんだぜ?お前、これ飛龍とかに捕まってたら……。」


「わあああん……。」


カメは龍様に泣きついた。龍様はしばらくよしよしとカメを慰めていたが急に左腕を上げると指から少量の水を出した。


その水はカメの着物の襟から首筋に入り込んでいった。


「……!」


カメはいきなりびくついた。龍様はいたずらな顔で笑っていた。


「な!何さ!なんか冷たいものが背筋にぃ……!龍様何したんのぉ!」

「ん?お水を流した!」


龍様はまた涙目になったカメに笑いながらブイサインを送った。


「いじわる!いじわる!」

「あっははは。」


なんだかわからないがお互いとても楽しそうだ。


シャウは何がしたかったのかわからないがひたすら「シャウ!」の掛け声に合わせてカッコいいポーズを編み出していた。


アヤは愕然とした。


……これは下手するとリードする者がいなくなる可能性がある……


今すぐ帰りたくなった。


「加茂!やんのはいいけどツアー代ちゃんと払えよ!」

「大丈夫だナ!シャウ!ここに彼女が!」

「はあ?」


シャウは隣にいたアヤを指差す。


「シャウ!金持ってないんだナ!シャウ!」

「ふざけないでよ!こないだバイトで一生懸命に稼いだんだから!まさかお金のためだけに私を呼んだの?」


アヤはシャウを睨みつけた。


「大丈夫だナ!龍に聞いてみるんだナ!シャウ!」

「はあ?」

「ああ、金な!タダ!タダ!」


龍様は楽観的に笑う。


「タダ?何よ!からかったの?」

「ゴットジョーク!シャアアアウ!」


シャウはうまくいったとばかり力強くガッツポーズをアヤに向けた。


正直殴りたくなったがアヤは大人なので我慢した。


「じゃあ、行くぜ?ツアーしゃべりなしな!ありは金とるぜ!保証なしのデンジャラス旅行になるがいいよな!はーい。いいでーす!」


……いいわけあるか!


アヤは心の中でつっこみをいれた。


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