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流れ時…3ジャパニーズ・ゴッド・ウォー13

「まいったわね。」


アヤ達はヒメさんに連れられ空を浮いている。

おじいさんの意識は戻っていない。


ちなみにここがどこなのかどうして飛んでいるのかアヤ達にはわからなかった。


「まさかアヤに会うなんて思わなかったよ。あれだろ?栄次もいるんだろ?このへんに。」


未来神プラズマは隣を飛んでいるアヤに話しかけた。


「栄次……さっき、冷林のところで会ったわよ。ところで、あなたは未来を守る使命があるでしょ?なんで現代にいるのよ。」


「呼ばれたんだよ。それだけ。」

「あなたは未来がみえるのよね?結末、どうなるのよ?」


「知らないよ。俺はここ最近はじめて高天原に来たんだ。


ほんとはもうとっくにここに入れる神格はあったんだけどどこに行っても俺の居場所は変わんないから俗世にいたんだ。


だからここの未来は知らない。」


「そう……。」


アヤはそこで言葉をきり、今度は前を飛んでいるヒメさんに目を向ける。


「ねぇ、歴史の神、あなた何がしたいの?さっきから言ってる事めちゃくちゃじゃない。」

「なにがしたい……とな。」


アヤの質問にヒメさんは少し止まった。


「聞き方が悪かったわね。あなた、冷林に対してすごく怒ってたみたいだけど仲間なのね?」


「あれはもうひとりの冷林に対する怒りじゃ……。」

「もうひとり?」


「東のワイズの他、ワシの邪魔をしてくるのがもうひとりおるのじゃ。


それは冷林と名乗った者……出会った事はない。

しかし何度も何度も邪魔をされておる。


手違いだとワシは言ったがミカゲの方は知らぬという。つまり偽冷林じゃ。しかし、先程は奇妙じゃった……。」


「?」


「高天原へ入る時、あれは確かに西のチケットじゃった。

しかし、ワシらは北へ飛ばされた。


そこでおかしいと感じたのじゃがまあ、ミカゲが呼んでおるのじゃろうとその時は思ったのじゃ。だが、翁が消えていた……。


きっと偽冷林の仕業だとまわりに言雨をふりまいてみたが反応はなかったのじゃ。そしてしばらくした後、翁がミカゲのもとへいるという……」


「それってミカゲ様が偽冷林だったって事じゃない?」


「いや、ありえぬ。ミカゲは結界の外で翁を見つけたがどうすると相談をしてきたのじゃ。それに同じ志を持った者同士、なぜ邪魔をしあわなければならぬのじゃ。」


ヒメさんはアヤの意見をはっきりと否定した。

先程からプラズマは黙って話を聞いている。


「それもそうだけど……。あ、じゃあ、私達がミカゲ様のところにいる時にかかってきた電話は何よ。」


「あれは、イド殿が『東のワイズ軍が今、冷林のもとへ向かっている』とワシに電話してきたからじゃ。


おぬしらをはやく逃がしたかったというのもあるがミカゲに気がついてもらいたかったのじゃ。


しかし、あれはワシの電話が遅かったの……。じゃが、冷林はすべてを飲み込もうとしておるというのは本当の事じゃぞ?


まあ、あの時はアヤ達を冷林から遠ざけるための口実になってしまったのじゃがな。」


「じゃあ、イドは……やっぱり東のワイズの味方ではない……。」

「それはワシにはわからぬ。」

「それと、冷林がすべて飲み込もうとしているというのは?」


「……冷林の考えじゃのうてミカゲ達の考えじゃ。


ミカゲ達は冷林が事故で翁の身体の中に入ってしまったと思うておる。実際は冷林が翁の身体に入ったのじゃ。」


「それは知ってるわ。」

「今の冷林、翁がどうして神として保たれておるか知っておるか?」

「それは知らないわ。」

「それはアヤ達時神の時間の力とミノ殿の力じゃ。」

「私達と……ミノ?」


ヒメさんの言葉にアヤは首を傾げた。


「ミノ殿は現在、もっとも人に近しい神。


穀物神は常に人間とかかわっておる。人が穀物を食さなくなる事はない。


絶対になくてはならぬものじゃろ。

参拝するものは少なけれどミノ殿は人とのつながりがあつい神でもある。

つまり縁があるのじゃ。」


「それが?」


「冷林は人の一生を守る神……人との縁を糧としておる神なのじゃ。つまり冷林は……」


「今現在ミノの力を奪っている……ってこと?」


「そういう事じゃ。ミノ殿の力と時神の不変の力で今の冷林が成り立っておる。

冷林がなぜ、翁の中へ入ったのかそれはよくわからないのじゃが冷林にもおそらく何か考えがあったと……。」


「でもおじいさんも神なんでしょう?私達はおじいさんから力をもらったのよ。」


「そこはワシも知らんかったが……どうやら翁は人間に祈られてできた神に力を与えるようじゃな……。わからぬ……これでは力が拮抗しておるではないか……。冷林は力がほしかったわけではないのか……。」


後半はほぼヒメさんの独り言だった。


「それから、あなた、さっきと言ってる事違ったわよね?おじいさんも助けるんじゃなかったの?」


「うむ。そうじゃな。あの時はニッパーと剣王がいた故、ああ言っただけじゃ。」

「……。」


アヤはまだ裏があるとヒメさんをみて思った。


「で?俺らはどうなるわけ?えーと……ヒメさんだっけ?」


プラズマはどうでもいいと言わんばかりの顔でヒメさんに言葉をかける。


「ミカゲのもとに行ってもらうのじゃ。そして過去神と共にあの空間を出現させる。」


「俺達を脅す気か?」

「……。」

「ま、いいけどな。」


プラズマの問いかけにヒメさんは何もしゃべらなかった。



「……アヤを助けにいかねぇと……。」

「おそらく冷林……ミカゲのところでしょうね。」


ミノさんは立ち尽くしていた。

炎はニッパーが消えたと同時に跡形もなくなった。


どこも焦げてはおらず、いままで燃えていたことが嘘のようだ。


「あのビルのとこか?」

「そうですよ。」


焦っているミノさんとは裏腹、イドさんはのんびりと答えた。


「龍雷水天、はやく動いた方がいいんじゃないの?ニッパーはわからないけどもう一人の彼女は何かやらかすよー。」


「助言ありがとうございます。西の剣王。」

「つれないねぇ。君のメンツの為にそれがしは動いてないってのにさ。」

「……。」


剣王は笑いながら言葉を発したがイドさんは剣王を睨みつけた。


「なんだい?感謝してないのかい?だってそれがしが動いたらやばいでしょぉ。君にとっては。」


「そうですね。感謝はしてますよ。……ミノさん、行きましょうか。アヤちゃんを助けるんでしょう?」


「え?ああ。」

剣王の言葉を軽く流したイドさんはミノさんに向き直った。


それを見据えながら剣王はイドさんに言葉をかける。


「ワイズはどうしてるんだい?あの子は動いているだろう?それとも君が動かしているのかい?」


「!?」


イドさんの顔色が変わった。


「図星かい?」

「……やはりおわかりでしたか……。」


「騒ぎを大きくしておいた方が自分は見つかりにくい、そう考えての事かい?」

「……。」

「ワイズは知ってるよ。」

剣王はにやりと笑った。


「なんですって?」


「君はワイズを甘く見ているようだねぇ。

ワイズは君に情けをかけてわざと動いているんだよ。


知識の神を君ごときが動かせると思ったら大間違いだよ。


冷林を封印したいのはマジみたいだけどねぇ。」


「……そう……ですか。おそらくワイズの事ですから他には漏らしてないと思いますが万が一あのことが神達に漏れてしまったら……。」


イドさんの顔色は悪い。剣王はイドさんの弱みを何か握っているらしい。


「大丈夫じゃないかねぇ。あの子は気まぐれだから君がどう動くのか楽しんでみているはずだよ。」


「……ならいいのですが。み、ミノさん、行きましょうか。」


先程とうってかわってイドさんは蒼い顔でミノさんを見つめた。


「ああ。大丈夫か?イドさん。」

「大丈夫ですよ……。」


イドさんは元気のない顔でミノさんの手をとると一度ジャンプした。

ワープ装置を作動させるためだ。


「あ、龍雷水天―!……そこの狐耳、耳を塞いどいてねぇ。」

「?」


剣王はイドさんを呼び、その後思い出したようにミノさんに耳を塞ぐように言った。


ミノさんはなんだかわからないまま耳を塞いだ。


剣王が何かイドさんに言っていた。ミノさんはまったく聞こえなかったが口の動きでなんとなく言っている事がわかってしまった。


「……。」

イドさんは渋い顔で剣王をキッと睨んだ。


微笑んでいる剣王を残し、ミノさんとイドさんの身体は透けて消えて行った。

ミノさんは剣王の言葉を心で反芻した。それだけ剣王の言葉が謎だった。


―年頃の娘さんだねぇー


剣王はどうやらそう言ったらしい。


これは一体どういうことなのだろうか……。

い、イドが女なのか……


いや、それは絶対にない。あいつは男だ……。

なんだ……心が女なのか……。


いや、それはない。あいつはあきらかに女の子に興味を示す健全な男神だ。

と、すれば……


おいおいおいおい……


ま、まさか……娘がいるとか言うんじゃねぇよな……


ミノさんは苦い顔をしているイドさんの顔をなんとなく思い出してみた。


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