変わり時…最終話漆の世界6
「えー……なんだ。一緒に行くことになった」
立ち上がったクラウゼは言葉を濁しながらマナ達を見据えた。
「うん。よろしくね」
マナはとりあえず頷いた。
「デハ、クラウゼ、ヨロシク……」
ルフィニはそれだけ言い残すと光に包まれて消えていった。
おそらく、図書館からレール国に帰っていったのだろう。
「お前も大変だな……クラウゼ」
「……」
プラズマの視線にクラウゼはなにも答えずにそっぽを向いた。
「あ、セレフィアさん、結界を解いて大丈夫そうですよ」
健が場の雰囲気を全く読まずに本棚に張り付いていたセレフィアに声をかけていた。
健が声をかけると結界を張り、様子を見ていたセレフィアがのこのこと歩いてきた。
「あ~びっくりしましたね~。本が無事でとりあえず良かったです~」
「呑気なもんだな……」
セレフィアにプラズマが呆れたため息をついた。
「じゃあ、そろそろ行こうか?」
セレフィアに戦う意志がないことを確認したマナは皆を見回して尋ねた。
プラズマ達は軽く頷いて歩き出した。
「運命は……どうなるのかしらね~?」
セレフィアはマナ達の背中にそう問いかけてきた。
マナは一度振り返ると
「すべては世界に聞いてみる。私が運命を動かしているわけじゃない」
そう言って軽く手を振ると図書館の扉を開いた。
※※
図書館から出たマナ達は一息ついた。
「あー……ほんとヤバいと思った」
「それよりこれからどうするのだ?」
始終楽しそうなマイが崩れ落ちそうなマナに笑いかけてきた。
どことなくワクワクしているようだ。この神は相変わらず壊れている。
「クラウゼさんを仲間にしたから、次は時神を集める……かな?」
「ああ、そうでしたね。じゃあ……過去にいる過去神を呼べる神がいるっていう剣王のところに行くんですかね?」
健が首を傾げた。
「そうだね。クラウゼさんもいるし」
「俺を剣王に当てるつもりか……」
クラウゼはため息をついたが拒否はしなかった。
「よし、じゃあ……またマッシーを呼んで……」
健が胸ポケットをポンポン叩いてマッシーを呼んだ。
「はあー?寝てたんですけどぉー」
機嫌の悪いマッシーにまたあたふたしはじめた健は再び何かしらの契約をしているようだ。
ごはんを取れたてヒマワリの種にするとかなんとか話している。
「は、はい……大丈夫です……。行きましょうか……」
健は真っ青な顔色で眉毛をピクピク動かしながらマナ達を見た。
「大丈夫か?あんた……」
プラズマが呆れた顔で健に尋ねるとマッシーがため息と共に動き出した。
「ま、まあ……とりあえず、大丈夫です」
マッシーが無事に動き出し健はホッとした顔をした。
マナ達は前回同様ふわりと浮き上がりマッシーに引き寄せられるように動き出した。意識してもこの時は体を動かせない。
なすがままだ。
なので、ほぼマッシー任せになる。
少しふわふわ浮いているとネガフィルムが沢山絡まっているお馴染みの場所に出た。
「天記神の図書館までお願いします」
「わかったー」
健の言葉にマッシーはやる気なさそうに答えた。
ネガフィルムと宇宙の空間をしばらく進むと突然足がついた。
「ついたようですね」
健がつぶやいた時には森の中にいた。
「えーと……あっちが天記神の図書館だから、現世はこっちだ」
プラズマがあちこち指をさしながら確認をした。
森の奥に洋館らしい建物がある。おそらくあれは図書館だ。
プラズマが指したこっちは図書館がある森には入らない脇の道である。
「マッシー、ありがとう……」
「じゃ、約束よろー」
マッシーは青い顔の健に手を振ると再びハムスターとして健の胸ポケットに入り込んだ。
「ま、まあなんだ……。とりあえず行こうか?」
健の肩を軽く叩き、プラズマが気まずい雰囲気を少しだけ明るくした。ちなみにその様子をマイは心底楽しそうにクスクス笑っていた。
性格が悪い神である。
「マイさん笑ってますけど……行きますか……」
しゅんとした健がヘロヘロとプラズマが指差した方向へ歩き出した。
「健さん、元気出して!」
マナは一言健の背中に声をかけると追いかけていった。
一体マッシーと何の取り引きをしたのか?
まあ、大したことではないだろうが。




