変わり時…最終話漆の世界4
一方、健はできるかぎりの戦闘用ドールを操りルフィニの攻撃を防いでいた。
「えぃこ、びぃこの他に平次郎、あと強いじぅちゃんも追加!」
健の足元に魔方陣ができ、寡黙な和装の男の子型人形平次郎と楽観的に笑う着物姿の少女型人形じぅが雰囲気真逆で召喚された。
「あはは!敵はあれかあ!!よーし!」
じぅが笑いながらつまようじを構えた。同じく平次郎も厳しい顔つきのままつまようじを構える。
この人形達からするとこのつまようじは恐ろしい武器である。魔術のようにつまようじを硬化させられ、なぜか異様な破壊力を有する。
「サスガ、Kダワ……。使イハ、ドールナノネ……」
ルフィニは手から黒い球体状のエネルギー体を多数出現させ攻撃を仕掛けた。
えぃこ、びぃこが魔法使いスタイルのまま結界を張り、黒いエネルギー体を弾く。弾いた直後、平次郎とじぅがえぃこ、びぃこの後ろから飛び出した。つまようじを構えルフィニに襲いかかる。
ルフィニは五芒星の結界を出現させ平次郎とじぅの剣撃を弾いた。
しばらく攻防戦が続く。
「うう……強い……。だんだん指示と動きがバラバラになってきた……」
健は肩で息をしながらルフィニを崩す作戦を考える。
ドール達は単体でも強いのは強いのだが視野が狭いため第三者が司令塔になると本領を発揮するようだ。現在は健が四体のドールの司令塔でドール達にテレパシーで指示を飛ばしている。これはかなりの体力を使うのだ。
「しかし……私はひとりですか……。トホホ……」
健は逃げまくっている残り三人を何とも言えない顔で見つめた。
※※
「右だ!」
プラズマが叫ぶ。マイがマナに糸を巻き付け体ごと飛ばしてクラウゼの攻撃を左に避けた。正直マイがいなければマナは言われても反応できない。
「はあはあ……」
マナがいた所は電撃で黒くなっていた。
「そうか。先に別から叩いた方が良さそうだ」
クラウゼが剣を構えながら三人を睨み付けた。
「マイ!そっち来るぞ!」
プラズマが再び叫ぶ。感覚が研ぎ澄まされているのか少しだけ未来が見えるようだ。
「倒すどころではないな。くくく……」
マイはクスクス笑うと糸を円形にして盾を作った。そのまま両手で盾を持ちクラウゼの剣技を防ぐ。
盾はすぐに破壊されたが糸にゴムをいれていたおかげか電撃の餌食にはならなかった。
マイは盾が壊れる隙にクラウゼから距離をとった。
「これじゃあ皆精一杯だよ……。私ができることは……」
マナは必死に考えた。弐の世界に飛ばすのは意味がない。
頭を抱えているとふとプラズマの言葉が頭に浮かんだ。
……霊的武器は神々ならみんな持ってる……。
……じゃあ、もしかして私も?
マナはなんとなく手を開いてみた。
「おい!マナ!雷が!」
プラズマの言葉にマナがハッと我に返った。気がつくと目の前に電撃が迫っていた。
「電撃!くっ……お願い!なんか出て!」
マナは神にすがる勢いで汗ばむ手を握った。
「ん!?」
握ると右手に違和感があった。
なにかあるのはわかったが電撃をかわすために咄嗟に右手を差し出した。ほぼ本能的な防御だった。
刹那、キィンと異様な音がし、マナの右手が電撃を弾いていた。
「え!?」
マナは驚いて右手に目を向ける。
手のひらに小さな鏡がのっていた。
「鏡?」
「おい!マナ!生きてるか!」
プラズマがクラウゼを弾き飛ばしながらマナを呼んだ。
「う、うん。平気!」
マナは鏡を見つめた。なんで鏡が手のひらに……と思った時、霊的武器を私が望んだんだということに気がついた。
「と、いうことは!私の霊的武器は……鏡!?」
いまいち使い方がわからないが鏡は先程電撃を弾いた。盾になるということか。
……私も雷は防げるのか……。しかし、直接攻撃を仕掛けられる仲間がいない……。
……プラズマさんは遠方射撃だし、マイさんはサポートな感じだし……もう私が隙を作るしかない!
この鏡で。
「やる!!」
マナはプラズマが考えを組んでくれるのを期待して鏡をかざした。
「……っ!」
プラズマはすぐにマナに気がついた。電撃が四方八方から飛んで来る。クラウゼはマイに攻撃を仕掛けているところだった。
「……そのまま鏡をフリスビーみたいに投げろ!」
プラズマは突然叫んだ。マナは切迫した中、鏡を回転させて投げた。鏡は電撃を弾くとプラズマの前にカランと転がった。プラズマは鏡を拾うとさらに投げた。鏡はマイの方に飛ぶ。
またも鏡は電撃を弾いてマイの前に転がった。それを見計らいプラズマがクラウゼに銃を撃ち放つ。
クラウゼは軽やかに飛んでかわした。
「はーん。なるほど」
マイはイタズラな笑みを向けると鏡を真上に投げた。クラウゼが何かに気がつき鏡から僅かにずれた。しかし、プラズマが銃弾で鏡の位置をクラウゼの上に修正した。
先程鏡が弾いた電撃が屈折しクラウゼの真上の鏡にむかって集まってきた。そのままさらに鏡に弾かれて四方八方からクラウゼを襲った。
「ちっ!」
クラウゼは舌打ちをすると結界で電撃を弾きながら避け、間合いを取って着地する。
「終わったな」
「……!」
クラウゼのすぐ後ろでプラズマが銃を撃った。
パァンと派手な弾けた音がしたが出てきたのは弾ではなく網だった。
「……」
「ただの網じゃないぜ。硬直データ入りだ」
プラズマは得意気にクラウゼに笑いかけた。
クラウゼはため息混じりにその場に倒れた。
「な、なんか予想外だったけど、クラウゼさんを捕まえた!」
マナは動揺しつつ驚きの声をあげた。




