変わり時…4狂う世界16
さあやろう!としたところで健がのんきに目覚めた。
「あー!よく寝た。あれ?なんだか凄い長い夢を見ていた気が」
「お前な……」
健はプラズマを見、マイからマナを見て自分の状況を思い出した。
「ああ、そうでした。捕まっちゃったんでしたかね?」
「そうだ」
プラズマはため息混じりに答えた。
「あ、じゃあ私が弐の世界を出しますんで芸術神マイさんは……」
「待て待て!もうそのくだりはいい!」
プラズマは健を慌てて止めた。健は不思議そうな顔をして尋ねた。
「あの、夢を見ていた時にいい方法が浮かんだんですが……」
「知ってるよ。弐の世界から現世に逃げるんだろ?」
「あれ?話しましたっけ?」
健は『あれ』を夢だと思っているようだ。このまま健の通りにいくと健は「夢で見た光景と同じだ、正夢だったんだ!」となる。マイはその能力を持っている。恐ろしい事だ。
「あ、あのね、健さん。北の冷林を呼んで逃げる事にしたの」
マイが隣で不気味に笑っている中、マナは健に説得するように言った。
「ん?冷林ですか?」
「うん!だから大丈夫だから」
「わかりました」
健は不思議そうな顔をしていたが頷いて納得した。
「当然だが……私は連れてってはくれないのだろう?」
マイがクスクス笑いながらマナに尋ねてきた。
「あなたは怖い神。私の邪魔をするなら置いてく。味方をするなら連れてく。味方をした方が『おもしろい』と思うよ」
マナは感情が動かない静かな表情でマイを見た。
マイはまた不気味に笑うと「言うようになったな。小娘」と心底楽しそうだった。
「おい……連れてくのかよ……。めんどくさくなるぞー」
プラズマは乗り気ではなさそうだ。
「……大丈夫。彼女は裏切らない。シミュレーションと違う結末なら『おもしろい』からいいはず。逆にシミュレーションと同じならばマイさんは私を裏切る……でしょ?」
「ククッ。よくおわかりのようだ」
「違うようになるから問題ないよ」
「それならいいがな」
マイはマナの返答に満足そうに頷いた。
「ま、あんたがいいならいいけどな。それよりはやく冷林を呼べ」
プラズマはため息一つつくと冷林を呼ぶように指示をした。
「わかった!祈るだけね」
マナは目を閉じると見たこともない冷林に向かって願いをつぶやいた。
……お願い!私達をここから出して!大事な事なの!
半分必死に願うとマナの前に白い光が集まってきた。
光は徐々に人形クッキーのような形になっていく。大きさは乳児くらいだ。光がなくなってきた時、青い人形クッキーのようなものが現れた。おそらく顔だと思われる部分には目鼻はなく、かわりに渦巻きのような、ナルトのような模様が描かれていた。一番近い外見の例えはてるてるぼうずと人形クッキーだろう。
「イメージと違った……。人型じゃないの?」
……ネガイヲ……
マナが驚いているときに頭にワープロの文字のようなものが浮かんだ。
「え?」
「冷林が話しかけているんだ。そのまま話せばいい」
プラズマの言葉にマナは唾を飲み込むと口を開いた。
「こ、ここから出してほしいの」
……イイダロウ……
冷林は迷うことなくマナの願いを聞き入れた。ほとんど機械に近い。
「な、なんかうまくいった?のかな?」
マナは動揺しながらプラズマを仰いだ。プラズマは軽く頷いていた。
「読みが当たった。マナには人間のデータもある。冷林はあんたの人間部分に反応したらしい」
「不思議な神様……」
マナはこんな神もいるのかとこの世界にさらに関心を持った。
……デハ……ゼンインデ……イイノカ?
「うん。全員」
マナが答えた刹那、足元に魔方陣が現れた。マナはもう驚かない。こちらの世界でそういうことに慣れてしまった。
異変を感じたワイズが慌てて牢に入り込んできた。マナはワイズを視界に入れてにっこり微笑んだ。
「ワイズさん、じゃあね」
「くそっ!冷林!!!」
ワイズが強い神力を発して怒鳴ったがマナ達はホログラムのように消えていった。




