変わり時…4狂う世界12
「はっ!」
気がつくとアマテラス神の神社前に立っていた。先程となんら変わりはない。
プラズマとマイが突然現れたマナに目を見開いて驚いたがすぐに顔を戻した。
「終わったのか?にしては変化がないな?」
何も知らないプラズマがマナに笑みを向けた。怪我をおっていたはずのプラズマはやたらと元気だった。
「えっと、まだ終わってないの。プラズマさん怪我は……」
マナはまず、プラズマの怪我を心配した。
「あ、ああ。なんかアマテラスが治してくれた。癒しの神でもあるんだと」
「アマテラス様が治したの!すごいね……神様って……。で?アマテラス様は?」
マナの言葉にプラズマは首をかしげた。
「さあ?」
「わからん。すぅっと消えた」
マナに答えたのはマイだった。おどけた顔でマナを見ていた。
「消えた?ま、まあ今はいいや。それより、時神を集めなきゃいけなくなったの!世界を止めているKから言われて……」
「はあ?」
今度はプラズマが声をあげた。
「時神というと、アヤという小娘とお前と……」
マイは楽しそうにマナとプラズマに言った。
「侍がひとり……だな」
「それが過去神か」
「ああ。で?健は?クラウゼは?」
プラズマはマイから目を外すとマナに目を向けた。
「健さんとクラウゼさんはちょっと大変で今はアマノミナヌシ神の世界にいるの」
「なんだかわからんが無事なんだな?」
「うん……剣王に襲われてクラウゼさんと一緒に剣王を抑えてる。とにかく時神を急いで連れてこないと!」
マナは焦った表情でプラズマに言ったがプラズマは「しかし……」と首を傾げながら言葉を続けた。
「時間が止まっていてアヤを連れ出すのは無理だぞ……。今は風景と一緒だ」
「……じゃあどうすれば?って、そういえばワイズさんが時神過去神を連れ去ったと言っていたけどワイズさんと過去神さんは動けるの?」
マナが頭を抱えながらプラズマを見た。
「ワイズは世界を知っている。世界を知っているレール国神が動いてるんだからあいつが動けないわけがない。剣王も動いていただろ?栄次はたぶん、過去の管轄から連れてこられたんだ。つまり、現在とは関係ないから動けるのかもしれない。しかし、あいつはどうやって栄次を連れてきたんだ?」
「栄次って過去神?」
マナは過去神を知らない。プラズマやアヤのように神名だけでなく人名もあるようだ。
「そうだ。白金栄次って名前だ。しろがねじゃあなくてはくきん。変な名字だよな」
「そ、そうだね。じゃあまあ、とりあえずワイズのとこから過去神さんを奪うしかないのかな?アヤさんはどうしよう?」
「案外揺すれば起きるかもしれないな。クク……」
マナの言葉にマイが不気味な笑みを浮かべながら答えた。
「揺すって起きるの?」
「知らん。しかしだ、世界を操っているKとやらが連れてこいと言っているならアヤを動けるようにしてもおかしくない」
「なるほど……」
マイの意見でマナは納得した。
「まあ、とりあえず行ってみるしかない。アヤは高天原西でぶっ倒れているはずだしな」
プラズマがそこまで言ってから何かに気がついた。
「プラズマさん?」
「そういやあ、鶴を呼んでも来ないな。どうやって高天原に行く?現世から高天原に行くってのは弐の世界を通れないんだ」
「あ……そうなの?」
マナ達は固まった。
「行ける方法がないな。手詰まりだ。高天原に入れるお札があってもすべてが止まっているからいけないじゃないか」
「……作動すればだが……」
プラズマがため息をついてうなだれた時、マイが着物の袖からキーホルダーのようなものを取り出した。美しい黄緑色の勾玉がついている。
「なんだ?それは」
「高天原西のワープ装置だ。歴史神の……たしかナオだったか……が持っていたものをいただいてきた。なんか使えるかと思ってな」
マイの軽い発言にプラズマとマナは息を飲んだ。
「お前、それ、おもしろ半分で盗んだんだろ……」
「ふふ……見たことがなかったもんでな。試しに使ってみて使えたら飽きた時にでも返すぞ」
マイは相変わらず狂気的な笑みを浮かべ楽しそうに答えた。
「やれやれ。……それと、マナ。俺は一つの可能性の話をするが……」
プラズマはマナに目を向けると真剣な眼差しで口を開いた。
「何?」
「もし、高天原に飛べたとする。俺達時神がそろった時、不思議とリョウが言っていた未来がよぎる……。覚えているよな」
プラズマに問われマナはリョウに見させられた未来を思い出した。
あれはすべてが全滅する未来。あの時、マナと時神三神がすべて揃っていた。プラズマは揃うわけがない、未来へ行けるはずがないと首を傾げていた。どうやればこんなことになるのかリョウも不思議に思っていたはずだ。
今の状態を見てみると恐ろしいくらいにその通りだ。もしかすると現代がすべて停止しているため、未来にも行きやすくなっているのかもしれない。元々こちらには弐の世界で未来をシミュレーションできる能力があるマイがいるのだ。おまけに現在、どうやって連れてきたかわからないが過去にいるはずの過去神がワイズの元にいるという。
「簡単な話だよね……。世界が滅亡するか、私がいなくなって世界がそのままか、私が世界を変えてしまうのか。この三択しかない」
「まあ、おおまかに言えばな」
マナの言葉にプラズマが頷いた。
「アマノミナヌシ神は流れる方に流れる。だから私も行ける方に行く」
マナは少し考えてからそう言った。ここからのマナの判断で滅亡することもあるということだ。
「ま、いいけどな……」
プラズマはそれ以降この会話は続けなかった。
「だから私はアマノミナヌシ神に干渉しなくちゃ。マイさん、それ使ってみよう」
マナはマイの持っている勾玉に目を向けて言った。
「よし。ではやってみよう。たぶん、ここを……」
マイが笑みを浮かべて勾玉についていたスイッチを押した。
押した瞬間、電子数字が溢れマナ達はホログラムのように消えていった。ワープ装置がうまく作動したらしい……。




