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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」エラーの出た神
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変わり時…4狂う世界8

「隙ありだな」

マナに目がいっていたクラウゼにマイが糸を飛ばした。クラウゼは糸を避けようとしたが突然横をすり抜けた矢に動くのを止め、糸が絡まった。


「湯瀬プラズマ……」

「さ、さっさと……行け……」

今にも倒れそうになっているプラズマが血が滴る弓矢を構えマナに走るように合図した。


「プラズマさん!ありがとう!」

マナはプラズマが意識を取り戻した事に一瞬だけほっとすると起き上がって走り出した。


「逃がさん」

クラウゼは的確に強烈な雷を飛ばすと糸、そしてマイ達を蹴散らした。


「ぐっ……やたらと強い……」

かろうじてかわしたマイが苦笑いをしながらクラウゼを見つめていた。


「あぐっ……」

マナは突然の激痛に呻いた。針のように物体化した雷が太腿を貫通していた。血が滲む。


幸い深くは入っていない。


「足が……行くしかない!」


マナは半分足を引きずりながら鳥居へ続く階段を登りはじめた。


「逃がさん」

クラウゼがマナを追って走り出した。まるで鬼ごっこのようにクラウゼがマナを追いかけ階段を登る。


「もっと、もっと早くっ!追い付かれるっ!」

マナは鳥居へ転がり込むように入った。クラウゼも躊躇いなく入り込んできた。


「もう何もするな!やめろ!さっきは致命傷にならないよう外してやったんだ。頼むからやめてくれ!」

「ご、ごめんなさい……はあはあ……もう退けないの……」

クラウゼの怒号にマナは痛みに耐えながら力なく言い放った。


クラウゼは伍の世界に入り込んでも苦しそうではなかった。

一度なんだかわからずに伍に取り残されていた時、普通にそういえば話していたのを思い出した。


「現人神、マナ。扉を開けにきたのですね 」

すぅっとマナの後ろに実態が浮かび上がった。


「アマテラス……大神……」

マナとクラウゼはほぼ同時に声をあげた。


ツクヨミ神、スサノオ尊と同じ紫色の長い髪、頭には太陽の王冠。


堂々とした美しい女性、アマテラス大神がいた。


「扉を開けなさい。あなたがアマノミナヌシを説得できるのか試してみたいです。この扉は弐の世界の深部、コアの部分付近に行く事ができる扉です。あなたに渡しましょう」


「アマテラス様、お待ち下さい!我々ラジオールはKの意思!こちらの世界の真髄でもある!それを無視なさるのか!」


クラウゼがアマテラス大神に必死に叫んだ。レール国はこちらと伍を結んでおり、Kである者達の想像の国。世界のK達はこの世界の統合を望んでいない。

こちらに来たいと望んでいるのは伍の世界の日本のK、ケイだけだ。


「わたくし、アマテラス大神、わたくしもKのデータを持っておりますわ。わたくしも伍の世界の干渉を望みます。元々すべての者を救うそういうデータを持つ神です」


「それでは矛盾が生じる!どの者達も境遇が違う!皆救うのは無理だ!」

クラウゼが珍しく感情を表に出し叫んだ。


「それはわかっております。しかし、わたくしはそういう神なのです。伍の世界の者が苦しんでいる、それを救おうとしてしまうのがわたくしの力。反対にこちらの世界を救おうとしてしまうのもわたくしの力。この矛盾は仕方なく、わたくしはわたくしの救済の気持ちを信じます」


アマテラス大神は迷いなくクラウゼを見据えた。これが上に立つ大物の神だ。迷いなど元からない神の目だ。


「俺は認めない。ラジオールからの命令は無視できない」


「ではわたくしとは相反します。しかし、あなたは元々マナの手助けをする予定ではなかったのですか?」


「状況が変わったんだ。こちらのKが向こうとの接触をよく思っていない。ルフィニが世界の終わりを予言したんだ」


悪い方向を予言する神、黒猫になれるルフィニールフェンルーナル神だ。マナ達も一度会っている。


「そうですか。いよいよですね。マナさん、扉を開きなさい」

「アマテラス様!」

アマテラス大神の言葉を遮るようにクラウゼが叫んだ。


「クラウゼさん、ではあなたも扉の向こうへ行きなさい。もし、あなたの判断がマナさんの行動を良しとしないのならマナさんを止めれば良いのです。それと……そこに隠れているあなた達も一緒に行かれては?」


アマテラス大神は鳥居の裏に隠れていたプラズマ達に目を向けた。


「バレてたか……残念だが俺は無理だ。そこの雷男にやられて動けない」

プラズマはクラウゼを睨み付けながら苦い顔で言った。


「私はここにいる。そんな大きな判断、私には到底無理だ」

隣にいたマイもアマテラス大神を珍しそうに眺めながらプラズマに頷いた。


「あ、私は行きますね。気になるので」

さらにマイの後ろから顔を出した健が呑気な顔で言った。


それを聞きながらクラウゼは軽く震えていた。世界改変という大きな事をやろうとしている少女を生かすか殺すかの判断の重みが自分の腕に乗っかったのだ。


ラジオールの、Kの判断を信じて動くべきか不思議と迷い出した。

しかし、ならば行くしかないと思い直した。


「わかった。マナの判断が気に入らなかった場合、俺は戦う」

「クラウゼさん……」

マナにも同じように重圧がかかるがマナは自分を信じるしかなかった。


「アマテラス大神は力がありすぎる。故に意見を押し通せない。それはよくわかった。意見を押し通したら独裁になり、アマテラス大神の力が皆を救うという力ではなくなってしまう。だからほぼ傍観しかできないのだ」


クラウゼがアマテラス大神を見上げそう言った。


「……」

アマテラス大神は何も言わなかった。


「まあいい。その扉とやらを開いてほしい」

クラウゼがマナを横目で見ながら命じた。


「では、わたくしが扉を出現させましょう」

アマテラス大神はにこりと微笑むと神社の社内をじっと見つめた。

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