変わり時…4狂う世界6
神社を出て鳥居を潜るとプラズマの身体がとたんに軽くなった。
そして鳥居も何も見えなくなった。
「あー、しんどかった……」
「そんなに変わる?」
「変わる……。とりあえず急ごうぜ!」
プラズマはマナを引っ張ると山道を駆け降りた。
フェンス付近に戻ると健が手を振っていた。隣で木に縛り付けられて気を失っているレールの男神がいた。どうやら勝ったらしい。マイの糸にグルグルに巻かれていた。
「勝ったのか!」
「勝ちました。えぃこ、びぃこは戻しています。またすぐ出せますよ」
健は安堵の息をもらしながら答えた。
「皆無事で良かった」
「で?スサノオとやらの神社に行ってなんかあったのか?」
顔が少しゆるんだマナにマイが楽しそうに尋ねた。この狂気にも似た笑みはどことなくスサノオに似ている気もする。
「えーと、世界のシステムに入れる鍵をもらったよ。今度はツクヨミ様の神社にいかないといけなくなったの」
「ツクヨミか。しかし、またレールのやつらは襲ってきそうだな。な?」
何が楽しいのかマイはケタケタ笑っていた。
「怖いけど行くしかないよね……」
マナはため息をつくと歩きだした。
「そっちなのか?」
「うん。こっち」
マナの進む方向に一同は素直に歩きだした。
「ツクヨミの神社には俺も一度行ったんだ」
プラズマが歩きながら健とマイにつぶやいた。
「伍の世界の神社か、気になるな」
「何にもなかった。本当に文字通りだ。何にもなかった」
プラズマは興味津々なマイにそう言うと足元の小石を蹴った。
公園を抜けて先程の道を戻る。
商店街を抜けて例の高校を通りすぎた。
「たぶん、もうすぐツクヨミ様の神社だよ」
学校を通りすぎると大きな遊歩道に出た。真ん中に水の流れる人口の川が流れており芝はきれいに刈られていた。しかし、楽しそうな親子連れは笑ったまま銅像のように止まっている。
「やっぱり不気味ですね……」
健が顔をしかめた時、また変な気配がした。
「もう少し先に鳥居が見えるけど……なんかまた嫌な予感」
マナがつぶやいた刹那、今度は水弾が勢いよく飛んできた。
「あぶねぇ!」
プラズマはマナに叫んだ。マナがハッと振り向いた時、顔すれすれに鉄砲玉のような水弾が通りすぎた。気がついた時にはマナの頬から血がたらたらと流れていた。
水弾は近くの建物に当たり壁を破壊した。
「ひっ!」
「恨みはないのよ。でもラジオールのクラウゼの指示だから。男達は女のあんたに本気でかかれないみたいだからあたしがやるわ」
近くの木の影から女神が飛び出した。エスニックな服装に線路をイメージしたデザイン。またもレール国の神だ。
「またか……」
プラズマがため息をついた。
「仕方ありません。えぃこ、びぃこ!またよろしくお願いします」
健は再びえぃこ、びぃこを出現させた。
「また、私達で食い止めるか。楽しいな!屍を越えて行け。一度やってみたかった」
マイは相変わらず楽しそうに戦闘力向上の糸を出すとえぃこ、びぃこに巻き付けた。
「いや、死にたくないですが……マナさん、プラズマさん、行ってください!」
「ありがとう!死なないで!」
マナは健に叫ぶと女神の横をすり抜けるタイミングをうかがった。
「あの子、強そうだ!」
「強いわねー」
びぃこ、えぃこは相手の強さに気合いをいれていた。
女神は水弾を大量に出現させると手を指揮者のように振り飛ばしてきた。水弾は生き物のように女神の手の動きに合わせて飛んできている。水の神なのか?
魔法使いスタイルに変わったえぃこ、びぃこはシールドを出すと水弾を弾いた。
それでも完全には弾ききれず、マナ達を襲った。先程の火の男神とは大違いだった。レール国の女神は手加減をしない。
「きゃっ!」
「ちっ!こいつは厄介だ」
当たったら蜂の巣になるほどの威力だ。
とてもじゃないが先には進めそうにない。
「どうしよう……」
マナは焦りを見せながらどうしようか考えた。
「私がなんとかしよう」
ふとマイが隣りでつぶやいた。
「まさか犠牲になるわけじゃないよね?マイさん」
マナは顔色悪く尋ねた。この神はやりかねない。
「問題ない。そんなことをする必要すらない。あの神は足元を見ていない……くくっ」
マイは不気味に笑うと地面に手を置いた。
「っ……!?」
マイが地面に手を置いてすぐに女神が驚いた顔をした。
「しっかり足元も見ないとな。くくく……」
マイが地面から手を放して上に思い切り振り上げると女神の身体が宙に浮いた。
よく見ると足首に糸が巻き付けられている。
「ひっ!」
女神は悲鳴をあげながら地面に叩きつけられた。
「いまだ!」
マナはプラズマに合図をすると一点を見つめて走り出した。一瞬の勝負だった。女神はすばやく立ち上がるとまた水弾を飛ばし始めた。マナめがけて打った弾はえぃこ、びぃこが素早く飛び上がりシールドを張って防いだ。
「逃がさないわっ!」
女神は追いかけようと足を踏み出したが足が全く動かなかった。
「隙がありすぎだな。自分の力を過信してるのか。足元をみるがいい。くくくっ」
マイに笑われ、女神は慌てて足元を見た。足首に沢山の糸が絡みついている。
「なんてこと!」
女神は怒りの声をあげるとマイ達を睨み付けた。
女神の強い気配を背中で感じながら無事を祈ってマナとプラズマは遊歩道を駆け抜けた。




