変わり時…4狂う世界5
レールの男神はやや本気で火の玉を飛ばしてきている。
火の神なのか?
「くそー、当たらないな……」
プラズマは男神の動きを鈍らせようと必死に弓を放つがなかなか当たらない。
男神は軽やかに飛んでくる矢を避けている。さすがは猫になれるレール神と言ったところか。
「あんまりレールの神々とは戦いたくないですけど、仕方ないですねー。えぃこ、びぃこ、プラズマさんに加勢です」
「はーい」
「仕方ないなー」
健の掛け声でえぃこ、びぃこが動き出した。
「では、私も」
飛び出したえぃこ、びぃこにマイが先程と同じように糸を飛ばした。
動きがさらに良くなったえぃこ、びぃこは拳法家スタイルに変身すると男神に拳を突き出した。
男神は火を扱うだけなのかえぃこ、びぃこの攻撃に上手く耐えられないようだった。小さい身体のどこにそんな力があるのか拳を繰り出す度に衝撃波が飛ぶ。
「ちっ」
男神は舌打ちするとえぃこ、びぃこに炎を飛ばし始めた。
「弐に飛ばさなくてもいけるかもしれないっ」
マナは男神の横を走り抜けた。
「ああ、そこの人形に任せとけばいけそうだな」
プラズマもマナに習って走った。
「私はここで彼を抑えますので先に行ってください!」
「私もここに残る」
健とマイは男神と対峙しながらマナとプラズマに叫んだ。
「わ、わかった!また、戻ってくるから!」
マナはそう叫び返すと鳥居に向かって走った。
「ほんとに神社があるのかよ!?」
プラズマが疑惑の目でマナを見る。
「ある!目の前に!」
マナの目にははっきりと鳥居が見えていた。鳥居は目の前に堂々とあった。伍の世界で見たものと同じだ。
マナは迷わず鳥居を潜った。生暖かい風がマナの横を唐突に通りすぎる。マナにははっきりとわかった。この生暖かい風はこちらの世界にある自然的で気持ちの良い風ではない。馴染みのある風。ここは伍の世界であると。
「うっ」
隣でプラズマが呻いていた。
「プラズマさん。ここは伍の世界みたい」
マナは目の前にある社を見上げながらつぶやいた。賽銭箱がなく、何も感じられない神社。
歴史的な建物としてかろうじて残っている神社。
「それでか……身体が鉛のように重い……動かねぇ……。しかし、ほんとにあったんだな」
プラズマは今にも意識を失いそうだった。そのプラズマの目にもやっと神社が映った。後ろには鳥居も見える。
「そういえば伍の世界でのスサノオ様の神社には行ってないよね」
「ああ、確かな」
立派な神社だったが悲しいことに威厳や雄大さは特にない。神様が普段からいないからだ。
「よう!やっと来たか!」
マナとプラズマの後ろから楽しそうなスサノオの声がした。
「!」
マナとプラズマは後ろを振り向いた。すぐ後ろにスサノオが笑みを浮かべて立っていた。
「楔がなくなったから伍の世界が一部繋がったんだ。神社だけこちらに食い込んだらしいな!で、これをやる」
スサノオがにやりと口角をあげるとマナの手に突然何かを乗せた。
「!?何?」
マナは手のひらをまじまじと見つめた。形容しがたいものが手に乗っていた。データの塊のようなものだ。沢山の電子数字が休むことなく違う数字を映し出している。
「これはこっちの世界のシステムに入れる鍵だ。常に変動している。こちらの世界に入れた時、俺は何故かこいつを持っていた。お前にやるよ。たぶんだが、ツクヨミも持っているはずだ。アマテラスは鍵穴を持っているだろう。日本だけのシステムデータだが世界を変えるなら全世界を改変する必要がある。日本だけを変えてもいいが、それは任せる」
スサノオは楽しそうに笑っていた。この深刻な状況を楽しんでいる顔だ。
「こ、これはどうやって持ってれば……」
マナがそう言いかけた時、電子数字のデータがマナの中にすうっと吸い込まれていった。
「入った!?」
「お前自身が鍵になるんだよ」
戸惑うマナにスサノオは笑いながら答えた。
「鍵?」
「ま、とにかくさっさとツクヨミんとこ行け。それからアマノミナヌシによろしく言ってくれ」
「え?」
マナが聞き返そうとしたがスサノオは早く行けと顎で合図した。
「用は終わったな。マナ、行くぞ。健達が心配だ」
プラズマがマナを引っ張ったのでマナはプラズマに従い神社をあとにした。プラズマは早く伍の世界から元の世界に戻りたかったらしい。マナも他に聞きたいことがあったが今はやめた。




