変わり時…3時の世界18
ここは剣王の城の一室。和室の狭い一部屋である。そこにふたりの少女がいた。
「ナオ殿、とりあえず逃げるのじゃ!」
見た目、七歳くらいのかわいらしい少女が隣にいた年齢的には高校生くらいの少女に真剣な眼差しで叫んだ。両方とも和装をしており、七歳くらいの少女は奈良時代あたりの格好をしているが髪はストレートという今時の髪型。
もうひとりの高校生くらいの少女は袴姿で凛とした目をしているウェーブのかかった赤い髪を持つ少女だった。
「ヒメさん、やはり今の剣王はなんだかおかしいですね」
赤い髪の少女は小さい少女をヒメさんと呼んだ。
「ナオ殿、なぜワシらが幽閉されねばならぬのだ?」
ヒメさんは赤い髪の少女ナオに不思議そうな顔で尋ねた。
「わかりません。しかし、おかしいです。一度、距離をおいてみましょう。ここからどうやって逃げますか?」
ナオは眉を寄せながらヒメさんを見つめた。
「大丈夫じゃ!友達のアヤに助けを求めたからの!これで!」
ヒメさんは携帯電話を取り出すと高々と抱えた。
「携帯電話ですか……。そのうち遺物化しそうですね。ところでアヤさんとは時神の方ですか?」
「そうじゃ!」
ヒメさんはナオに大きく頷いた。
「見た感じ結界が張られているようですが、大丈夫でしょうか?」
ナオは不安げにまわりを見回した。ナオとヒメさんが座っている四方八方に結界が張られている。
逃げ出すにはかなり困難だ。
「大丈夫じゃ!アヤに結界の時間を巻き戻してもらってなかったことにしてもらうのじゃ!」
ヒメさんは腰に手を当てて鼻息をフンッ!と吐いた。
「なるほど、それはいいですが……ここまで来れるか……」
ナオが不安げな声をあげた刹那、アヤの声がした。
「いた!私は高天原に入れないのよ!何考えてんの!どんだけ必死にここまで来たか!」
アヤの怒った声を聞き、ヒメさんは笑顔になった。
※※
「逃げられたか……。これはまずい……狼夜!早急にマナを始末しろ」
男が破られた結界の前でいらついた表情をしていた。幽閉していたはずの少女ふたりはもうどこにもいなかった。




