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変わり時…3時の世界10

 雪が降る河川敷を歩いていると前から学生服を着た女の子が足元に気をつけながら歩いてきていた。

 「……なんか偶然すぎるが……アヤが歩いてきたな……」

 「時間は午後四時半……学校の帰宅途中かな?見つかって良かった……」

 プラズマとマナが話す先でアヤが訝しげな顔で足を止めた。


 よく見るとアヤはネギやら野菜やらが入ったスーパーの袋を手に持っている。学校帰りでスーパーに寄って食材を買っていたようだ。


 「えーと……また会ったわね……?全然知らない人が一人いるけど……神なの?」

 先にアヤから話しかけてきた。アヤはきょとんとしている健を眺めながらため息を一つついた。


 「あ、いえ……私は神ではなくて……まあ、人間のようなものというか……Kですね」

 健がとりあえず丁寧に答えた。


 「何よ?Kって……。まあいいわ。そっち系ってことよね」

 「なんかくくられましたがあっていると思います。しかし、偶然ですかねー、私の娘も『あや』と言うんですよ。うちの子はひらがなですけど」

 「娘!?」

 健がなにげなく言った発言にマナとプラズマが目を見開いて驚いた。


 「ええ。妻と三人暮らしです」

 「つまぁ!?」

 「そんなに驚く事ですか?」

 マナとプラズマが口をパクパクさせるくらいに驚いているので健は不思議そうにアヤの方を見た。


 「……私を見てもらっても困るけど……あなた、見た目が上に見ても高校生よ。失礼を承知で言うけど」

 アヤが健をさらに訝しげに見つめながら言いにくそうにつぶやいた。


 「そんなに若くもないんですけど……そういえばアヤさんはうちのあやちゃんに似ていますね」

 「そんな事言われてもどう返したらいいのかわからないわよ……」

 アヤは呆れた声を上げたがマナとプラズマがよくよくアヤと健を見比べると確かにどことなく似ていた。


 「おいおい……言われてみればけっこう似てるぜ。あんたら……。まさか親子だったり?」

 プラズマが意味不明な事を口走った。


 「そんなわけないわ。私には両親がいたもの……。まあ、全然似てなかったから母親に捨てられちゃったんだけど」

 アヤが深いため息をついた。


 「それはかわいそうに……。私の娘はまだあなたほど大きくありません。ですが不思議とあなたにそっくりなんですよ」

 健はアヤを見て小さくほほ笑んだ。


 「そ、そうなの?」

 アヤが戸惑っているとアヤの髪についた雪がふわりとマナの眼鏡に降ってきた。


 「あ、ごめんなさい。眼鏡に……」

 「え?大丈夫だよ。ぬぐえばとれるから」

マナは雪を払おうと眼鏡を外した。刹那、健とアヤが電子数字へと変わった。


……忘れてた……私、こっちの世界では眼鏡を外して神を見るとこうやって電子数字のデータに見えちゃうんだった……。


マナが慌てて眼鏡をかけようと思った時、健とアヤのデータを読み取ってしまった。


「……え?」

「マナ?どうした?」

マナが突然固まったのでプラズマが心配して声をかけてきた。プラズマは不思議と電子数字になっていなかった。

マナは無意識に読んでしまったデータを口にし始めた。


「時神現代神アヤ……もとは歴史神ナオが世界を改変した時に……時神現代神『立花こばると』のバックアップであった転生個体の少女。改変後、ナオによってつくられた『新しい歴史』により時神現代神アヤとして今の形に落ち着く……」


「はあ?」

マナの言葉にプラズマが半笑いで首を傾げた。マナはプラズマには目もくれずに健のデータを読んだ。


「平和を願う『K』のうちの一人、健……。時神現代神アヤが時神現代神のバックアップであった時、人間らしい感情を持っている『少女個体』が転生を繰り返していくうえで人間としての感情を失わないよう見守り続けていた『K』。


 改変後は『バックアップの少女個体』が時神現代神アヤとなったため、つじつま合わせのために時神アヤの心のよりどころであり夢である『あたたかい家庭』を再現する『K』としての役目を負う。


 時神現代神アヤは健の娘『あや』を通して無意識に家族のあたたかさを味わっている。時神現代神アヤが理想とする『父親がちゃんと働いて帰って来る、ただいまを言ってくれる、抱きしめてくれる』などを実現するため、健はレール国と日本を繋ぐ架け橋、外交の仕事についており、毎日夕方には家に帰っている。そして夫婦の仲にもあたたかさを求め、優しくあたたかな家庭を作り続けている……なにこれ?」


 マナは一通り読み終えると震える手で眼鏡を付け直した。


 アヤと健が茫然とその場に立っていた。


 「ね、ねぇ……あなた、さっきから何を言っているのよ?なんか前も同じことがあったような気が……」

 アヤが動揺しながらなんとか言葉を絞り出した。


 「えー、ほとんどわからなかったのですけど……後半の方はあってたような……」

 健も困惑した顔でマナを見ていた。


 「なんかわからないけど……見えちゃったの……。勝手に読んでた」

 マナも口が勝手に動いていたことに驚いていた。

 なんだか気まずい雰囲気が漂っていた。雪が降っているためか人通りがなく静かなので余計に気まずい。


 「えっと……ま、まあとりあえず……本題に……」

 なんだか不思議な空気が漂っていたのでプラズマが小さくマナに話を進めるように言った。


 「あ……う、うん。えっと……その……さっきのは気にしないでもらって……。アヤさんに頼みごとがあるの」

 「……なんか嫌な予感がするけど……何かしら?」

 マナの動揺が伝わり、アヤの顔も曇っている。


 「大したことじゃないんだけど……サキさんと連絡を取ってほしいの」

 「……サキと?なんで?」

 「用があるのはサキさんと仲がいいっていう……えーと……」

 「天御柱神あめのみはしらのかみな」

 「そうそう。その神にコンタクトを取るためなんだ」

 マナはプラズマの助けを借りながらアヤに説明をした。


 「あの神は危険よ?関わらない事をおすすめするわ」

 アヤはさらに訝しげにマナを見ると忠告するように言った。


 「私がいた世界が壊れちゃう危機なの……。アヤさんの協力がないと……」

 「……なんだかよくわからないけど……必死なのね?サキに連絡を取るくらいならできるわ。未来にいるはずのプラズマが平然とこの世界にいるのもなんでか全然わからないままだし……私も手伝える事なら手伝うわ」

 アヤはマナの必死の表情を見て曇った顔のまま、スマホを取り出しサキに連絡を入れ始めた。


 ツーコールくらいの後、アヤのスマホから声が聞こえた。


 「あ、サキ?今ね、こないだ会ったマナって女の子が目の前に現れてね……。あなたの友達の天御柱神に会いたいらしいのよ……。なんでか知らないんだけど……」

 アヤはとてもスマートにサキに伝えたいことを伝えた。しばらく相槌が続いてからまたアヤが口をひらいた。


 「天御柱神はワイズ軍の招集を受けた?あら……そう。そっから会ってないの?」

 アヤの言葉にマナとプラズマの顔がさっと青くなった。


 「ちょ、ちょっと代わって!」

 「あっ!どうしたのよ?いきなり……」

 マナがアヤのスマホを奪い慌てて耳につける。


 「サキさん!どういうことなの!?」

 マナは声を荒げて叫んだ。


 「うわっ!びっくりしたじゃないかい……。どうもこうも……あたしだってわからないよ。最近会ってないんだ。まあ、みー君はワイズ軍だし、あたしがどうこうできる感じじゃないんだよー。しかも連絡とれないし……なんなら一度高天原東に行ってみるっていうのはどうだい?」

 スマホの奥からそんな呑気なサキの声が聞こえた。


 「高天原東にノコノコ行けるような状態じゃないの……。はあ……」

 マナはため息をつきつつ、アヤに再びスマホを返した。


 「この状態だと……ワイズは先に対策とりやがった感じか……」

 プラズマは頭を抱えながら複雑な顔をしているマナにつぶやいた。


 「やっぱり……突っ込むしかないのかな……」

 「……行くしかないんじゃないか……?あきらかに協力的じゃないよなー……」

 マナとプラズマが暗い顔で話しているとアヤが電話を切った。


 「ねぇ?一体何なのよ?なんかまずい事でも起こっているの?」

 アヤはスマホをコートのポケットにしまいながら心底不思議そうにそう尋ねてきた。


 「この世界は何もない。まずいのは伍の世界だ」

 プラズマがため息交じりにアヤに答えた。


 「伍の世界……?ま、まあいいわ。私は現代を注意深く見守っていればいいのよね?」

 「ま、以前そんな話をしたな」

 アヤの確認にプラズマは大きく頷いた。


 「ね、ねえ、アヤさん。前に私の味方してくれるってサキさんも言っていたよね?サキさんは東のワイズさんとの交渉に出てくれたりしないかな?」

 マナは思いついた事をアヤに聞いてみた。アヤは眉間にしわを寄せると首を横に振った。


 「いいかしら?もしそれがワイズと敵対する内容の交渉ならばサキは動かないわ。いや……サキは優しいから真ん中に挟まれて悩むはず。サキも太陽を背負っているの。他の太陽神、使いのサル達を危険にさらすことはできないわよ」

 アヤはなんとなくワイズと衝突しそうだと思っているようだ。


 「……ダメか……。やっぱり私達でなんとかしないと……」

 「……ワイズとの衝突はなるべく控えた方がいいわ……。あの神は普通の考えとは違う行動をとっている神だから……」

 「うん……」

 アヤの忠告にマナは煮え切らない顔で頷いた。


 「とりあえず、嫌だけど東のワイズんとこに行くか?」

 プラズマが苦虫をかみつぶしたような顔でマナに尋ねた。


 「うん……行くしかないかな。ここで引くわけにはいかないし……」

 「では、また鶴を呼んで高天原東に入るという感じでいいですか?」

 いままで聞き流していた健が会話に入ってきた。彼はまだマナ達についていく気のようだ。


 「ああ。仕方ないがまた鶴を……。健、あんたがいないと顔パスで高天原に入れねぇからなあ……」

 「ええ。ついていきます」

 プラズマの言葉に健は呑気に答えた。

 プラズマはため息交じりにまた鶴を呼んだ。



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