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変わり時…3時の世界6

 再び鶴がひいている駕籠に乗ったマナ達は同じ高天原南にあるという天界通信本部まで移動した。

 竜宮からはすぐだった。海から山へ移動した以外に何か変わった事はない。歩いたら三十分はかかりそうだがそれくらいの距離である。


 山の中腹に天守閣に似た屋根が見えた。今時な雰囲気の建物であるがかなり大きい。

 鶴はその建物の近くに静かに降り立つと声をかけた。


 「よよい!ついたよい!」

 「はやい……。こんなに近いんだね……」

 あっという間についてしまったのでマナは心の準備ができずに動揺していた。


 「落ち着け。あんたは元々向こうの人間だ。こっちの神々の神力はあんたには関係ないのかもしれない」

 プラズマが緊張を解こうとマナを揺すった。


 しかし、マナは先程の天津との対話で神力をもろに浴びてしまいモニターごしではなく直に会ったらどうなってしまうのかと若干考えてしまっていた。


 淡々と会話をしていたように見えたマナだったが実際には早く会話を切りたくて仕方なかった。だが、だからといってここで下がるわけにはいかない。


 「関係なくなかったよ。天津さんとしゃべっている時、けっこう変な感じがずっとしてた。目を見ると……気絶してしまいそうな……」

 マナは先程の感覚を思い出しながらプラズマに語った。


 「……まあ、本来はあんな感じだろうな。向こうの三貴神も神力を失っているだけでこっちに戻ってきたら神力のコントロールをしてくれないとぶっ倒れそうだ」

 プラズマは顔を引きつらせて笑った。


 「ほんと、こっちの世界は不思議だね」

 「皆さん、とりあえず降りましょうよ。着きましたよ」

 健が駕籠の外から声をかけてきたのでマナ達も外へ出ることにした。


 「そう考えると健は平気そうだな。Kってのは神力を感じないのか?」

 プラズマが駕籠についているすだれを手で払いながら健に尋ねた。


 「基本的には感じませんね。なぜだか知りませんが」

 「そうかよ……」

 首を傾げている健にてきとうに返事をするとプラズマはマナと共に駕籠の外へ出た。

 太陽は相変わらず照っているが海辺よりも涼しい気もした。山の中だというのに虫や動物の声は全くしない。風の音のみで無音に近い。


 「な、なんか静かすぎて気持ち悪いね」

 「まあ、高天原には霊的動物と神以外生き物はいないからなー……」

 「へぇ……」

 マナはプラズマの説明にかろうじて頷いた。


 「よよい!んじゃ、やつかれはこれで失礼するよい!」

 鶴はマナ達が降りたのを確認するとさっさとまた飛び去って行った。


 「……もう行ってしまいましたか……」

 健が素早い鶴を茫然と眺めていた。

 

 「じゃ、とりあえず……天界通信本部の門の前まで行こうか」

 プラズマがマナと健を促して目の前の建物を目指して歩き始めた。門の少し手前で降ろされたので門までの山道を軽く歩く。


 歩いていると立派な門が見えた。門は軽く開いていた。


 「開いているから入り込むか。一応、天津から連絡来ているだろうし……」

 「なんかこの建物とか門とか見ているだけで緊張してきたよ……。今回は直に会うわけだしね……」

 プラズマとマナは緊張の面持ちでわずかに開いている門から中に入った。健は特に変わらずにプラズマとマナの後をついてくるだけだった。


 「えーと……こんにちはー……」

 マナは門をくぐってから小声で挨拶をした。門をくぐると広い庭があり、その広い庭をひとりで掃除している女の子が訝しげにこちらを見ていた。緑の布をふわっとただかぶったような帽子と赤い着物、そしてつやつやな黒い長髪ときりっとした瞳をした少女だった。


 「あー、えーと……どちらさん?パパに用事?」

 女の子は軽い感じで話しかけてきた。


 「パパ……って……」

 「ああ、お久しぶりです。エビスさん」

 マナが戸惑っていると横から健が笑顔で少女に挨拶をしていた。


 「ん?ああ、あんた、健かー。なんか久しぶりな気がするけど……レールは元気?」

 少女エビスは健を見るとイタズラな笑顔で近づいてきた。


 「はい。元気そうでした。さっき会って来たばかりです」

 「そっかぁ……じゃあ、レールに今度はもんじゃパーティしようって言っておいて。よろしくー」

 「はい。伝えておきます」

 エビスはマナのイメージとは違い、なんだかどこにでもいそうな少女の感じだった。健が堅苦しく話しているのを眺めながら娘がこんな感じだったらお父さんの蛭子神もきっと優しいに違いないと少し思い、気分が楽になったような気がした。


 「あんたがエビスか。竜宮オーナー天津から社長に話がいっていると思うから社長に会わせてくれ」

 プラズマが健とエビスの会話を切り、早口で要件を伝えた。


 「パパに?ほんとに?まあ、いいけどー。じゃあこっちに……」

 エビスは再び訝しげにこちらを見ると疑った眼差しのままマナ達を案内し始めた。

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