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変わり時…3時の世界2

「まあ、天記神のとこには行かなくても現世には戻れるからな。あ、こっちの方だ」

 プラズマが来た場所とは逆の場所を指差した。プラズマが指差した場所も森が広がっているが位置的に現世からこちらに来たときにいた場所と同じ場所のようだ。


 「じゃあさっさと行きましょうか」

 健が気分低くプラズマに答えた。マッシーの条件がまだ響いているらしい。

 一同はプラズマが指差した方向へと歩き出した。再び森に入るとまた霧に包まれた。

 霧に包まれて真っ白になってきた頃、突然に世界が揺れた。

 そして気がつくとマナ達は日本の図書館内の白い本の前にぽつんと立っていた。


 どこの図書館だかはわからない。


 「無事に壱の世界の日本の図書館に着いた……な?」

 「着きましたね」

 プラズマの確認に健がため息交じりに答えた。マッシーはもう人型からハムスターに戻っており健のスーツのポケットに収まっている。


 「本当にこっちの世界は不思議な事ばかりだね……」

 マナはだいぶん慣れたはずだがやはり不思議に思っていた。


 「んーと、とりあえず……外に出て鶴を呼んで……高天原に行くって形でいいよな?」

 「ええ。それでいいかと」

 マナは黙ってプラズマと健に任せることにした。高天原という神々が住む場所にワクワクしながらも高天原については全く想像はできなかった。


 プラズマと健が静かな図書館の一室から歩き出したのでマナも後に続いた。この空間は以前、プラズマが霊的空間だと言っていた。普通に生きる人間にはこの空間は見えないらしい。神々の図書館へ行くにはこの霊的空間に入り、何もない本棚にぽつんと置いてある白い本を開くと行けるようだ。


 霊的空間と呼ばれている空間を抜けるとキッズコーナーに繋がった。三、四人の子供が静かに絵本を読んでいる。マナ達が出てきた場所はやはりこちらの人間には見えていないらしい。


 「ずいぶんとおしゃれな図書館だな……都心か?」

 プラズマは辺りを見回しながら眉を寄せた。図書館内の雰囲気は穏やかだが、お客さんは華やかだ。そして本棚の本もおしゃれに飾られており、全体的にアンティーク調だ。


 カフェのような図書館だなと思いながらマナ達は図書館外へと出た。

 外はプラズマが言った通り、かなりの都心だった。よく見ると図書館の外観もガラス張りであり近未来的だ。夕方なのか夕日がガラスに反射してとてもきれいだった。


 「こんな都心で鶴呼べるかな……。飛行機とかにぶつかんねぇかね?」

 プラズマがため息をつきつつ鶴を呼ぼうとした時、見たことのあるシルエットが目の前に映った。ビルの影に隠れてやってきたのは幼い男の子だった。


 「あ……あの子は……」

 「リョウだ!あいつ、絶対俺達がここに来るって未来で見たんだぜ!だから来たんだ!偶然じゃ絶対ないぞ」

 マナとプラズマはリョウが何かを言いにわざわざここまで来たのだと予測した。


 「やあ、奇遇だね。マナちゃんとプラズマ君と……健君だね」

 リョウは当たり前のように声をかけてきた。


 「何が奇遇だよ。白々しいな」

 「なんで私を知っているのですか?」

 プラズマはうんざりしたような表情を浮かべたが、健はとても不思議そうに少年を眺めていた。

 「健さん、この方は未来も過去も見える時神さんなの。健さんを知っているのはきっと過去見でみたんだよ」

 マナは健にそっと耳打ちした。健はすぐに頷いた。やはりこちらにいる人間、神々は不思議な状況に対応するのが早い。


 「そうだったのですか。あなたがクロノスですね?リョウ君ですね。噂や名前は聞いてますが会うのははじめてですね」

 健がリョウを見てほほ笑んだ。


 「そうだよ。リョウってこっちでは名乗っている」

 「で?そのクロノスが俺達に何の用だ」

 同じようにほほ笑むリョウにプラズマは呆れた表情を浮かべながら尋ねた。


 「それなんだけどね、僕はマナちゃん、君を止めに来たんだよ」

 「……え?」

 首を傾げるマナにリョウはさらに続ける。


 「前回も言ったかと思うけど……このままいけば両方の世界は平和だ。君はこちらの世界に選ばれている。少なくともこちらの世界は平和でいられるんだ」

 リョウは目を細めてマナを見ていた。マナはリョウの未来見を信じていたがここで負けるわけにはいかなかった。


 「リョウさん。未来で変わった事と言えば何?」

 「……一人のKの少女と君の友達二人が消えずに済んだことかな」

 「本当にそれだけしか変わっていないの?」

 マナは少し疑ってみることにした。それを感じたのかリョウはさらに言葉を続けた。


 「いいかい……。君がまた変に動くと世界両方消滅する可能性がある。それがわかっている高天原はきっと君の言う事を聞かないはずだ。高天原に行くつもりのようだけど意味がないと思うよ。今は非常にバランスがいいんだ。君がこちらに留まっていれば」


 「……それでも私は一度話に行くつもり。未来は絶対に変えたいの。ケイちゃんのために……。絶対に両方消滅しないようにするから」

 マナはまっすぐリョウを見つめた。ここで怖気ついていたらそのまま終わってしまう。


 リョウはマナの顔を見てため息をついた。


 「ふう……もう止めても仕方のないとこまで進んでしまったんだね。……じゃあ僕は少し様子を見せさせてもらうよ」

 リョウはプラズマと健に一通り挨拶をするとまた跡形もなく消えてしまった。


 「消えやがったな……。またも意味深に内部を掘り起こしやがって。あいつが言う未来は正しいから怖いんだ。できれば会いたくなかったよな」

 プラズマが頭を抱えているのを見つめながらマナはもう決めたことを撤回することはできないと思った。


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