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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」未来に逆らう神
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変わり時…2向こうの世界19

 セレフィアに見送られながらマナ達は扉の外へと足を踏み入れた。目の前が明るくなったと思ったら図書館のような所にいた。たくさんの本棚があってそこに所せましと本が埋め込まれているが目の前の棚には白い本が一冊しかなかった。

 一応タイトルをみるがラトゥー語でよくわからなかった。


 「ああ、これは『セレフィア・イルサーゼ神』と書いてあるんですよ」

 健が首を傾げていたマナとプラズマに丁寧に説明をした。

 「ああ、なるほど。つまり……『天記神』と同じ感じか」

 「そうです」

 健が満足げに頷いた。


 この本棚のみが霊的空間のようだったが日本とは違い、入り組んだ部分になく、堂々と本棚の中に空間があった。


 この本棚の隣の本棚では普通に人間が本を選んでいる。人間達の服装は洋服で日本と大して変わらない。人種も様々に存在しているようだ。そしてクラウゼに対して皆、同様に頭を下げて通り過ぎている。

 つまりクラウゼが見えている。伍の世界で見えていたKはこちらの世界では元々が見えないようになっているようで健には挨拶をせず、素通りをしている。


 「なあ、クラウゼは何の神なんだ?」

 プラズマがこの不思議な現象に驚きながらクラウゼに尋ねた。


 「……俺は月神だ。神の役割でいうと正の神だな。この国では正の神はだいたいが白猫を神獣とし、負の方面の神は黒猫を神獣としているようだ。使いにもできるが自分達が白猫、黒猫になる事ももちろんできる。つまり、俺は白猫だ」

 「なるほどな……」

 プラズマは唸りながら頷いた。この国はいままで表立ってなかったが非常に不思議な国である。


 「あ、クラウゼ、あそこにルフィニとレールがいますよ?」

 健が閲覧コーナーの一角を指差した。窓際のはじっこの方だった。


 「本当だな。こんなに早く見つかるとは……。普通ではあり得ないが、まあいいか。プラズマとマナ、見つかったぞ。お前達の疑問をぶつけるといい」

 クラウゼが静かにそう言ったがプラズマはなんだか心臓が高鳴っていた。

 ……あの挨拶をやるのか?俺?

 質問する以前にその不思議な挨拶がプラズマの足を鈍らせていた。


 半ばマナに引っ張られる形でプラズマは女神が二神いる閲覧コーナーの机へと近づいて行った。

 黒い長い髪に独特のレースのような帽子を被った少女のような外見の女神と金髪蒼眼のこれまた不思議な帽子を被っている少女が閲覧コーナーの机に将棋盤を置いていた。


 二神とも民族衣装のようなワンピースのようなものを着ており、レースのような帽子には五芒星と線路の絵のようなものが描かれていた。

 先程のセレフィアと同じような格好だ。


 将棋をやっているのかと思い、覗いてみるとそれは軍人将棋だった。


 「軍人将棋!」

 プラズマは意外な展開に思わず声を上げた。タンクやヒコウキなど独特の駒が盤に並べられていた。そして金髪蒼眼の方の少女が少将を使って無双している。

 一瞬で黒髪の少女の顔が曇った。金髪蒼眼の方の少女はなんだか楽しげに笑っていた。


 プラズマはとりあえず日本語で挨拶をした。

 「お、俺は日本神の時神未来神、湯瀬プラズマ……」

 なんだかカタコトになってしまったが金髪蒼眼の少女には伝わったようだ。


 「あ~、日本神なんですね~?私はレールです~。よろしく~」

 ほんわかした笑みを浮かべたレールと名乗った少女はぺこりと頭を下げた。日本語だった。


 「レール……あんたが天界通信本部のエビスと知り合いの神か。日本語がお上手で」

 「まあ日本の記事を書く記者でしたから~」

 レールがプラズマと会話をしている中、黒髪の少女は何も話さなかった。戸惑った顔で二神の顔を見比べている。


 その後、後ろに佇むクラウゼと健を見つけ、首を傾げた。


 健が素早く入り込み、片膝を立てて黒髪の少女の手の甲にキスをした。

 「ラナバストゥー・イファルスティ・健、インディス・イトゥー。お久ぶりですね」

 健の言葉を聞いた黒髪の少女はどこか安心したような顔をした。

 その後、クラウゼも同じように名乗った。


 どうやらこの少女はルフィニという次元の神で間違いなさそうだ。健やクラウゼはこの少女と顔見知りのようだが一応、挨拶をしたらしい。この神はあまり自国から出たことがなかったため、戸惑ったようだ。


 「この方は日本語話せるの?」

 マナが健に目を向けた。

 「まあ、カタコトだった気がしますが話せましたね」

 健の言葉にマナは頷くとルフィニにゆっくり言葉を発し始めた。


 「私はマナ。あなたに聞きたいことがあるの」

 「ンン……ナンデスカ?ンン……ワタシハ……ルフィニール・フェン・ルーナル……イトゥー」

 マナにルフィニは頑張って日本語を絞り出していた。なんだか相手に合わせてもらって申し訳なく感じたがマナは日本語で対話せざる得なかった。ラトゥー語は全くわからない。


 「あなたは……終わりの世界についてどこまで知っているの?」

 「ファメトルーレ(伍の世界)……クラヤミノ……セカイノコト。アナタハ……クラヤミカラ……キタヒト。ワタシニハ……リカイデキタ。セカイガ……コワレテイク。ムコウノKガ……タエラレナク……ナッテイル」

 ルフィニはマナをまっすぐ見据えながら頑張って日本語を話している。


 「Kガ、コワレナイタメノ、サイゴノシステムトシテ、ワタシタチノ、クニハデキタ。シカシ、リタ……二ホンノクニノKノヒトリガ、ハゲシクデータヲ、ソンショウサセタ。コチラ二アル、セカイヘ、Kハ、イキタイト、オモッテシマッタ。ワタシハ、ムコウノセカイモ……ミエル。『ケイ』トイウナマエノ……Kガ……コチラニ……クニトシテノ、レールコクヲ……ツクッテシマッタ」


 「……ふーん。つまり、レール国が最近できた理由はケイのせいって事か。で、昔から『Kのシステムを損傷しないようにするためのシステム』として名もない国がずっとあったと。Kが想像力を失わないようにな。なるほどな、向こうの世界にいる全世界のKが均等に想像ができるように名がなかったのか」

 ルフィ二の言葉をプラズマがわかりやすく解説した。


 「ソウイウコト」

 「……向こうが終わりの世界だっていうのなら……向こうを行きたいけど行けない幻想の世界にするにはどうすればいいのかな?」

 マナがルフィ二に尋ねた。


 ルフィ二は首を傾げていたがやがてため息交じりに答えた。


 「コノクニハ、ワタシタチトノ、カンケイガ、イキスギテイル。イチバン、イイ、カンケイハ、二ホンノカミガミノ……システムダト、ワタシハオモウ。ジッサイニハ、ミエナイガ、イツモ……ソバニイル……ヨウナ……。ソシテ……ドコニデモ、ドンナ、チイサナモノデモ……カミガヤドル……。ソンナ、セカイヲ、ムコウデ、ツクレレバ……」


 「じゃあ、Kの負担を減らして向こうの人間を全員Kにしちゃえばいいって事?」

 「おい!」

 マナの発言にプラズマが呆れた声を上げた。


 「けっこう名案だと思うんだけど」

 「ははは~、マナさんだっけ~?おもしろいね~」

 先程から話を聞いていたレールがつかみどころのない笑顔で笑っていた。


 「レールさん、いいと思わない?」

 「いいんじゃないかな~?私は応援するよ~。でも壊れたのは日本のKだし、日本の神々に手伝ってもらって日本のKをなんとかしてからの方がいいんじゃないかな~?高天原の神々が動くのならば私達、『ラジオール』も動くよ~。他の国には迷惑になるかもしれないから伝えない方がいいよ~たぶん」

 ラジオールとは以前出てきたが日本でいう高天原のような所のようだ。


 その他、この世界には天界や仙人界など色々な神々の住処があるらしい。

 隣でクラウゼも頷いていた。


 「もし動くようであれば……天界や仙人界には見届け神として見守ってもらおう。俺もレールに乗る。高天原が動けばラジオールは動くだろう。助けてもらったからにはお前達に尽力する。しかし、高天原が動かなければ意味がない。これは日本のKのシステム破壊からはじまっているのだ」

 クラウゼが冷静にそう伝えた。

 隣では健が胸ポケットにいるマッシーにおやつのハムスター用クッキーをあげていた。


 「……高天原か……マナの事も話した方が良さそうだし、今度は高天原に向かうか……。マナの提案にやつらが乗ってくれるか……カケだ」

 プラズマがうんざりした顔でマナを見た。


 「高天原?あの伝説の神々の……」

 マナの目はもう次の興味へと移っていた。

 それを見たプラズマはまたも深いため息をついた。しかし、体は羽のように軽かった。やはり自分がいるべき世界はこちらの世界なのだとはっきりと思い知らされた。

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