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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」未来に逆らう神
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変わり時…2向こうの世界12

 マナとプラズマはクロノスの名が出て戸惑ったが健について歩いた。

 クラウゼと呼ばれた男性がいる閲覧コーナーの空いている椅子に二人は座った。


 「で……えっと……。」

 マナが困惑した顔を向けているとクラウゼが突然立ち上がりマナに跪き、マナの手をそっと取った。軽く会釈をして真剣な顔のままクラウゼは口を開いた。


 「俺はレール国王族保護騎士神団長バーリス・クラウゼと言う。」

 「え?きしがみだんちょう?あ、えっと私はマナ……です。」

 クラウゼは何事もなかったかのように席についた。


 「あ、えっと……レール国っていうのは生命を体に宿すという行為を神化している国で女性への挨拶が非常に丁寧なんです。つまり紳士の国です。」

 「……は、はあ……。」

 慌てて解説を追加した健にマナは気の抜けた返事しかできなかった。


 「俺は広報の仕事もしている。日本との情報交換が主なので俺は日本語が話せる。ヴェナセス・ウー・リタウェルトゥー・アンヴェス・イトゥー。」


 「……?」

 「あ、『仕事は日本神の調査です』って言ったみたいです。レール国だとリタは日本という意味です。イトゥーは『です、ます』です。」

 健の解説がなければ何を言っているのかわからなそうだ。だがこのクラウゼという青年は日本語が話せるようなので心配はいらなさそうだった。


 「なあ、そんなことはどうでもいいんだが……あんたら、そのこっちでは『ない国』の出身ってどういう事だよ。」

 プラズマが半分うんざりした顔で尋ねた。


 「それがですね……。まあ……色々ありまして……。クラウゼは『ラジオール』……えっと、日本でいう高天原のようなものに住んでいた神です。現在はKでもあります。そして私は元々Kでレール国と日本を結んでおりました。私達は世界が改変される前から存在していました。それで……。」

 健がちらりとクラウゼの方を見た。クラウゼはじっとレール国の絵本に目を落としていた。


 健が再び口を開く。


 「世界改変前から名はなかったものの存在していたレール国は皆、様々な現象を信じていたのですべて向こうの世界へ強制的に送られたようでした。


その時にクロノス……リョウ君が国移動に深く関わっており、歴史的にもこちらの世界では名もなかったということもありレール国は抹消されたはずでしたがKの少女がレール国をおとぎ話として描いた絵本が出現したことにより、手違いで私とクラウゼはこちらの世界に残されてしまいました。


その時はクラウゼはKではなかったのですが遺物化していたクラウゼは知らぬ間にKになっており、あちらの世界のコードを持っているにも関わらず、向こうの世界への行きかたを知らなかったためこちらの世界にとどまっておりました。私達はこちらで存在を消され、データ化しています。ハッキリ言えばレール国は幻想の国です。向こうにしか存在しない不思議な国。」


 「……Kの少女がレール国をおとぎ話として残した……まさか、あのケイって女の子じゃねぇよな……。ここニ、三十年の話なんだろ?レール国って名前ができたのが向こうでは……えーと、今が二十年後あたりだから二十年前だ。色々とケイって子に図られたか。……しかし、一人の少女に振り回されるとは世界も完全じゃねぇな。」

 健の説明にプラズマはため息交じりに答えた。


「世界は完全じゃない……。私達みたいにおかしな行動を取るものもいるし、こうやって辻褄が合わなくなった人もいる……。もしかして……ケイちゃんは……。」

 マナが絵本をめくりながらつぶやいた。


 「Kのシステムでバグが発生しているんだな。きっと。……俺、わかったぜ。」

 マナの続きをプラズマが続けた。


 「……向こうの世界はこちらの沢山いるKの少女達の想像で成り立ってやがるんだ。いや、全部とは言わない。四分の一はそんな気がする。そのことにケイが気がついたんだ。だからあの子は向こうの世界へ行けないと言った。自分が想像している世界だからだ。そういう風に世界のシステムができているからだ。あの子達が平和を願い、想像して保たせる世界にあの子達Kが行けるはずがない。皆向こうへ行きたいと願ってしまう。だから他のKはプログラム上、皆、向こうの世界へ行く事を思いつかない。だが……。」


 「あの子は行きたくても行けない事に気がついている……って事?」


 「たぶんな。で、向こうにいたKはKであってKじゃない。向こうで出会ったあのモンペの子とかは霊だ。向こうの世界では霊魂は存在する。だから存在できている。こちらのKの少女がそう想像しているからだ。」

 プラズマが確信をもって言った。


 「じゃあ、向こうの世界は本当に……幻想だったんだね……。」

 マナはどこか悲しそうな顔をしていた。


 「いや、向こうも現実だ。だがな、向こうはKの少女の想像が大量に入り込んでいる世界って事だ。」

 「あの、先程から何を言っているのですか?」

 健が不思議そうにマナとプラズマを見ていた。


 「あ、ああ……まあ、こっちの話だ。ところで……あんたら、レール国へ帰りたくないか?」

 プラズマが突然に話を変えた。


 「帰れるのですか?」

 健の瞳に光が宿った。


 「……あ、あんたは無理かもしれない。あんたはこっちの世界でのKの可能性があるからな。行ってみてもいいが……。」

 「可能性があるなら私は行きたいですね。」

 プラズマに健ははっきりと答えた。


 「えー、そこの……クラウゼだったか?あんたは元々向こうの神だ。行けると思う。」

 「俺も可能性にかけてみよう。なにせ、ここに出現してからかなり時間が経っている。俺はこの絵本のおかげでこの世界に存在できているのだ……。明日なくなるかもしれないなら向こうへ帰りたい。」

 クラウゼもほぼ即答でプラズマに頷いた。


 「プラズマさん……まさかケイちゃんのところに連れて行くの?」

 マナの不安そうな声にプラズマは元気よく答えた。


 「そうだ。それが一番いい方法じゃないか。」

 「大丈夫かな……。」

 マナは一抹の不安を抱えていたがそれと同時にある言葉が頭に浮かんだ。


 ……世界は完全じゃない……

 ……あなたは私達Kを救ってくれる?


 ほころびがあるならケイちゃんもこちらの人間が辿る末路も変えられるかもしれない。

 彼女は必死でこちらに想像物を残そうとしている。

 これは私が動かないといけない。

 マナはひそかに小さな決心をした。

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