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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」未来に逆らう神
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変わり時…2向こうの世界3

 「そうだ!空間内に逃げる手があった!」

 プラズマは自分が動揺していたことに気がついた。ここは霊的空間内のようだった。不思議な事に辺りはオレンジ色で染まっている。


 「珍しいですわね……。向こうの神がこちらにいるのは……。」

 ふとなんだか優しげな女の声が聞こえた。


 「だ、誰だ?」

 プラズマは力の抜けてしまったマナを抱きつつ、声の方を向いた。

 声の主はプラズマのすぐ目の前に立っていた。


 「うわっ!」

 プラズマは思わず叫び、飛びのいた。


 「そんなに驚く事ないでしょう?」

 目の前にいたきれいな女性は神々しく光りながらこちらにほほ笑みを向けていた。


 「びっくりした……。ん?……あんた……まさか……。」

 プラズマはここがアマテラス大神の神社だという事を思い出した。


 「ええ。ご存知の通り私はアマテラス大神。向こうでは私の娘、輝照姫大神こうしょうきおおみかみに太陽を任せています。色々手違いがあり彼女に辛い思いをさせてしまった事もあってあの子の身を案じております。」

 女はアマテラス大神と名乗ると長い美しい紫色の髪をそっと耳にかけた。


 「サキの事か……。俺も見届けたが……あの子の母親の中には厄神がいたらしいぞ。」

 プラズマはアマテラスをちらちら見ながら少し前に起きた事件を思い出していた。


 「……あれは事故でしたの。私の代わりを務める神、輝照姫こうしょうきのために太陽にとどめておいた私の大切な神力を『ある巫女』が私欲のために太陽から引きずり降ろしてしまった。その巫女は私に熱心な巫女だったので私の大切な子をあの方に預けたのですが……やはり私欲で生きる人間……私の力は反転してしまい、巫女のよこしまな考えも入り込んで厄になってしまいました……。」


 「なるほどな……巫女があんたの力を取り込んだからサキが生まれたんじゃなくてサキはもうあんたの代わりとして出来上がっていたってことか。で……?あんた、伍の世界にいるのになんで最近の向こうを知ってるんだよ。」

 プラズマは神力関係なくとりあえず軽く話しかけた。なんとなく優しそうだったからだ。


 「向こうへはいけませんが……太陽に残った私の神力が辛うじて向こうと繋がっているようですね。しかし、最近は輝照姫の神力が強くなってきましたので私の神力は消えかかっています。あの子は本当によく人間を救っている。本当にここ一年で太陽の信仰はかなり戻ってきました。向こうの人間は信じてないと言っても心の中では信じているのです。ですがこちらは……。」


 「まあ、なんとなくわかるが……。」

 アマテラスが軽くほほ笑んだのでプラズマもため息交じりに苦笑した。


 「この社も私の霊的空間ではなくて私達の存在を少しでも信じてくれている人間達が創りだした弐の世界なのですよ。私達が存在する場所は人間達の想像の世界しか今はありません。ほんのごく一部。一握りです。こちらに住むKの少女でなんとか持っている……と言った方がいいかもしれませんが……。」


 「ふーん……。やっぱこっちは生きづらいなあ。あ、でもこっちの人間はこっちの世界が生きやすいのか……。」

 プラズマが独り言のようにつぶやいた言葉にいままで黙っていたマナはふと顔を上げた。


 「生きやすくなんてないよ。少しでも変な想像すると精神病院に連れて行かれるんだよ?それ、おかしいと思うでしょ。」

 マナはどこかふてくされていた。


 「それを考えたあなたはもうこちらの世界の住人ではないのですよ。私の神社によく来るあの少女達はもうあなたを思い出さない。あの子達はあなたみたいにイレギュラーじゃないのです。想像はしていても一定以上は超えない。ちゃんとこの世界にそって動いています。あなたはこちらの世界から外れてしまいました。なのでデータが新規になり、違うデータになったので同じ外見でも彼女達に認知されないのです。」


 「友達……だったのに……。」

 アマテラスの言葉を聞いてマナは再び下を向いた。


 「……あなたの基質は変わっていません。なのでもう一度友達になれば友達になれますよ。彼女達と波長が合うみたいなので……。」


 「じゃあ、友達になってから……。」

 「なってもいいですが……向こうの世界へは連れていけませんよ。先程も説明した通り、彼女達はこちらの世界に忠実です。普通の人間はあなたのように常識を捨てられないのです。」

 アマテラスの忠告にマナは再び肩を落とした。アマテラスは再び言葉を紡ぐ。


 「まあ、今回は妄想症の疑いがあると救急車に乗せられそうになっておりましたので特別にこちらに入れましたがあまり騒ぎを大きくされませんようにお願いします。」

 「……。」

 マナはアマテラスの念押しにとりあえず素直に頷いた。


 「ところで、アマテラスさん。伍の世界に詳しんだよな?」

 ふとプラズマが話題を変え、アマテラスに尋ねた。


 「まあ、そうですわね。私はこちらに住んでおりますので。」

 「じゃあ、伍の世界の人間は機械化に走っているっていう雰囲気はあるか?」

 プラズマは伍の世界に来てアマテラスに会い、リョウの記憶で見た『機械化された人間』がこの時代でどこまで進んでいるのかを聞きたかった。


 「ええ。そうですわね。最近では……他国と戦争を行うために他の国では死刑囚をサイボーグにすると言った実験が行われていると聞きます。非人道的であり、私達としては信じられません。せめてその死刑囚の心を救ってあげたいのですが……彼らは何も信じていないので私達も何もできません。」


 「そうか……。すがるものが何もないから罰が下るとかバチが当たるとかそう言った感覚がこちらにはないんだな。だからそういう事を『倫理的に反する事』とする感情を失くしてしまったのか。それは人間としての反対は起きていないのか?」

 プラズマはせつなげにアマテラスを仰いだ。


 アマテラスが答えようとした刹那、マナが割り込んできた。


 「起きてるよ。日本もそれに反対しているし。テレビで見たんだけど……ニュースで今は危険の伴うサイボーグ化だけどいずれは医療現場でも使われて病気を治すとか老化の部分を機械に変えて老化しないようにすることが可能になるんだって。安心で安全の誰でも受けることができる施術になるかもしれないって言ってた。細かいパーツの手術もロボットが導入されて機械化手術の失敗がなくなるとか機械パーツだと血液感染とかそう言った事もなくなるから流れ作業で沢山の人間を同時に見る事もできるって。」


 「……おいおい……。人間はなんかの工場生産品か?ベルトコンベアーで流れてそれをロボットが壊れた部位を修理するか……そのうち、壊れた部位だけ取り出して車検みたいに預けても大丈夫そうな世界になりそうだな……。『肝臓の検診お願いします。』『お預かりしてから一週間程度かかります』みたいな。肝臓なんて一番大事な臓器なんだが軽くなりそうだな。」


 プラズマはなんだかさらに気分悪そうに頭を抱えていた。


 「やっぱり向こうじゃそれは普通じゃないんだ。」

 マナは先程のダメージを少し引きずりつつ、つぶやいた。


 「まあなあ。……なんか俺、こっちで怪現象起こしたくなった。」

 「起こせませんわよ。」

 プラズマの発言にアマテラスは即答して切り捨てた。


 「なんでだよ。俺がいる事自体が怪現象なもんじゃねぇか。」

 「ではあなた、この社から外に出て霊的着物に着替えてみなさい。私ですらこの空間に留まるのが精いっぱいだというのに。」


 「あー……なんとなくわかったからいいよ。つまり、俺は今霊的武器も霊的着物もなにもかも出すことができないわけだな。」

 「そのとおりですわ。」

 こちらに長くいるアマテラスがそういうのならばプラズマはわざわざ試したりしない。


 「……あなたがアマテラス大神さんなんだよね?そういえば私、スサノオさんに会ったよ。」

 今度はマナがアマテラスに声をかけた。


 「あら。弟に会ったのですね。弟は今、伍の世界の弐の世界でウロウロしていると思いますけど。」

 「ウロウロしていたよ。そういえば。ウロウロとか言ったら失礼なのかな?」

 マナはスサノオの風貌を思い出していた。よく見ると髪の色とか瞳の部分が似ている。


 「それで……もしかするとツクヨミにも会ってみたくなったのかしら?」

 アマテラスの言葉にマナは大きく頷いた。


 「うん。一度会ってみたいと思っていたの。ここと同じ神社を向こうの世界で見たの。それが気になって……。」


 「同じ神社……それって祭られている神は私達でしたか?」

 「え……。あ、そういえば確認してない。」

 「私達でも向こうの人間が勝手に想像した私達かもしれません。そうしましたら同じ名前でも私ではありませんよ。」


 アマテラスは霊的空間の先を遠い目で見つめた。その先は何もないがアマテラスには向こうの世界が映っているのかもしれない。


 「もし、向こうの神社が三貴神さん達だったらこっちと向こうがここでリンクしてたりして……。リョウの予言からして……この神社を使って向こうとこっちを繋いでしまうとか。」

 プラズマは顔を青くしながらマナを見据えた。


 「あり得るかもしれないね。ちょっと調べてみようか……。」

 マナはプラズマに頷き返すと霊的空間の先に目を向けた。


 「……あら、ここから先に行こうとしているのでしょうか?特には止めませんが……私もどうなっているかわかりませんわ。」

 「うん。じゃあなおさら行ってみないといけないわ。」

 アマテラスの心配そうな顔を見ながらマナは大きく頷いた。


 「まあ、もう俺もこっちに来れたし、怖くない。あんたについてくよ。」

 プラズマはマナに笑みを向けた。




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