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旧作(2009〜2018年完結) 「TOKIの世界書」 世界と宇宙を知る物語  作者: ごぼうかえる
最終部「変わり時…」現人神になった人間
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変わり時…1交じる世界14

 この世界にいない方がいいと気がついたマナはとりあえず、その図書館を目指して歩くことにした。

そういえば自分は、弐の世界という所からこちらに来たなと改めて思い直した。そしてその弐の世界とやらには普通の図書館から神々の図書館に行けば行けるらしいことも知った。


 マナが今までおこったことを少しずつ思い出していると、プラズマはついて行く気満々でついてきていた。


 「あの……どこまでついてくるの?」


 「……実はな……俺、なんか釈然としないんだ。だからあんたについて行ってそのまま伍の世界に行ってみようかと思っているんだよ。俺はたぶん消えない。だってよくよく考えてみれば未来は変動しているだろ? 俺が変な未来で突然、伍の世界の人間になってしまってもおかしくないんだ。だから俺のシステムはこっちに対応するだけじゃなくて向こうにも対応しているような気がするんだよな……。」


 プラズマが言っている事の大半はマナにはよくわからなかったが、マナがいた世界までプラズマがついて来るという事はわかった。


 「それって……危険なのかな? もしかすると私がいた世界に私が戻る事もけっこう危険なのかもしれない。私、消えてなくなってしまうかも。」

 「それでもあんたは戻った方がいいだろ。こっちは夢の世界だったと思い込めば戻れるんじゃないか?」

 「……まあ、とりあえずやってみるわ。」

 マナはこれ以上考えても仕方がないと思い、坂道を歩くことに専念した。


 不思議と恐怖心はなかった。先程見た未来が怖すぎたせいかもしれない。


 ……ほんとに不思議な世界だ。ここは。

 マナがぼんやり考えながら坂道を登っていると坂道の中腹で少し開けた場所に出た。


 その開けた場所の真ん中あたりに古くて小さな図書館があった。もしかすると公民館と一緒になっているのかもしれない。

 辺りをよく見ると、雑草は元気に伸びているが、汚らしい感じではなかった。


 「……ここ?」

 マナが不安げにとりあえずプラズマを仰いだ。


 「そうらしい。独特の雰囲気でいいな。この図書館。肝試しやったら怖いだろうな。」

 プラズマが楽観的にマナに笑いかけてきた。

 プラズマの笑顔にマナはなんだか気が抜けた。


 「じゃあ、行こう?」

 マナはこのおかしな世界に馴染みつつある自分をため息交じりに受け入れた。

 

 

 マナとプラズマは歩みを止めることなく古びた図書館内に入り、またも出現した天記神とやらの操り人形に白い本の場所まで案内された。


 「ほんとにどこにでもあるんだ……。この本……。」

 マナは目の前の棚にある真っ白な本を不気味に思いながらそっと手に取った。


 「どこにでもあるよ。どういう仕組みだかはわからんがね。」

 プラズマは目で本を開くように指示をした。

 マナは小さく頷くとそっと白い本を開いた。またも目の前が真っ白になり、気がつくと先程いた洋館の前に立っていた。


 世界が白くなった時、マナは先程リョウが言っていた言葉の中で違和感を見つけた。


 「あ、そういえば……さっきリョウさんがレティとアンが私を忘れてるって言ってたけど……。あれは……。」

 「そんなの知るかよ。俺に聞かれても困る。」

 すぐにプラズマの声が聞こえた。マナは確かにそうかと不安げに頷いておいた。

 プラズマはさっさとマナを促して図書館の中へと入って行った。


 「天記神! ちょっくら弐の世界の深部に行きたいんだ! 協力してくれ。」

 「そ、そんないきなり……。」

 プラズマが入るなり叫んだのでマナは驚いてプラズマを止めた。

 まごまごしていると、天記神がため息交じりにこちらに来た。


 閲覧コーナーに本が置きっぱなしになっている。天記神は今、本を読んでいた所らしい。


 「弐の世界の深部ね? 危ないですわよ。あなたも戻って来れなくなる可能性もあるし。」

 天記神はプラズマを心配して諭すように話した。


 「大丈夫だ。俺は一度伍の世界に行くから。」

 「ええ!? 伍の世界? やめときなさい!」

 プラズマの楽観的な物言いに、天記神はさらに顔色を悪くさせた。


 「大丈夫だよ。俺が消滅したとしてもクロノスがなんとかしてくれるって。」

 「なんとかって具体的に言ってくれないと、絶対に許可はしません。」

 天記神はどこかへ行ってしまいそうなプラズマを逃がすまいと鋭く睨みつけた。

 しばらく沈黙が流れたが、ふと誰の声でもない舌足らずな声が近くから聞こえた。


 「それならばいいでしゅよ。」

 「ひぃ!」

 突然の謎の声に天記神を含め、プラズマもマナも飛び上がって驚いた。


 「だ、誰?」

 マナ達は声が聞こえた方を恐る恐る向いた。


 「ふっ!」

 思わず変な声が出てしまった。

 閲覧コーナーの机にいつの間にか獣耳の少女が座っていた。口元で動物のひげが細かく動いている。明らかに人間ではなさそうだ。

 その着物を着ている変な生き物が、口元から覗く大きな前歯を出してほほ笑んだ。


 いつの間にここに座ったのか……。


 「わたちはKの使い『あお』でしゅ!ハムスターなんでしゅよ。」

 グレーかかった髪の毛をしている少女は動物的なかわいらしい笑みを浮かべ頭を下げた。


 「あ、あなたはあおちゃんね……。サファイアブルーハムスターの……。サキちゃんの時に会ったあのハムちゃん……。」

 天記神は顔を引きつらせながらほほ笑んだ。どうやら知り合いらしい。

彼女とのなれそめを知りたければ、二部『かわたれ時…』三話目を読むといいだろう。


 「そうでしゅ。あおでしゅよ。Kからの指示であなた達をこの世界の果てまで連れていってあげましゅよ。」

 あおと名乗ったハムスターはかわいらしい顔つきで笑うと、プラズマとマナを交互に見た。


 「おい、俺もいいのかよ?」

 プラズマは慌てて声を上げた。


 「いいでしゅとの事。」

 「……Kも何考えているかわからないですわ……。」

 あおの答えに天記神は頭を抱えた。


 「ま、なにやともあれ……ここでKの使いをレンタルしなくてすんだ。天記神の許しが出ない所だったしな。アヤが書いた『弐の世界の時神の本』も貸してくれなさそうだったし。」

 プラズマはちらりと天記神を仰いだ。天記神は横目でプラズマを見るとフイッと顔をそむけた。


 「じゃあ、いきましゅか!いきなりでしゅけど。」

 「本当に連れて行ってくれるのかよ……。」

 「もちろんでしゅ!」

 あおはいぶかしげな顔をしているプラズマと口をパクパクさせているマナを促し、図書館の外へと出て行った。あおは最後にぺこりと天記神に挨拶するのも忘れなかった。

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